AI PC時代の製品選び 展示会「第33回 Japan IT Week 春」で目にしたもの AI活用やDX化を推進したい企業は要注目!

2024年4月25日(木)18時20分 ITmedia PC USER

「第33回 Japan IT Week 春」

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 4月24日から26日の3日間、東京ビッグサイト(江東区)で12のEXPOを束ねた「第33回 Japan IT Week 春」が開催されている。
 本イベントは、DX(デジタルトランスフォーメーション)や生成AIの活用に取り組みたい企業が情報交換をしたり、課題解決となるソリューションを見つけたりできる“商談のための展示会”だ。とはいえ、コンシューマー向けとしても展開されそうなもの、コンシューマーにも影響のありそうな製品なども多数展示されていた。
●ASUS JAPANはエッジコンピュータを“大量”展示
 ASUS JAPANは、衝撃や振動、高温などに強い車載用エッジコンピュータ「PV100A」や、低消費電力の産業用エッジコンピュータ「PE100A」(どちらも手のひらサイズ)など、多数の産業用エッジコンピュータを展示していた。Intelから事業継承した「NUC」(Next Unit of Conputing)の新製品も展示中だ。
 中でも「ASUS NUC 14 Pro+」は、1月に台湾ASUSTeK Computerが発表してから4カ月近く経過した今、初めて実機を披露したという。「ASUS NUC 14 Pro」の上位版ということもあり、アルミ製ボディーが高級感を醸し出していた。
 ASUS NUC 14 Pro+は、CPUにIntel Core Ultra 9 185H/Core Ultra 7 155H/Core Ultra 5 125H、グラフィックスはCPU内蔵のIntel Arc graphics、メモリがDDR5-5600規格のSO-DIMMを2基搭載可能で、最大96GB(48GB×2)をサポートする。ストレージはPCI Express 4.0 x4のM.2 SSDに対応している。ワイヤレス機能はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3という構成だ。
 インタフェースはフロントにUSB 3.2 Gen 2 x2 Type-C、USB 3.2 Gen 2 Standard-A×2基、リアにThunderbolt 4×2基、USB 3.2 Gen 2 Standard-A、USB 2.0 Standard-A、HDMI 2.1出力×2基、有線LANを備える。サイズは約144(幅)×112(奥行)×41(高さ)mmと、コンパクトな仕上がりになっている。
 同じく1月発表のASUS NUC 14 Proも展示していたが、国内での販売開始はいずれも6月下旬になる見込み。先にASUS NUC 14 Proを、次いでASUS NUC 14 Pro+を投入することになる。
 デザイン性も性能も高いNUCであれば「ミニPCとしてコンシューマー需要もあるのでは」という筆者の質問に、担当者は「コンシューマーでも手に取れるよう、販売チャネルを展開していきたい」と話した。
●“超速”サーバが誕生するかも?——MSI
 エムエスアイコンピュータージャパン(MSI)の展示の目玉は、国内展開を2023年に告知していたサーバソリューションだ。
 どんなに回線速度が上がっても、処理するクラウドサーバのマシンスペックが低ければ意味がない。MSIの「S2206-04」は、NVMeでRAIDを組めるように設計したストレージサーバだ。読み書きの速いNVMeストレージを投入しても「RAIDカードがボトルネックとなり、思うような速度が出ない」「4台までしかNVMeストレージを搭載できない」といった課題があった。
 ソフトウェアRAIDを採用することで、CPUが直接処理をするためハードウェア的なボトルネックは生じないが、データ量が多くなるとコア数を増やしても速度が出ない。高いパフォーマンスを得るには、高価なCPUが必要になるという別の課題も生まれてしまっていた。
 S2206-4は、GPUを利用してそれらボトルネックを解決するという。CPUが読み出しを、GPUが書き込みを行うことで処理や負荷を分散し、NVMeの持つパフォーマンスを発揮できる。理論上のスループットは最大毎秒260GB、実測でも毎秒100GBとなる。
 MSI「G4101-01」は、GPUカードを4基搭載できるGPUサーバだ。スロットの上部に電源コネクターの空間も設けてあり、通常、ギリギリの高さに設計することが多い製品の中で「オンリーワンの存在だ」と担当者は言う。
 担当者は続けて「NVMe自体がまだ高価なこともあり、導入したいという企業は限られると思うが、4K/8Kの映像を扱っているスタジオ、プレミアムな体験を提供したいと考えているクラウドサーバベンダー、機械学習を効率的に行いたいと考えている企業などではメリットがあるのではないか」と説明する。
 MSIブースでは「Panel PC」も披露していた。展示していたのは10型から15.6型までのディスプレイを搭載する製品で、全て同じマザーボードを搭載しているという。これによってアプリやシステム開発が容易になり、コストダウンが図れる。工場や飲食店のハンディー端末として、また店舗でのPOS代わりとしての利用を想定しており、既に国内でも飲食店に導入されているという。
●QNQPは大容量データ時代のThunderbolt NASを展示
 ネットワークストレージメーカーのQNAP(キューナップ)は、Thunderbolt NAS「TBS-h574TX」や100GbE(ギガビットイーサネット)ネットワークスイッチ「QSW-M7308R-4X」と、その速度を生かすオールフラッシュストレージ「TS-h2490FU」などを展示していた。
 YouTube、TikTok、Instagramなどで動画投稿が身近なものになり、動画編集が一般ユーザーにも広がっている。NASに動画素材を保存し、ノートPCなどクライアント端末からアクセスして編集を行う場合、通信速度が作業効率に影響する。Thunderbolt 4の転送速度は最大40Gbpsなので、高速かつ安定した接続で作業効率をアップできる。
 100GbE対応ネットワークスイッチとオールフラッシュストレージは研究機関や大学、映像制作やデザインを行う企業など、大容量データを高速通信する必要がある組織で重宝するだろう。
●企業のメタバース活用を支援! サードウェーブは「raytrek」を展示
 法人向けPC「ドスパラプラス」を展開するサードウェーブは、企業のメタバース活用を支援する「第2回 メタバース活用 EXPO 春」エリアに出展した。法人向けPC「raytrek」(レイトレック)シリーズのワークステーション、ミドルタワー、コンパクト、ノートの全5機種を展示している。
 raytrekは、高速CPUと高性能グラフィックボードを搭載し、レンダリング処理などで高いパフォーマンスを発揮する。展示機のうち2機ではデモ体験も可能だ。「CINEMA 4D」で制作したファイルをレンダリングソフト「OctaneRender」でリアルタイムレンダリングする様子を確認できた。
 「1秒24フレーム素材のレンダリングに1分かかるのか、30秒かかるのかは、長尺になればなるほど時間の差が開いていく。待っている時間ほど非生産的な時間はない。高速処理できるPCを用意していただければそれだけ生産性が上がる。ドスパラプラスのraytrekは、選択肢が豊富な上、ポートなどを必要に応じて増設するといったカスタマイズも可能なので、企業のニーズにマッチするPCを導入できる」(担当者)
●購入後のメンテナンスが楽になる!——デル・テクノロジーズ
 今回の展示では、「エッジコンピューティング」「AI PC」などが目立ったが、デル・テクノロジーズもCopilotを活用するためのCore Ultra搭載PC「Latitude 5450」などを展示していた。
 法人向けLatitudeシリーズでは「Dell Optimizer」という管理ソフトを使える。これにはサードプレースなどで作業中に背後からの視線をシャットアウトする「盗み見検出」や、エンドユーザーのPC利用時間などを学習して電源管理を最適化する「電源」などさまざまな機能がある。
 中でも、「コラボレーションタッチパッド」はハイブリッドワークが当たり前になった今の時代に非常に便利な機能だ。タッチパッドの上部を右にスワイプすると内蔵カメラのオン/オフ、画面共有、チャット、マイクのミュート/ミュート解除ボタンが表示され、マウスでミュートボタンを探すことなく(たとえマウスカーソル自体が行方不明になったとしても)ワンタッチでミュートにしたり解除したりすることができる。相手の時間をムダにしない“思いやり設計”だと感じた。
 同社の法人向けPCの裏には、7桁からなるサービスタグが記載されている。エンドユーザーはその7桁をサポートサイトに入力するだけで、必要なアップデート情報を知って、必要なファイルをダウンロード可能だ。OSや搭載メモリ、ストレージの型番、ドライバーなどをエンドユーザー側で調べる必要がなく、ITリテラシーが低い社員でも自力で解決できる。IT管理者にとって管理コストやコミュニケーションコストを削減できるだろう。
●「選ぶべき理由」を前面に押し出したVAIOブース
 VAIOブースでは、軽量で社員に負担なく持ち運んでもらえるようなビジネスノートPCの実機を展示していた。
 その他、客先で広げる際にもふさわしい美しさを長く保てる素材を使っていること、軽くて強度の高いカーボンファイバーを使っていること、胸の高さから落としたとしても問題ない高い堅牢性のあることなどで訴求していた。
●大容量データ時代を生き抜くSeagateブース
 HDDメーカーのSeagateは、国内ではハードウェアとシステムを提供してきたが、さくらインターネットのグループ会社のプラナスソリューションズと共同で「Lyve Mobile」サービスを4月17日に立ち上げており、その展示も行っていた。
 「Lyve Mobile」は、持ち運べるSeagateの大容量エッジストレージをサブスクリプションで提供するサービスだ。例えば、これまで自社内にサーバを持っていた企業がクラウドサーバへと移行する際、帯域とデータ量にもよるが、時間がかかりがちだった。
 Lyve Mobileの大容量エッジストレージにデータを移し、そのエッジストレージをSeagateとサービス連携しているクラウドサーバ事業者へ持ち込めば、インターネット回線を使ってデータ転送するより高速だ。無事に任務を完了したエッジストレージのデータは安全に消去する仕組みがあり、後は返却するだけ。借りる期間は10日からと柔軟だ。ーまで持ち運ぶためのケースも用意されており、振動に強いのはもちろん、簡単には解除できないロック、GPS発信機内蔵で、万が一の盗難にも安心できる。また、エッジストレージを取り出せたとしても、ロックがかかっているためデータを盗み見ることができないようになっている。
 なお、個人の映像クリエイターなどでの需要も見込み、個人向けにもサービス展開している。
●180度の視野角があるビデオバーを展示——GNオーディオジャパン
 GNオーディオジャパンのブースには、Jabraブランドを象徴するような各種ヘッドセットの他、話題のCopilotを最大限に活用するビデオバー「PanaCast 50 Video Bar」「PanaCast 50 Video Bar System」が展示されていた。
 PanaCast 50 Video Barは、Microsoft Teams認定を受けたデバイスで、話者を認識した上で会話の内容をテキストに起こせる。そのテキストを元にCopilotが要約したり、話者を指定してその発言のみを取り出したり、トピックを確認したりできる。
 なお、PanaCast 50 Video Barの3つのカメラは180度の視野角を持つが、一般的な広角カメラと異なり、両端に座っている人の顔も正面から捉えたように映し出せるので、会議室からの参加者は座る場所を気にする必要がなく、リモートで参加している人は全員の顔やその評定を明瞭に見られるというメリットがある。
 AI全盛ということもあり、エッジコンピュータの展示が目立った今回の「IT Week 春」。企業の経営者から見れば「AI PCは時期尚早では」と思うかもしれないが、Web商談を行うのに映像が粗い、声が途切れる、背景ぼかしなどの映像処理でパフォーマンスが落ちるといった状況では商機を逃してしまうかもしれない。
 どのようなPCがビジネス標準になりつつあるのか、知見を得るためにも足を運んでみてはどうだろうか。

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