ジュリエット・ビノシュ、憑依型女優の4変化『私の知らないわたしの素顔』
2019年12月28日(土)14時0分 シネマカフェ
この度解禁となったのは、50代のリアルな“私”と24歳のSONS上の“アバター”の間で自身を失っていくクレールを熱演するビノシュの場面写真。その装いに加え、まとう雰囲気も全く異なる姿を見せている。
まず、大学で文学を教えているクレールの講義スタイルは、上質な紺のVネックセーターにこげ茶のタイトスカート。透け感のあるタイツを合わせ、大人の落ち着きと知性を感じさせるスタイル。社会的にも成功した女性のイメージを演出している。
そして、息子のバスケットボール観戦に訪れたクレールは、前髪をピンで留めリラックスしたヘアスタイルでありながら、イエローのセーターに同じ発色の強さを持つブルーのスカーフをまとい、エネルギーあふれる母親像を作り出している。
さらに、元夫に2人の子どもの世話について相談をするため、待ち合わせに訪れたクレール。エンジのジップアップセーターの上にテーラードコートを重ね、セーターと同色のマフラーを巻く、防寒第一のスタイル。すでにSNSで恋が始まりつつあるクレールは、自信あふれるはつらつとした笑顔で、元夫に対し臆することなく要望を突きつける。
そして最後は、セーヌ川の川べりを若き恋人との会話を思い出しながら歩くクレール。少女のような曇りのない純真な表情に、メイクも心なしか艶っぽく、ヘアスタイルも女性らしさが前面に出た“恋するスタイル”。
本作では、ビノシュが“24歳のクララ”と偽って知り合った若い男との擬似恋愛に溺れていくクレールを見事に演じている。それぞれの立場では一見充実し、幸せそうに見えるクレールだが、なぜ自らを偽って、理性を超えて擬似恋愛にはまり込んだのか。
その世界をジェットコースターのように二転三転しながら加速してゆく終着点に、何があるのか。SNS時代を漂う人間の心の孤独を演じきったビノシュの4変化に注目だ。
『私の知らないわたしの素顔』は2020年1月17日(金)よりBunkamura ル・シネマほか全国にて順次公開。