【北朝鮮国民インタビュー】庶民の願いは「誰も餓死しない1年に」

2024年1月26日(金)6時6分 デイリーNKジャパン

「人民経済発展の12の高地をすべて占領した。」


昨年末に開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第9回総会拡大会議で、金正恩総書記は「人民経済」(民生経済)の「高地」(重要な経済目標)をすべて達成し、大きな成果を上げたと自賛した。しかし、国民からはこんな声が上がっている。


「誰も餓死しない1年になって欲しい」


中国国境に接する北部地域では、新型コロナウイルスの流入を防ぐために頻繁にロックダウンが実施された。それにより地域経済で重要な地位を占める公設市場が、かなりのダメージを受けた。


デイリーNKは、いずれも国境に接する両江道(リャンガンド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の住民とのインタビューを行い、最近の暮らし向きについて尋ねた。


ー最近の暮らし向きはどうか


両江道の住民Aさん(以下A):誰もが想像を絶するほど苦しい生活を送っている。コメがないのでワラビを茹でて、毎日一握りずつ食べて延命している人もいれば、大量に水を飲んで空腹を紛らわしている人もいる。また、ゴミ捨て場や路地裏で家族単位のコチェビ(ホームレス)が寒さに震えている。ますます生活が行き詰まり、ため息が出るばかりだ。


咸鏡北道の住民Bさん(以下B):栄養失調になる人が増えている。病気になってもお金がなく、必要な薬を買うことも、適切な治療を受けることもできない。今や単に「貧しい」というレベルを超えて、「命の危機」というべき状況だ。それでも「元帥様ありがとうございます」「わが国(北朝鮮)が一番好き」と叫ばされる。もうこんな暮らしから抜け出したい。


ー昨年最も苦しかったことは?


A:こっちの暮らし向きなど考えず、人民班(町内会)や女性同盟から(金品を)出せと言われ続け苦しかった。昨日きょう始まったことではないが、一夜明けるとコチェビがさらに増えている現実を無視して、「ともかく出せ」と言われ続け、出せなければ恥をかかされる。どうしようもない。


B:取り締まりと統制だ。市場に空きスペースはなく、路上で物を売ってその日暮らしをしている人々は、取締官に追い立てられ、捕まれば商品はすべて没収される。そのため必死で抵抗し、取られたものを取り返そうとする。そして、獣のように扱われる。人間として生まれたのに、人間らしく生きることもできずに死んでいくしかないのかと思うと恐ろしい。



ー今年の願いは?


A:昨年、国は住宅をたくさん建ててくれたが、そこに住む人々の暮らしは厳しい。まさに見掛け倒しだ。新年は、目に見えるものだけにこだわるのではなく、住民が切実に求める食糧問題に関心を持って解決してほしい。


B:新年は自分で商売ができるようになり、儲かることを願っている。生活苦にあえぐ住民が飢死にしない一年であってほしい。ここ数年の苦労や苦しみが終わる一年であってほしいと思う。

デイリーNKジャパン

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