豊橋技科大など、産業ロボット用ワイヤレス給電ロータリージョイントを開発

2024年5月1日(水)12時12分 マイナビニュース

豊橋技術科学大学(豊橋技科大)と近藤製作所の両者は4月26日、電界方式を使った産業ロボット向けの「非接触電力伝送(ワイヤレス給電)ロータリージョイント」を開発したことを共同で発表した。
同成果は、豊橋技科大の田村昌也教授、近藤製作所の近藤康正専務取締役らの共同研究チームによるもので、愛知県と科学技術交流財団が2022年度から実施中の産学行政連携研究開発プロジェクト「知の拠点あいち重点研究プロジェクトⅣ期」内で行われている「プロジェクトCore Industry」の研究テーマ「スマートファクトリーの完全ワイヤレス化に向けた非接触電力伝送」の中で行われた。なお、この技術の詳細は、5月8日から京都大学で開催される国際会議「2024 IEEE Wireless Power Technology Conference and Expo」にて発表される予定だ。
現在日本では、生産現場にIoTやAIを導入し、ヒト・機械・システムをつなぐスマートファクトリー化が進められており、その結果として、データの効率的な収集による品質向上や、生産計画や製造の最適化によるコスト削減など、大きな効果を上げ始めている。だがこのようにデータ管理、システム制御、モニタリングなどのデジタル化が進んできた一方で、作業の中核を担う産業ロボットにはまだ改善すべき点が残されていた。その代表とされるのは、構造的に連続駆動による断線が生じやすいという点だ。
もし産業ロボットの電力供給にも非接触電力伝送の仕組を導入できれば、断線という課題を解決できると同時に、データ管理から電力供給まですべてをデジタル化でき、作業効率や生産性のさらなる向上が期待できる。産業界において製造拠点の日本回帰が始まっている今、非常に重要な技術となると期待されている。
産業ロボットが、ワーク(加工対象物)の搬送や製品組み立てなど多くの工程で活躍しているのは説明するまでもない。ワークを掴むなどの作業にはロボットハンドが使われるが、手首軸の旋回時にハンドに接続されている配線ケーブルが振り回されるため、配線ケーブルに負荷がかかり、断線しやすいことが課題だ。そのため現在は、ロボットとハンドの間にロータリージョイント(固定された配管から回転する機械などに油、水、空気などさまざまな流体を供給する継手のこと)を設置して配線ケーブルを省略することにより、断線を回避するよう工夫されている。
ロータリージョイントの現在の主流は「スリップリング」(静止体から回転体に対して電力と電気信号を伝達可能で、回転しながら接続できるコネクタ)による接触式で、電力供給と信号のやり取りはスリップリングを介して行われる。しかし、この方式はロボットの急激な動作によりノイズが入りやすく、また摩耗により使用寿命が短いという課題を抱えていた。そこで、そうした課題を克服する手法として研究開発が進められているのが、非接触電力伝送方式だ。しかしこれもまた課題があり、伝送機構の軽量化が強く望まれているという。そこで今回の研究では、磁界方式と電界方式の2種類がある非接触の近距離電力伝送方式のうち、耐久性に優れ、なおかつ軽量化にも適した電界方式での開発に着手したとする。
今回開発された非接触電力伝送ロータリージョイントは、送電側および受電側を2枚ずつの薄い電極で構成し、さらに電極の構造・配置およびロータリージョイント本体の材料への工夫により、軽量化だけでなく高効率化が図られた。その結果、磁界方式に比べて30%の軽量化と10%の高効率化が達成され、総重量500g、RF-RF効率99%のロータリージョイントが実現された。さらに、同ロータリージョイントを用いてワイヤレス給電システムが構築され、電力伝送効率73%、DC電圧24V、出力12Wが達成された。
今回のロータリージョイントは、シンプルかつ軽量な構造で、メンテナンス性にも優れ、安価に製造できる点が魅力であり、工場内の製品製造に関わる数多くのロボットへの適用が期待されるという。研究チームは今後、今回のロータリージョイントの実用化に向けて、送電電力を生成する高周波電源や整流回路などの周辺回路の小型化に取り組む予定とする。
一方で今回のプロジェクトテーマでは、産業ロボット向けの近距離伝送用の非接触給電システムの開発と並行して、工場内センサ向けの遠距離伝送用の非接触給電システムの開発も進めているとのこと。今後この遠距離伝送システムが完成すれば、工場内の製品製造に関わるロボットから作業環境を管理するセンサまで、さまざまな電気・電子機器に適用できる非接触電力伝送の基礎技術が構築されることになり、スマートファクトリー化の進展への貢献が期待されるとしている。

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