フラッグシップ投入で新局面。新製品&新ストアに見る、シャオミのブランド戦略を大沼社長に聞く

2024年5月13日(月)20時31分 マイナビニュース

シャオミ・ジャパンは5月9日にフラッグシップスマートフォン「Xiaomi 14 Ultra」や、高精細ディスプレイを搭載しながら69,800円からのタブレット「Xiaomi Pad 6S Pro 12.4」、ミドルレンジスマートフォンの「Redmi Note 13 Pro 5G」「Redmi Note 13 Pro+ 5G」、86型のチューナーレステレビ「Xiaomi TV Max 86”」を発表しました。
ライカと共同開発したカメラを搭載する「Xiaomi 14 Ultra」は、日本のユーザーの要望を受けて販売が決定したとのこと。これまで国内向けには、エントリーやミッドレンジといったモデルを中心に展開してきた同社ですが、今後はフラッグシップモデルも展開していくのでしょうか。シャオミ・ジャパン取締役社長の大沼 彰氏、同社プロダクトプランニング本部 本部長の安達晃彦氏に聞きました。
──日本市場でのシャオミは、当初はフラグシップモデルを出されていましたが、市場の変化もあり、最近は価格を重視した製品が目立っていたように思います。このタイミングで再び、フラッグシップモデルを投入される狙いを教えてください。
大沼氏:このタイミングで突然というわけではなく、あくまでも今までやってきたことの地続きに今回があると考えています。エントリーやミッドレンジのモデル、昨年の秋にはハイエンドの「Xiaomi 13T」シリーズも発売しましたが、どのカテゴリーにおいてもこだわってきたのが、機能に対する価値、コストパフォーマンスです。
日本ではご存知の通り、キャリアさんを通じてスマートフォンを買われる方が多い。キャリアさんと一緒にやっていくことが、一番お客様に届けられる方法なので、そのマーケットにおいて求められている、エントリーやミッドレンジのモデルを展開しながら、昨年秋には次の一手として「Xiaomi 13T」シリーズを出しました。
順序立てて商品を展開してきたわけですが、そんな中で「Ultra」シリーズは、ライカとの共同開発ということで注目いただいた。我々日本法人としてももちろん発売を望んでいましたが、日本のユーザー様からのご要望も多かった。これまでの積み重ねに、ユーザー様の声も加わって、そうしたひとつひとつが実を結び、今回発売を実現することができました。
──日本法人として「Ultra」を発売したいということは、ずっと本社に働きかけてこられたんですか。
安達氏:はい、そうです。といっても最初の「Xiaomi 12S Ultra」の時は、「日本にも持ってこられたらいいな」くらいだったんですが、「Ultra」シリーズの世代が上がるに従って、日本のお客様からの期待が徐々に大きくなってきた。特にX(旧Twitter)での反応が、飛び抜けて大きかったですね。我々としても、コストパフォーマンスだけじゃないオンリーワンの製品、他社にはない強みがある製品を、日本のお客様にお届けしたいとずっと考えていたので、「Ultra」シリーズを日本に持ってきたいということは、言ってきました。
──日本では、他メーカーがライカブランドの製品を出しているため、シャオミがライカブランドを使うのは難しいのではないかと言われていましたが、今回はそのあたりも本社が根回ししてくれたということでしょうか。
大沼氏:はい、そのとおりです。ライカ社とのライセンスについては、日本法人ではまったく関わっていないので、日本での発売に向けて本社の方で動いてくれました。それは先ほどもお話ししたように今回突然ということではなくて、これまでの積み重ねがあって、それがお客様の要望の声にもつながっているという背景を、本社の方でも理解してくれたということだと思っています。
まだブランドも浸透していない中で、いきなりフラッグシップモデルを持ってきても、お客様に届かないところもあったと思うので、エントリー、ミドルモデルと下からていねいに積み重ねてきました。それもひとつのやり方ですが、一方でブランドとして認知を高めるためにフラグシップモデルで上からドーンとアプローチする方法もあります。両方から同時に出していくのが一番効率もいいし、日本のお客さんにも届きやすいのではないか。そうした考え方が、本社も含めて一致したということです。
──日本でフラッグシップモデルを発売するにあたって本社から、最低これくらいは売ってほしいといったハードルは設定されているのでしょうか。
大沼氏:それはもちろん、いっぱい売れた方がいいに決まっていますけど、まずはシャオミ・ジャパンとしてこういう製品を出すことが重要だと思っています。もちろん社内的な目標はありますが、そこだけに視点を置いてはいません。
安達氏:この製品の役割は旗振り役として、ブランドを牽引をすること。商品としての売上とか台数よりも、シャオミを知らなかった方に認知していただく、シャオミのことをより広く深く知っていただく。そのきっかけになるような製品の露出の仕方を、今考えています。
今回の発表会のテーマに「これまでにない体験を」と掲げたように、購入されたお客様には、ぜひ「Xiaomi 14 Ultra」を経験していただきたい。それを踏まえて他製品にも波及効果が出てきたら、我々メーカーとしては成功だと言えるし、次につながっていくんじゃないかと思います。
──さらなるブランド認知向上へ、今後どう取り組んで行こうと考えていますか。
大沼氏:実はおかげさまで、キャリアさんで扱っていただいているエントリーモデルの評判が良くて、すごく売れているんです。そういったところからシャオミを知っていただく方法もあるし、今回のような革新的なフラッグシップモデルを投入することで、知っていただく方法もあります。また、5月25日から渋谷PARCOで展開するポップアップストアのように、まずは触れていただく場所を作るという方法もあります。
ポップアップストアは昨年渋谷で展開して、先日、二子玉川の蔦屋家電さんでもイベントをさせていただきました。予想以上に多くの方に足を運んでいただいて、渋谷のときは決済方法が現金のみだったのですが、それでも様々な製品をお買い上げ頂きました。次のストアでは初めて、店名に「シャオミ」というブランド名を大きく掲げます。こうした出店をすることで、目を留めてくださる方もいると思うので、並行して取り組みながら改めてブランドを立ち上げていきたいとと考えています。
──今回タブレットやチューナーレステレビも発表されましたが、今後のスマートフォン以外の製品の取り扱いについても教えてください。御社は中国では様々な家電や、電化製品以外の商材もストアで展開されています。日本でも今後、取り扱う商材を広げていく考えはありますか。
大沼氏:2月に開催された「MWC Barcelona 2024」では、シャオミとして初めてEV車を展示しました。そのときに「Human x Car x Home」をかけ算をしていくという話しがあったのですが、日本でもまさにこのかけ算というのが、ポイントだと思っています。
「CAR」は今のところは中国だけですが、「HOME」でできることは、いろいろあります。日本ではまだ全然、そういったところに入り込めていませんが、ものすごくチャンスがあると思っています。たとえば昨年からKDDIさんと展開しているチュナーレステレビも、そのひとつです。KDDIさんとの施策のように、メーカーだけでなく事業者さんにもメリットがあるような関係を、地道に広げていきたいと思っています。
──KDDIは今回、「au +1 collection」として「Xiaomi 14 Ultra」を取り扱うとのことですが、これはどのような座組になるのでしょうか。
安達氏:いわゆるSIMフリーモデルとしての扱いで、auさんのOEM製品ではないので、au様のいろんな料金プランとかに合わせた形で販売できないんですけれども、オンラインショップのほか、au Style約300店舗でお取り扱いいただけることになりました。
──今後の商品の展開としては、今までどおりスマートフォンを中心に広げていくのでしょうか?それとも、たとえば雑貨のようなまったく違うアプローチの可能性もあるのでしょうか。
大沼氏:お客様に喜んでいただけるものを日本に持ってきたいと思っているので、その意味では両方あると思っています。今は販売できるチャネルも限られているので、そんなにたくさん輸入ができるわけではありませんが、ポップアップストアの期間中にも、商品を入れ替えたるなど、徐々に広げていきたいと思っています。まずは、今月のポップアップストアのオープンを楽しみにしていただければと思います。
──そのポップアップストアを使って、テストマーケティングをしてくのでしょうか。
大沼氏:そうですね。日本の皆様にどんな商品が受け入れられるのかというのは、もちろんしっかり見ていきたいと思っています。今回は実際に商品を買っていただけるようにするので。それをどう次に繋げるかということも、皆様のご意見をいただきながら考えていきたいです。
安達氏:今、我々の製品を購入できるチャンネルはバラバラなんですよ。たとえば生活家電はECに特化しているので、手に取って見ていただくことができなかったりします。自社のイベントだったり、ストアスペースを持つことによって、ここに来ればシャオミの世界観がわかるという場を作ることができる。そうすることで少しずつでも、ブランドのコンセプトがお客様に伝わっていけばと思います。
それにやっぱり、製品をお買い求めいただくのは、ストアで実物を見ていただいたあとのほうがいいと思うんですよね。「Xiaomi 14 Ultra」の「Photography-Kit」も、ぜひ手に取って試していただきたい。その上でECでお買い求めいただいてもいいんですが、実際見ていただける機会を作れるということは、すごく重要な一歩になると思います。
大沼氏:お客様の声を直接聞けるというのは、大きなメリットですよね。ECではなかなかできないことなので。
──大沼さんには社長就任後初めてインタビューさせていただくので伺いたいのですが、ブランド認知を高めていくにあたって、中国企業への風当たりの強さや、難しさを感じられるところはありますか。
大沼氏:政治的なことについて、私からお答えする立場にはないですが、いずれにしてもやれることはひとつです。イノベーションをすべての方に届けていくということと、先ほどの「Human x Car x Home」のうち、「Human x Home」のかけ算を、しっかり打ち出していくこと。それ以外のことは考えていません。しっかり実践していくという姿勢です。
安達氏:今回発表させていただいた製品も、コストパフォーマンスが高くオンリーワンの機能を持った製品を、日本のユーザー様に価値としてお届けしたいという、純粋な気持ちで選んだものです。我々がやるべきこと、日本のユーザーさんにお届けしたいことを愚直にやっていくだけです。
──今、為替がかなり厳しい状況ですが、12.4インチで69,800円〜のタブレットなども発売されます。今回、価格設定ではかなり苦労されたのでしょうか。
大沼氏:為替の影響は我々だけでなく、他のメーカーさんでもそれぞれにあると思います。ただ、今回フラグシップを出すにあたっては、「出すからには日本の皆さんに届けられるようにしよう」ということで、そこは本社とも一致してかなり頑張りました。状況でいえば厳しいのは間違いありませんが、届けたいという思いを感じていただければ幸いです。
安達氏:「Xiaomi 14 Ultra」もぎりぎり大台にのらないように、199,900円という価格設定にしました。「Photography-Kit」をつけていますし、タブレットも本体は69,800円からですが、そこにペンやキーボードをあわせても10万円ちょっとくらいになっています。他社さんが限界突破する中で、ここは頑張らせていただきました。
──そのタブレットには、ラフスケッチからイラストを生成するAIの機能も搭載されています。今各社が「スマホ×AI」を打ち出していますが、最後に御社のAIに対する考えを聞かせてください。
大沼氏:今世の中が最も注目している領域で、見えるところと見えないところ、いろんなところにAIの技術が入り込んできているのは確かです。スピードも非常に速いので、あと数年もすれば「あとのきにはまだ、そんなことをやっていたのか」という状況になるでしょう。我々も今回の2024年上期の発表では「スマホ×AI」を打ち出してはいませんが、下期ではもしかしたら何かご紹介できるかもしれません。そこもぜひ楽しみにしていただければと思います。

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