「要介護のお年寄りが生きたまま焼死だなんて…」老人ホーム火災事故があぶり出す、中国の深刻すぎる“格差問題”
2025年5月16日(金)8時0分 ダイヤモンドオンライン
「要介護のお年寄りが生きたまま焼死だなんて…」老人ホーム火災事故があぶり出す、中国の深刻すぎる“格差問題”
写真はイメージです Photo:PIXTA
「要介護の高齢者が生きたまま焼死するなんて、あまりにもむごい……」。20人もの命を奪った、中国の農村部の老人ホーム火災。この悲劇は単純な事故に留まらず、その裏には中国社会の構造的な問題が隠されている。都市部と農村部の格差、急速な高齢化と若者の都市流出、医療格差……中国の農村部で暮らす1億4500万人の高齢者たちが直面している現実とは。(日中福祉プランニング代表 王 青)
中国農村部で暮らす高齢者は1億4500万人、その57%が一人暮らし
4月、中国・河北省承徳市の隆化県にある老人ホームで火災が発生。入居していた20名の高齢者が亡くなるという惨事となった。各メディアは事故を大きく報道し、このニュースは社会に衝撃を与えた。「要介護で体が自由に動けないお年寄りが、生きたまま焼死したなんて、あまりにもむごい……」。この事故は多くの人々の関心を集め、SNSでも注目ランキング上位となった。
高齢化が急速に進む中国では、この事故は決して他人事ではない。実は、10年前の2015年にも、同じく内陸の河南省のある老人ホームで火災が発生し、39名の入居者が死亡、6名が負傷するという大事故が起きている。なぜ、農村部の高齢者施設でこうした悲惨な事故が起きるのか。農村部における高齢者の生存状況や介護にかかわる厳しい現実が改めて浮き彫りとなった。
今年1月、中国国家統計局が最新の高齢者人口を発表した。統計によると、2024年末には中国の60歳以上の人口(注:中国の高齢者定義は60歳以上)は3.1億人となり、初めて3億人を突破。総人口比の22%を占めている。そのうち、農村部の60歳以上の高齢者は約1.45億人で、農村部の人口比は23.81%に達している。注目すべきは、農村部において一人暮らしの高齢者の割合が57.3%にも達しているという現状だ。