金正恩「処刑部隊」の新たな手口に北朝鮮国民も衝撃

2022年1月24日(月)6時40分 デイリーNKジャパン

最近、脱北して中国に住む娘からの送金を受け取った北朝鮮国民が、保衛部(秘密警察)に逮捕された。その経緯を巡って、市民の間に衝撃が広がっている。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。


会寧(フェリョン)在住のキムさん(50代)が会寧市保衛部に逮捕されたのは今月15日のこと。キムさんは送金ブローカーを通じて、中国から送られてきた送金を受け取った。6000元(約10万8000円)を受け取った。


最近、送金手数料が高騰しており、送金額の4〜5割に達することから、元々娘が送った額は1万元(約18万円)だったものと思われる。


カネを受け取り家に戻ったところ、キムさんは玄関先で待ち構えていた保衛員2人に逮捕された。取り調べでキムさんは、現金について「中国にいる娘から受け取った」と正直に話したが、保衛部は「娘から送られてきたのか、敵から送られてきたのか捜査をしなければわからない」として、キムさんを勾留した。結局、娘が働いて仕送りしたカネを一銭も使えないまま、保衛部に没収されてしまった。


話はここで終わらない。保衛部はキムさんに「教化所(刑務所)に行きたくなければ5万元(約90万円)を調達せよ」「いかなる手段を使っても中国にいる娘からカネを取り付けろ」と脅迫した。中国に住む脱北女性は、人身売買の犠牲となり中国人男性と結婚させられたケースも多く、経済的に余裕があるとは言えない。


それでも、保衛部は公開処刑や管理所(政治犯収容所)の運営を担当し、金正恩総書記の恐怖政治を支える存在だ。言う通りにしなければどれほどひどい不利益を被るか、北朝鮮国民ならば誰でも知っている。



ここまでなら、今まででもよくあった話だ。中国や韓国に家族がいる者の中には、キムさんのように仕送りを受け取って、豊かな暮らしをしていることから、それに目をつけた保衛部が、カネをゆすり取る手口だ。これが、保衛部の資金稼ぎの重要な手段のひとつとなっていた。


それは今回も同じなのだが、キムさんを保衛部に密告したのは、送金ブローカーだったのだ。つまり、客を売り渡したのである。同じように仕送りを受け取って暮らしている人が少なくない会寧市民の間で、今回の事件を受けて衝撃が広がっているのは当然のことだろう。


情報筋は「最近、保衛員と送金ブローカーがグルになって、逮捕の対象を選択する場合もあると聞いた」「(送金ブローカーは)総金額の多い顧客を、儲かるので対象から外し、額の少ない顧客を選んで、(保衛部が)点数稼ぎに利用している」と説明した。


保衛部は外貨と実績を得て、送金ブローカーは安全に商売ができる保証が保衛部から得られる。その悪巧みに、脱北者家族が泣かされているのだ。

デイリーNKジャパン

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