「ニンニクとコーヒーでコロナ検査」北朝鮮内部資料を入手

2021年2月26日(金)6時10分 デイリーNKジャパン

北朝鮮当局は、今年の光明星節(2月16日の金正日総書記の生誕記念日)を前に、住民を対象に新型コロナウイルスに関する教育を行ったが、韓国デイリーNKはその場で配られた資料を入手した。


「新型コロナウイルス感染症と伝染感冒(インフルエンザ)の鑑別方法」というタイトルのこの資料は、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の清津(チョンジン)と会寧(フェリョン)で行われた「非常防疫事業を強化し、光明星節を意義深く迎えよう」という講演会で配布されものの一部だ。


資料には「新型コロナウイルス感染症とインフルエンザは、症状において一定の差がある」「発熱と咳以外にも、嗅覚喪失や味覚喪失も新型コロナウイルス感染の主な症状の一つ」との説明がある。


一方、インフルエンザについても「嗅覚喪失や味覚喪失を起こすことがある」としている。ここまでは何の問題もないが、徐々に雲行きが怪しくなってくる。


「この病気の結果には顕著な違いがあるため、この2種類の病気を必ず識別しなければならない」


新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスを識別するには、医学的な検査が必要となるのは言うまでもない。資料は識別方法についての説明が欠落したまま、次のように続けている。


「嗅覚がなくなった新型コロナウイルス感染症患者は、一般的に鼻詰まりや鼻水の症状がない」
「(コロナ患者の)呼吸は比較的穏やかだが、インフルエンザ患者は鼻詰まりや鼻水の症状がある」


厚生労働省の資料によると、コロナもインフルエンザも鼻詰まりの症状が「時々現れる」となっている。大きく違うのは息切れと消化器症状の有無だが、いずれも人によって異なるため、症状だけで見分けるのは難しい。資料は続く。


「味覚を喪失した新型コロナウイルス感染症患者は、苦さと甘さを区別できないが、インフルエンザ患者はできる」
「嗅覚喪失や味覚喪失が感じられたら、ニンニクやコーヒーなどの濃い味や匂いのある食べ物で試験できる」


つまり、民間療法的なもので自分で判断せよということだ。コロナやインフルエンザの感染有無を診断するには、それぞれの検査キットが必要になるが、昨年1月からの国境封鎖と貿易停止のせいで、中国製やロシア製の検査キットが輸入されていないものと思われる。その代用品がニンニクやコーヒーというわけらしい。



ちなみに、北朝鮮では官民挙げて、根拠不明な民間療法を宣伝することがしばしばある。


北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は昨年4月13日、乳酸菌が多く入ったキムチを摂取すればウイルス性呼吸器系疾患を予防できるとする、金日成総合大学の教授の寄稿記事を掲載している。また、衛生防疫機関も昨年4月にキムチがコロナに効果があるとの内容の講演会を行っている。


世界保健機関(WHO)はニンニク、ショウガ、コショウ、ハーブティやサプリ、プロバイオティクス(乳酸菌などの生きた微生物)など、特定の食べ物がコロナ予防に役立つというエビデンスはないとしている。


タダでさえ医薬品が不足している北朝鮮では、コロナに限らず、様々な病気の治療法として根拠不明の民間療法が横行している。内閣などの総合機関紙・民主朝鮮が紙面に掲載した凍傷治療法は、唐辛子粉を入れたぬるま湯に患部を浸ける、お灸をすえる、焼いた土の上に麻の葉やヨモギを乗せて患部を煙でいぶす、豆を入れた袋に患部をつっこんで揉む、そして、犬の骨を焼いた灰をごま油に漬けて患部に塗る、という怪しいものだ。

デイリーNKジャパン

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