FCNTがLenovoグループ傘下になった意義 自律神経測定スマホ「arrows We2 Plus」はどこがスゴい?

2024年5月17日(金)6時5分 ITmedia Mobile

「arrows We2」「arrows We2 Plus」

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 Lenovo傘下の企業として再スタートを切ったFCNTが5月16日、新型スマートフォン「arrows We2」「arrows We2 Plus」を発表し、今後の事業戦略を明らかにした。arrows We2はエントリーモデルで、arrows We2 Plusはミッドレンジモデルとなる。どちらも「arrows We」の後継モデルで、堅牢(けんろう)性や独自機能がアピールされる。
 両モデルともにIP6X等級の防塵(じん)性能と、IPX5/8等級の防水性能を確保し、泡ソープ(または薄めた中性食器用洗剤)による本体洗浄と、アルコール消毒にも引き続き対応している。MIL-STD-810H(MIL規格)に定める23項目の耐衝撃/耐環境テストもクリアしており、arrowsシリーズならではの売りとなっている。従来との大きな違いとしては、arrows We2 Plusで自律神経の状況を確認できることが挙げられる(詳細は後述)。
 都内の発表会場では、FCNTの田中典尚社長、桑山泰明副社長、外谷一磨氏(プロダクトビジネス本部 チーフプロフェッショナル)が戦略や製品の説明を行った他、京都大学名誉教授でおせっかい倶楽部 代表取締役の森谷敏夫氏が自律神経に関して解説した。
●端末とサービスを旧FCNTから継承
 旧FCNTは2023年5月30日付で東京地方裁判所に対して民事再生法の適用を申請し、事実上の経営破綻状態となったが、中国Lenovoが同年9月29日(日本時間)に旧FCNTのプロダクト(携帯電話端末)事業とサービス事業を継承したことを発表。そして、その翌々日の10月1日に新会社として再スタートを切った、というのがこれまでの流れだ。
 田中社長は「旧FCNTでソリューションを担当していた部隊は解散したが、お付き合いのあったパートナーに資産の一部を譲渡した」とし、「まずはスマートフォンとコミュニティーサービスに集中する」との考えを明らかにした。
 旧FCNTがこれまでに企画開発し、NTTドコモが販売してきた「arrows ケータイ ベーシック F-41C」「arrows ケータイ F-03L」「らくらくホン F-01M」をはじめとするフィーチャーフォンについて、外谷氏は「われわれとしては継続したい」としつつも、「通信事業者と相談しながら準備できれば」とした。
●旧FCNTからブランドやサービスを引き継ぐ 企業ロゴは刷新
 では、新生FCNTは旧FCNTからどのようなことを引き継ぎ、何を重点的に強化していくのだろうか? 桑山副社長は「FCNTは誰一人取り残さないというフレーズを大切にしている」と話し、「その象徴であるらくらくスマートフォンやらくらくコミュニティーなど、シニアへの取り組みも旧FCNTから受け継いでいる」とした。
 さらに、桑山副社長はサステナビリティ(持続可能性)に配慮した新型スマートフォン「arrows N」の存在にも触れ、「NEXT(次の)arrows Nについても検討する」考えを示した。
 arrows We2シリーズの先代として2021年に発売されたエントリーモデル「arrows We」は、メーカー調べの出荷台数が280万台以上を記録した(2021年12月〜2024年4月末)。MM総研の調べによると、この台数は日本で発売されたAndroidスマホとしては史上最多だという。
 旧FCNTではヘルスケアの領域にも取り組んでいた。その代表的なサービスがらくらくスマートフォンやarrows向けの会員サービス「La Member’s(ラ・メンバーズ)」だ。本サービスも新生FCNTが引き継いでおり、桑山副社長は「今後さらにヘルスケアに特化した機能をブラッシュアップしたい」と意気込む。
 arrows We2シリーズの発表に合わせて、FCNTの新しい企業ロゴも披露された。桑山副社長いわく、人に寄り添うやさしいテクノロジーを表現したロゴで、特に「F」「C」「N」の3字の丸みがより強調された。桑山副社長は「arrowsシリーズ、らくらくシリーズと合わせて、新生FCNTのロゴについても、皆さんと一緒に育てていければ」とコメントした。
●Lenovoグループ傘下になった意義とは
 ここまでお伝えしたように、端末の発表からロゴの刷新に至るまで、今回の発表は、新たな海原にかじを切る“新生FCNT”の所信が表れている。
 主力商品となる端末の原材料費の高騰や、円安などによるコスト高の影響を受け、資金繰りが急速に悪化し、旧FCNTは経営破綻に至った。原価高騰や円安は2024年5月も続いており、Lenovoグループ傘下になったとはいえ、新生FCNTは今後もこうした問題と向き合わざるを得ない状況といえる。
 Lenovoグループ傘下になった意義は何だろうか? 桑山副社長は「新生FCNTを強い企業に成長させる」と意気込んだ上で、「Lenovoグループの持つ調達力や海外の販売チャネルを生かす」方針を打ち出した。arrows We2シリーズの部材の一部には、「新製品の部材の一部にはLenovoグループの調達力を生かした部材が活用されている」(桑山副社長)という。
 「妥協せずに積極的に投資も行う」とも話す桑山副社長は、「投資一辺倒というわけではなく、投資対効果を見極めて、利益体質の会社に変わっていく」とし、弱点克服をアピールする。
 さらに、新生FCNTが旧FCNTから「脈々と受け継いだarrowsシリーズ、らくらくシリーズに磨き上げるとともに、グローブグループの傘下になったことで、相乗効果が見込める他、筋肉質な企業に成長することで、魅力的な商品を皆さまにお届けできる」(桑山副社長)という。
 なお、Lenovoグループには米国に本拠を構える「Motorola Mobility(モトローラ・モビリティ)」が存在し、日本市場でも日本法人(モトローラ・モビリティ・ジャパン)を通して製品を販売している。Lenovoは「FCNT」「Motorola」のブランドを生かし、日本国内の携帯電話端末市場での地位を高めるとしている。
●FCNTと森谷名誉教授が共同開発した、自律神経の状況を確認できる機能も
 新生FCNTの第1弾製品は、冒頭でも触れた通り、arrows We2とarrows We2 Plusだ。arrows We2 Plusは背面の光学式脈拍センサーで、自律神経の状況を確認できるのが大きな売りとなっている。外谷氏によると、「森谷名誉教授の力を借りながら共同開発した」という。
 自律神経は本人の意思とは関係なく、自律的に働く神経。自律神経について、森谷氏は女性を例に挙げ、こう説明した。「女性ホルモンの分泌が低下すると、自律神経で体調を良くしようとするが、子宮が退縮して調節ができない。極端にいえば自律神経が低調な状態。更年期になると急に体温が熱くなったり、血圧が急に高くなったり、寒くなったり……という状態に陥ると、血圧の調節や食欲のコントロールなどができなくなる」
 森谷氏は「臨床で使っている自律神経の状態の測定は1980年に動物実験から明らかになった。臨床では心電図で心臓が打つ脈拍を瞬時に計測しなければならない。後にコンピュータでも自律神経の状態の測定が可能になったが、周波数解析という高度なことを行わなければ、自律神経を解析することはできない」と測定の難しさを語り、「スマートフォンに実装されたすごさ」をアピールした。
 測定基準は「森谷氏が蓄積してきた研究データ」(外谷氏)で、「年代別の平均値と実際の測定データを比較し、推定年齢を表示する他、活動するときに働く交感神経、休息やリラックスをするときに働く副交感神経を可視化した」(外谷氏)という。外谷氏は「測定したデータに基づき、自分の状態を知った上で、日常のヘルスケア行動のきっかけ作りにつなげたい」と述べた上で、「この自律神経見るだけではなく、鍛えるということ。この価値をお客さまに提供していきたい」とした。

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