海外モバイルトピックス 第407回 スマホ時代に逆行する「退屈なケータイ」がハイネケンから登場

2024年4月23日(火)11時15分 マイナビニュース

SNSや検索や動画視聴など、誰もが日々スマートフォンを使っています。スマートフォンが無ければ生活できないという人も多いでしょう。しかしそんな時代にあえて「The Borging Phone(退屈なケータイ)」という製品が登場します。ビールメーカーのハイネケンとファッションブランドのBodegaがコラボしたThe Boring Phoneは、スマートフォンで日々使われる機能のほとんどが利用できません。
スマートフォンは便利な存在ですが、家族や友人、恋人などと一緒の時を過ごしているときも通知の嵐に襲われてしまい、最も身近な人とのコミュニケーションを分断してしまいます。また観光地に出かければスマートフォンのカメラを取り出して写真を撮ることが当たり前になっていますが、その場所の雰囲気を楽しんだり感動の時間にひたる余裕も無く次の目的地にいどうしてしまうかもしれません。スマートフォンは便利な反面、人々から「人間らしい生活時間」を奪ってしまっているかもしれないのです。
The Boring Phoneはスマートフォン中心の生活からしばし離れられる、デジタルデトックスできる携帯電話です。昔懐かしい折りたたみ型の本体は透明なボディーに覆われています。そしてハイネケンのトレードカラーであるグリーンを所々に配置。ディスプレイはカラーですがあえてモノクロ表示にしています。メニューを見ると通話やメッセージ、カメラなどがありますが、SNSの見慣れたアイコンはありません。The Boring PhoneはSNSへのアクセス機能は一切持っていません。
本体は折りたためばコンパクトな大きさになります。バッテリーが透けて見えるのもどことなくスタイリッシュ。ポケットに入れてしまえばその存在にも気づくことはないかもしれません。
メッセージ(SMS)が出来れば最低限のコミュニケーションを図ることはできるでしょう。もちろん通話機能は搭載されています。なお詳細なスペックは公開されていないようですが、通信方式は4Gに対応、Bluetoothも搭載しています。
The Boring Phoneで唯一「退屈ではない」機能はゲームでしょう。画面上のドットをチェックしていくと蛇の本体が長くなっていく古典ゲーム「Snake」がプリインストールされています。なおアプリストアはないため他のゲームを追加することはできません。
カメラは30万画素です。3,000万画素でも300万画素でもありません。明るいところならそこそこの写真を撮ることができますが、室内の暗いところだとほぼ何も写せないレベルの性能です。でもThe Boring Phoneは「写真を撮ってSNSにシェアする」といったことは考えられていない製品です。昔のコンデジがブームなように、あえて画質の悪い写真を撮影することを楽しむカメラなのです。
こちらの画面は「メールが届いていません」という表示が出ています。これはメールアプリでメールをチェックした画面ではなく、ジョーク的にメールアイコンのアプリがあり、それを起動すると表示されるメッセージのようです。「メールなんて気にせずに、楽しい時間に戻ってね」というメッセージ、これはThe Boring Phoneを使っている自分だけではなく、一緒にいる友人たちに見せるのもいいでしょう。
The Boring Phoneは5,000台限定で販売されます。価格はまだ未定ですがファッションブランド製品でもあり、意外と高いかもしれません。何でもできるスマートフォンが不自由なく手に入る今だからこそ、何もできない携帯電話により高い価値がつけられても不思議ではないでしょう。そもそもThe Boring Phoneを見て「これは使えない」と考える人はターゲットユーザーではないのです。
なおThe Boring Phoneの製造開発を行ったのはノキアブランドのフィーチャーフォンやスマートフォンを展開しているHMD。HMDは現在も積極的にフィーチャーフォンを展開しており、The Boring Phoneのスペックは同社の「Nokia 2660 Flip」とほぼ同等。このモデルをベースにボディガがデザインしたモデルがThe Boring Phoneなのでしょう。The Boring Phoneがヒットすれば他のメーカーからも似たような製品が今後、発売されるかもしれません。
山根康宏 やまね やすひろ 香港在住の携帯電話研究家。海外(特に中国)のスマートフォンや通信事情に精通。IoT、スマートシティー、MaaS、インダストリアルデザインなど取材の幅は広い。最新機種のみならずジャンク品から百万円のラグジュアリーモデルまであらゆる携帯電話・スマートフォンを購入する収集家でもあり、その数はまもなく1,800台に達する。公式サイト:http://www.hkyamane.com/ この著者の記事一覧はこちら

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