OIST、絶滅種であるシロアリ2匹が求愛行動のまま閉じ込められた琥珀を発見

2024年3月7日(木)17時39分 マイナビニュース

沖縄科学技術大学院大学(OIST)は3月6日、すでに絶滅したシロアリ(E. affinis)のオスとメスが求愛行動中に木の樹脂に巻き込まれ、一緒に閉じ込められてしまったという非常に貴重な約3800万年前の琥珀(化石)を発見し、それを用いて繁殖行動に関する分析を行った結果を発表した。
同成果は、OIST 進化ゲノミクスユニットの水元惟暁博士(現・米・オーバーン大学 助教)、同・ポストドクトラルスカラーのサイモン・ヘルマン博士、同・アレシュ・ブチェック博士(現・チェコ科学アカデミー Laboratory of insect symbiosis)らの研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された。
今回の希少な琥珀は、ブチェック博士が化石コレクター向けのECサイトで発見したという。同博士によれば、シロアリの琥珀は珍しくないが2匹まとめて入っているのを見るのは初めてとし、一目見た途端すぐにその科学的価値を認識し購入したとのこと。
まず、X線マイクロCTを用いて、琥珀に閉じ込められたシロアリ2匹が詳しく観察された。シロアリの体の重要な部分の前面に気泡があったため、種を特定することは簡単ではなかったとする。スキャンの結果、シロアリの種類だけでなく、閉じ込められた個体がオスとメスで、横並びになっており、メスの口器がオスの腹部の先端に触れていることも確認された。
現在も生息しているシロアリは、「タンデム歩行」と呼ばれる求愛行動を取ることが知られている。この求愛行動中に、シロアリのカップルは協調的な動きを見せ、新しい巣を探すまでの間、常に一緒にいられるように行動する。しかし、この2匹は運悪く流れてきた樹脂に飲み込まれてしまったという。
この琥珀で傑出しているのは、2匹が内部で通常のタンデムのように縦に並ぶのではなく、横に並んでいた点だとする。今回の研究では、化石がどのように作られるのか、そして昆虫が死ぬ時に行動がどう変化するのかに焦点が当てられた。木の樹脂は瞬間的に硬化して取り込んだものを保存するわけではない。樹脂に巻き込まれた昆虫などは、生きているのであれば動こうとするが、当然ながら昆虫の通常の求愛行動は乱されてしまい、お互いの位置が移動してしまうはずである。この琥珀が形成される際に生じた位置の変化により、琥珀で見られたパターンが説明できるのではないかという仮説を検証するため、そのプロセスがシミュレートされた。
求愛行動中の現在のシロアリのカップルを使って実験が行われたところ、先頭の個体が樹脂に巻き込まれても、後続の個体はパートナーを見捨てて逃げなかったという。パートナーの周囲を歩き回り、自らも樹脂に巻き込まれ、琥珀の中のカップルと非常によく似た姿勢になったとした。これは、パートナーが粘着性のある樹脂に巻き込まれて脱出できなくなったことを理解できていないためのようだ。通常、シロアリのカップルが捕食者に遭遇した場合は、自らの命を優先して逃げるからだ。樹脂の場合は危険に気づかず、一緒に閉じ込められてしまうことが考えられるとしている。
今回の研究では、木の樹脂に巻き込まれる過程を再現するという新しいアプローチにより、絶滅種の行動を新たな精度で定量化することに成功したという。ブチェック博士と水元博士は、「ある種、化石は最高の証拠であり、過去への直接的な"窓"なのです」と述べている。

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