怒りは紙に書いて捨てるが有効!? ビジネスシーンでの応用法も名大が発表

2024年4月11日(木)19時49分 マイナビニュース

名古屋大学(名大)は4月10日、実験参加者が書いた文章に対してあえて低い評価を与えることで怒りを生じさせた後、その怒りを感じた状況を客観的に紙に書かせ、それを丸めてゴミ箱に捨てると、侮辱される前と同程度まで「怒り得点」が低下したことから(書いた紙を捨てずに保持した参加者の怒りはそれほど下がらなかった)、ビジネスシーンなどで手軽に怒りを抑制できる新たなアンガーマネジメント法として利用できる可能性があると発表した。
同成果は、名大大学院 情報学研究科の川合伸幸教授、同・金谷悠太大学院生(研究当時)らの研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。
生物は進化の過程で、危険を回避するための恐怖に始まり、生き残るためにさまざまな感情を身につけてきた。捕食者に狙われるなど、自身の生命がかかった状況下で相手を恐れずに闘って撃退するための闘争心(怒り)なども、野生の世界では重要だろう。
ヒトもおよそ40億年といわれる地球の生命の進化の果てに誕生した生物であることから、そうした先祖たちが身につけてきたさまざまな感情を受け継いでいる。そうした感情のうち、怒りは、現代人の日常生活の中では、暴力行為につながって人間関係を壊してしまったり、場合によっては事件となるなど、トラブルの原因となることも多い。そのため、怒りの感情を制御するための心理トレーニングである「アンガーマネジメント」が重要視されている。
しかしアンガーマネジメントの大半は、経験則に基づいてまとめられたスキルであり、試してみれば効果がある(ように思える)ものもあるが、その多くは、正確な手順を踏んだ実験によって取得されたデータなど、誰が見ても文句のつけられない客観的なエビデンス(証拠)から導き出された科学的手法というわけではないという。
また、すでに効果が証明されている感情のコントロール手法もある。たとえば、「再評価」(情動を誘発したできごとや状況の解釈を変える試みで、たとえば、混み合う電車内で足を踏まれて怒りを感じた時、高齢者がふらついて足を踏みつけてしまっただけと解釈を変えるなど)や、「自己距離化」(第三者の視点から行う反すうで、たとえば怒りが生じた自身の体験を三人称(彼、彼女など)で記述したり観察者の視点から視覚的にイメージしたりすること)など。しかしどちらも認知負荷が高く、怒りを感じている真っ最中に実践するのは困難とされる(それができるということは、すでにある程度落ち着いているということ)。そのため、より簡便でその場で効果的に怒りを抑制できる手法が求められていた。
そこで研究チームは今回、自分の捨てたい思いを皿に念じ封じ込めて割ることで、自分の気持ちを捨て去ることができるという、愛知県の清洲山王宮日吉神社で行われている「はきだし皿」と似たような手法で、怒りが収まるかどうか調べることにしたという。
今回の研究では、実験参加者が書いた文章に対し、あえて低い評価を与えることで(侮辱することで)怒りを生じさせ、その後で怒りを感じた時の状況を客観的に紙に書かせ、その紙を丸めてゴミ箱に捨てさせるという方法が採られた(実験1)。すると、侮辱される前と同程度まで「怒り得点」が低下し、書いた紙を捨てずに保持した参加者の怒りはそれほど下がらなかったという。また、ゴミ箱に捨てる代わりにシュレッダーで裁断しても(実験2)怒りは減少し、箱に入れただけでは減少しないことも確認された。
なお怒り得点とは、多くの怒りに関する研究で採用されている指標のことで、今回の場合は、怒りを表すとされる5つの形容詞(「怒った」「敵対心のある」「むかむかした」「煩わしい」「いらだった」)に対し、6件法(1=まったくあてはまらない、6=非常によくあてはまる)で主観的な評価が行われた。なお、5項目の内的整合性が高かったため、これらの平均が怒り得点とされた(今回の実験では、怒りの実験であることをわからなくするために、「明るい」「おおらかな」「陽気な」の3項目の形容詞についての回答も行われた)。
今回の手法であれば、ビジネスシーンなどにおいて怒りを感じた時に、その場でメモを取るようにして怒りを書き出し、それを捨てることでその場の怒りを抑えるといった応用が考えられるという。
今後、紙だけでなく、電子メールやテキストデータのようなデジタル媒体でも同様の効果が得られるのかを検証する必要があるとしている。

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