名城大、GaN面発光レーザーで20%を超す電力変換効率を実証

2024年4月5日(金)14時53分 マイナビニュース

名城大学は4月3日、AR/VRディスプレイやポイントオブケア検査(ポータブル分析器などを用いて、患者の近くでリアルタイムに行う検査)などへの応用が期待される「窒化ガリウム(GaN)面発光レーザー」(波長420nm)にて、20%を超える電力変換効率を実証したことを発表した。
同成果は、名城大 理工学部 材料機能工学科の竹内哲也教授、同・上山智教授、同・岩谷素顕教授、産業技術総合研究所先端半導体研究センターの亀井利浩研究主幹らの共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学協会が刊行する応用物理学全般を扱う学術誌「Applied Physics Letters」に掲載された。
日本発の面発光レーザーは、LEDの高い生産性と半導体レーザーの優れた発光特性の双方を有する発光素子である。一方、窒化ガリウムは、高効率青色LEDを構成する半導体であると同時に、パワー半導体での活用に向けても研究開発が進められている材料で、この双方を組み合わせた窒化ガリウム面発光レーザーは、青色を中心とする可視域をカバーする面発光レーザーとして、AR/VRディスプレイ、自動車用アダプティブヘッドライト、可視光通信システム、そしてポイントオブケア検査など、さまざまな分野への応用が期待されている。これまでの研究で、その電力変換効率は10%台まで到達できたことが報告されていたが、実用化に向けたさらなる効率改善や、生産性向上に向けた高い再現性が望まれている状況だという。
この面発光レーザーは、ウェハに対して垂直方向に光を共振させるレーザーであるため、膜厚によって動作する波長(共振波長)が決まる。それゆえ、所望の共振波長を有し、十分な性能を示す素子作製には、その設計膜厚に対して1%を切る高い膜厚制御性が必要であり、この値はLEDや従来の水平方向に共振させる半導体レーザーが要求する膜厚制御に比べ、1桁ほど厳しい値だという。
このような背景の下、名城大はこの窒化ガリウム面発光レーザーの室温連続動作を2015年に達成したほか、2017年には5%という電力変換効率を実証したが、膜厚制御技術が不十分なため、その後の効率改善が停滞していたとする。従来の膜厚制御では、実際に素子構造を形成する直前に別の実験からその成長速度を把握し、それに基づいて素子構造を形成しており、この場合、最大2%の差異が生じていたという。
すでに実用化されているヒ化ガリウム赤外面発光レーザーでは、「その場反射率スペクトル測定」により、素子の半導体層構造を結晶成長させながら、その反射率スペクトルから成長させた膜厚を把握し、必要な膜厚に到達した時点で成長を終了させる「その場膜厚制御」が行われている。そこで今回の研究では、同じ手法を窒化ガリウム紫色面発光レーザーに適用することにしたとする。
適用に際し、窒化ガリウムで形成された共振器の共振波長の温度依存性が調べられたところ、成長温度では共振波長が20nmほど長波長化することが見出されたという。その長波長化した共振波長にて結晶成長中にその場で反射率強度プロファイルをモニターすることで、必要な最終層厚である3.7λに到達した時点を認識する手法が確立され、そこで結晶成長を終了させることができたとする。
その後、電極形成などの素子形成プロセスを経て、面発光レーザーが作製された。その際、高電流注入時にも発光特性が改善する、発光層直下の窒化ガリウム・窒化インジウム(GaInN)下地層と、単位電流密度当たりの熱放熱性が向上する、直径5μmの比較的小さな発光径も盛り込まれた。その結果、発光径が小さい(5〜8μm)素子では10mW以上の高い光出力が示され、発光径5μmの素子では20%を超える電力変換効率が達成されたという。また、この面発光レーザーの設計発振波長は418nmだったのに対し、実際の発振波長は417.7nm(8μm径素子)であり、共振波長制御性、つまり膜厚制御性として、差異は0.1%という高い値が示されたとした。
今回の研究成果により、20%を超える高効率窒化ガリウム紫色面発光レーザーが実現された。この電力変換効率の大幅向上は、半導体層構造の結晶成長の膜厚制御精度を、従来よりも約1桁高める「高精度その場膜厚制御」手法を確立できたことが大きな要因とする。将来の生産性向上にもつながることから、社会実装に向けた大きな一歩であるといえるとしている。

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