一難去ってまた一難、苦境に立たされた米国の名門ハーバード大学
2023年7月6日(木)6時0分 JBpress
黒人・ラティーノによるしっぺ返し
米連邦最高裁判所から人種に基づく積極的差別是正措置(
3団体は、
この団体は、以下の3団体だ。
チカ・プロジェクト(Chica Project)
ニューイングランド経済開発アフリカン・コミュニティ(
ボストン都市圏ラティーノ・ネットワーク(Greater Boston Latino Network)
ボストン周辺で活動する公民権、女性の地位向上促進団体で、最高裁から「狭き門」
「いわばしっぺ返し。最高裁判決を逆手に取った黒人・
3団体は、
また、選考過程において入学希望者が親族と大学の関係を「
(Harvard University Legacy Admissions Targeted in Minority Groups’ Complaint - Bloomberg)
ハーバード大学は長年、「レガシー入学」(Legacy Admissions)という特別入学選考方法で、卒業生、
同大学は、毎年6万1000人が入学志願し、入学できるのは1
そのうち、両親のどちらかがハーバードの卒業生という入学者は3
(Harvard Legacy Acceptance Rate | AdmissionSight)
そのうちどのくらいレガシー入学生がいるのかは不明だ。
ただ白人入学者の43%は、「ALDC」(Athletes, Legacy, Dean’s interest list, and Children of faculty and staff=スポーツ推薦、レガシー入学生、学部長マター=大口寄付者の子女、教授・大学職員の子女)だ
(Study on Harvard finds 43 percent of white students are legacy, athletes, related to donors or staff)
ちなみに2022年の入学者の人種別内訳は次の通りだ。
白人:40.6%
アジア系:27.9%
黒人:15.2%
ラティーノ:12.6%
先住民:2.9%
ハワイ系:0.8%
(留学生は14.8%)
(Admissions Statistics | Harvard)
アファーマティブ・アクションの撤廃を余儀なくされたことで、
「ゲタを履かせる」ことでは同じ
最高裁が、「人種に基づくアファーマティブ・アクションは違憲」
その主張を「保守派判事6人」(1人は黒人の保守派判事)
ハーバード大学に入学するには、SAT=学習基礎能力試験、GP
ところが、これまで大学の多様性を保つという名目で、
*1=ハーバード大学の合格者最低点のSATは1280、GPA
ところが、アファーマティブ・アクションのほかに、
それが「レガシー入学」だった。黒人・ラティーノ団体はそこに目を付けたのである。
ハーバードは私立だが「公共財的存在」
ハーバード大学は創立1636年の私立大学だ。
公立ではないのだから、大学卒業生の子女や大学で教える教授・
常に資金不足が続く大学にとっては大口の寄付もありがたかった。
だが、ジョン・アダムス(第2代)以来、ジョン・F・ケネディ(第3
連邦政府からも巨額の研究開発費助成を受けてきた公共財的存在で
その大学に、毎年、合格点に満たない受験生が680人も「
特に、最高裁が黒人やラティーノにゲタを履かせるのは違憲だ、と断を下した直後だ。
最高裁判決に「判断に強く反対する。多様性こそ米国の強みだ」
(2024年の大統領
「ハーバード・エスタブリッシュメント」は黙っていまい
ハーバード大学のラリー・ブラウン学長と次期学長のクラウデン・
「奥深く、変革をもたらす教育、研究、
「この理念は今も昔も変わらない」
「そしてすべての最高学府は、人知を高め、
(Harvard united in resolve in face of Supreme Court’s admissions ruling – Harvard Gazette)
言葉の体操のような文言を並べ立てているが、
もし、教育省が黒人3団体の要求を呑んで、「レガシー入学」
それこそ387年の歴史を誇るハーバード大学が長きにわたり、
政財官学界に広がる「ハーバード・エスタブリッシュメント」
ハーバード大学にとっては一難去ってまた一難。受難が続く。
筆者:高濱 賛