“Intel Default Settings”とは一体、PL1=125W・PL2=188Wと仮定して第14世代Core i9に適用してみた

2024年5月14日(火)7時0分 マイナビニュース

第13世代 / 第14世代Coreプロセッサの上位モデルの一部において、安定性に関する問題が取り沙汰されている。それに対応するため、一部のマザーボードメーカーは安定動作を目的とした「Intel Baseline Profile」を備えたUEFIの提供を開始した。
しかし、IntelによるとIntel Baseline Profileはデフォルト設定ではないとの情報もある(参考記事:『Intel Baseline Profileはボードメーカー向け説明資料のデータ - Intel Default Settingsを使うよう推奨』)。
このIntel Default Settingsがどのような設定になるかは、マザーボードの仕様などに合わせて最終的にはマザーボードメーカーが決めることになるようだ。Core i9-14900K、Core i9-13900Kは仕様上ではPL1(PBP)=125W、PL2(MPT)=253Wに設定されるようで、より安定した動作のためPL1=125W、PL2=188Wにすることが推奨される……との情報もある。
安定性に関する問題の根本的な原因はいまだ解明されておらず、Intelの正式な発表を待っている状態だが、とにかく安定した動作が必要なユーザーにとっては、Intel Baseline ProfileやIntel Default Settingsを適用したことで性能がどう変わるのか気になる人も多いはずだ。
そこで今回、CPUにCore i9-14900K、Core i9-13900K、マザーボードにASRock Z790 Nova WiFiを用意して、電力設定を無制限、Intel Baseline Profile、Intel Default Settings(資料を基にした筆者による予想)の3種類でベンチマークを実行したい。
なお、Z790 Nova WiFiのIntel Baseline Profileはバージョン「5.03[Beta]」のUEFIに実装されている。あくまでベータ版のUEFIで、最終版ではない。今回のテストは現段階(2024年5月上旬)の情報で、どのような影響があるのか“とりあえず試す”ものだ。Intelの正式発表が出たら、改めてテストを行いたい。また、参考値としてCore i9-12900Kの電力設定無制限も加えている。
テスト環境は以下の通り。
CPU:Intel Core i9-14900K(24コア32スレッド)、Intel Core i9-13900K(24コア32スレッド)、Intel Core i9-12900K(16コア24スレッド)
マザーボード:ASRock Z790 Nova WiFi(Intel Z790)
メモリ:Micron Crucial DDR5 Pro CP2K16G56C46U5(PC5-44800 DDR5 SDRAM 16GB×2)
ビデオカード:NVIDIA GeForce RTX 4080 SUPER Founders Edition
システムSSD:Western Digital WD_BLACK SN850 NVMe WDS200T1X0E-00AFY0(PCI Express 4.0 x4、2TB)
CPUクーラー:Corsair iCUE H150i RGB PRO XT(簡易水冷、36cmクラス)
電源:Super Flower LEADEX V G130X 1000W(1,000W、80PLUS Gold)
OS:Windows 11 Pro(23H2)
Core i9-14900KとCore i9-13900Kで今回試した設定は以下の通り。
※Core i9-12900Kは無制限のみ
まずは、CGレンダリングで純粋なCPUパワーをシンプルに測定する「Cinebench 2024」を試そう。
注目はMulti Coreの結果だろう。14900Kは、無制限からPL1=PL2=253Wで約9%スコア減、無制限からPL1=125W、PL2=188Wで約25%のスコア減となる。13900Kは、無制限からPL1=PL2=253Wで約12%スコア減、無制限からPL1=125W、PL2=188Wで約25%のスコア減だ。
電力の上限が大きく制限されることになるので当然ではあるが、マルチでの性能が25%も下がるという結果はなかなか衝撃的。それでもコア数が違うので、Core i9-12900Kの無制限には上回っており、電力制限があっても世代差は保たれている。なお、Single Coreのテスト結果に影響は見られなかった。
ゲーミング性能はどうだろうか。3DMarkのTime SpyとSpeed Wayを実行してみた。
Time SpyはどちらのCPUも無制限よりはスコアを落としているが、せいぜい1%ほど。Speed WayはGPU依存度の高いテストなので誤差レベルだ。ゲームプレイへの影響は小さいと考えてよさそうだ。24コア32スレッドあれば、電力制限があったとしてもゲーム用としては十分と言える。
続いて、動画のエンコードだ。約3分の4K動画をH.264とH.265形式にフルHD解像度へ変換する作業をHandBrakeで実行した。
Cinebench 2024と同じ傾向だ。H.265の結果を見ると、14900Kは、無制限からPL1=PL2=253Wで約12%、無制限からPL1=125W、PL2=188Wで約22%エンコードに時間がかかるようになった。13900Kもほぼ同様だ。CPUパワーをフルに使うような作業では、どうしても影響は大きくなる。
では、CPU温度と動作クロックはどうだろうか。Cinebench 2024を10分間連続で実行時のCPU温度と動作クロックの推移を「HWiNFO Pro」で測定した。温度は「CPU Package」、クロックは「P-core 0 T0 Effective Clock」の値だ。
無制限では、14900Kも13900Kもリミットの100℃にあっという間に達してしまう。動作クロックは14900Kが5.5GHz前後、13900Kが5.3GHz前後だ。14900Kと13900Kはコア数は同じだが、最大クロックに200Hzの差があるので、それがそのまま結果に出ている。
PL1=PL2=253Wでは、14900Kは温度が平均74℃、クロックが4.8GHz前後、13900Kが平均77℃で4.6GHz前後になる。PL1=125W、PL2=188Wでは、188Wで動くのは56秒だけなので、1分付近から温度もクロックも一気に下がる。14900Kは温度が平均54℃、クロックが4.1GHz前後、13900Kが平均61℃で4GHz前後になる。
温度が一気に下がって、冷却面では扱いやすいCPUになるが、倍率変更が可能な「K」付きのモデルは基本的に性能を追求したい人が買うもの。低温での低速動作に魅力を感じる人は少ないだろう。ちなみに、12900Kの無制限は温度が平均77℃、クロックが4.8GHz前後だ。第12世代Coreに問題は聞かれないが、電力を無制限に設定してもそれほど無茶な動作はしないということだろう。
最後にCPU単体の消費電力推移を見てみよう。同じくCinebench 2024を10分間連続で実行時の推移を「HWiNFO Pro」で測定した。「CPU Package Power」の値だ。
無制限では、14900Kが平均317W、13900Kが平均289Wとやはり強烈だ。PL1=PL2=253Wでは、14900Kが平均220W、13900Kが平均202Wまで下がり、リミットの253Wには到達しない。PL1=125W、PL2=188Wでは、数字通りで最初の56秒は188W前後、その後は125W前後での動作になる。ちなみに、12900Kの無制限は平均194Wだ。
改めて検証してみると、14900K/13900Kのパワーリミット無制限運用はかなり無茶だったのではと感じる。36cmクラスの簡易水冷でもリミットの100℃にすぐ到達、CPU単体の消費電力が300Wほどまで引き上げられ、性能を出すためとは言えあまりにもアグレッシブな動作だ。12900Kは無制限でも平均77℃と、100℃までまだまだ余裕があることからも明らかだと思う。
とはいえ、上位マザーボードでは無制限設定がデフォルトになることが珍しくなかっただけに、仕様以上での動作は自己責任の世界とは言え、性能を抑える方向で落ち着くのに納得できないユーザーもいるだろう。第12世代Coreでは問題が起きていなかっただけに、最終的にどのような形で着地するのか。ユーザーの手元でトラブルが起きたCPUの扱いはどうなるのか。Intelからの正式な調査結果を待ちたいところだ。

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