公取委がGoogleに「排除措置命令」 Androidスマホを巡りメーカー/キャリアを不当に拘束と判断 Googleは「遺憾の意」を表明
2025年4月15日(火)18時55分 ITmedia Mobile
公取委の報道資料
●違反認定に至った行為の概要
公取委は2023年10月23日、Android端末を製造/販売するメーカーや通信事業者との契約内容について、Googleに対する審査を開始した旨を公表した。
審査に当たり集めた意見や情報、そして海外の競争機関との情報交換の結果を踏まえて、公取委はGoogleが少なくとも2020年7月から2つの契約によってAndroid端末上で他社の検索エンジンを実装させないように働きかけていたと認定し、これが独占禁止法第19条で禁止されている拘束条件付取引に該当すると判断した。
●「拘束条件付取引」とは?
独占禁止法第19条で禁止されている取引条件の1つで、取引相手あるいは「取引相手の取引相手」の事業内容を不当に拘束するもの。
違反認定取引その1:Mobile Application Distribution Agreement(MADA)
Android端末に「Google Play」をプリインストールしたい場合、メーカーと通信事業者はGoogleと「Mobile Application Distribution Agreement(MADA)」と呼ばれる利用許諾契約を締結する必要がある。
GoogleはMADAにおいて以下の2点をメーカーや通信事業者に要求していたという。
・「Google Search(Google 検索)」のプリインストールと、初期ホーム画面へのウィジェット/アイコンの配置
・「Google Chrome」のプリインストール、初期ホーム画面へのアイコン配置と検索エンジン設定を「Google」のままとすること
違反認定取引その2:Revenue Share Agreement(RSA)
AndroidスマートフォンにGoogle Chromeをプリインストールした場合、端末メーカーと通信事業者はGoogleの検索広告で得られた収益の一部を共有する「Google Mobile Revenue Share Agreement(MRSA)」を締結できる。
端末メーカー/通信事業者との収益共有プログラム(RSA)はMSRA以外にもあるようだが、いずれにおいてもGoogleは収益分配を行う条件として以下の内容を課していたという。
・ユーザー以外(端末メーカー/通信事業者やその取引先)が以下の設定を行わないこと・・Google以外の検索サービスの実装
・Google以外の検索サービスへの接続を主目的とする機能(ショートカットなど)
・ユーザーに対するGoogle以外の検索サービスの推奨/提案
端末における全ての検索サービスをGoogleのものとすること
初期ホーム画面にGoogleの検索ウィジェットを置くこと
規定のブラウザをGoogle Chromeとした上で、初期ホーム画面のドック画面にアイコンを配置した上で、ユーザー以外が以下の設定を行わないこと
・検索機能におけるGoogle以外の検索サービスの利用設定
・Google以外の検索サービスへの設定変更の推奨/提案
プリインストールするブラウザについて、検索設定を「Google」または「通信事業者のトップページ」に設定すること
●排除措置命令の内容
上記2つの違反が認定されたことを受けて、公取委はGoogleに対して以下の排除措置命令を出した。
1. 違反認定された行為の取りやめと内容の見直し
2. 1に対する業務執行機関での決議(意思決定)
3. 1と2に関して、取引先(端末メーカーと通信事業者)に通知し、自社の従業員にも周知徹底すること
4. 将来不作為(※1)に関する措置を講じること
6. Google Playのプリインストール許諾時に、Googleの検索サービスやChromeのプリセット/プリインストールやアイコンなどの配置場所を指定することの禁止
7. 利益共有の条件として「他の検索サービスの排除」を盛り込むことの禁止
10. 法令順守体制の整備
12. 行動指針の作成、自社従業員への周知徹底(3とも関連)
13. 研修と監査の定期的な実施
16. 5年間、上記の履行を第三者によって監視すること
17. 6の状況を公取委に報告すること
これらの措置により、公取委は「アプリの配置や検索設定についてメーカーや通信事業者の選択肢を確保し、検索事業者間の競争が促進される」としている。
(※1)独占禁止法違反を認定された取引条件(内容)について、取引先との合意のもと今後履行しないこと
●Googleの反応は?
公取委による排除措置命令を受けて、Googleは4月15日に日本法人(グーグル)のブログで声明を発表した。
声明でGoogleは日本市場への強いコミットメントを行ってきたことを強調し、公取委の措置命令に「遺憾の意を表明」している。
同社は公取委が求めているMADA/RSAの条件見直しについて「日本のスマートフォンメーカーや通信事業者は、Googleとの取引を強制されていません。彼らは、Googleが最高のサービスを提供していることを踏まえ、自らの事業や日本におけるユーザーにとって最良の選択肢として、自らGoogleを選択しているのです」としており、あくまでも“任意の”契約である旨を主張する。
その上で、今回の命令について慎重に検討した上で、「Androidが日本の消費者、スマートフォンメーカー及び通信事業者にとって競争力のある選択肢であり続けられるよう、公正取引委員会と協力して取り組んでまいります」としている。