「ポケモンGO」仙台イベントでスマホの通信は快適だった? 1キャリアだけ極端に速度が出なかったワケ

2024年6月8日(土)10時5分 ITmedia Mobile

Pokemon GO Fest 2024:仙台会場の七北田公園で4キャリアの通信速度を測定した

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 5月30日から6月2日まで仙台市で開催された「Pokemon GO(ポケモンGO)」の屋外イベント「Pokemon GO Fest 2024:仙台」。筆者は5月30日の初日に参加してきたが、GO FESTのような、多くのユーザーが密集する場所では、モバイル通信の混雑が懸念される。当然、各社は対策しているはずだが、実際のところ、イベント開催中の通信品質はどうだったのか。ドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルの通信速度やプレイ体感を確かめてきた。
●午前、昼、夕方の3回に分けて測定 1キャリアだけ速度が出ず……
 まずは、GO FESTの会場である七北田公園にて、4キャリアの通信速度を3つの時間帯に分けて測定した。なお、auはpovoのデータ使い放題(24時間)、ソフトバンクはY!mobileを利用しているが、povoはauの回線、Y!mobileはソフトバンクの回線をそのまま用いているので、通信品質は変わらない。
 端末はiPhone 15 Proを2台使い、「Y!mobileとドコモ」「povoと楽天モバイル」の組み合わせで順番に3回ずつ測定した。4回線を同時には測定していないため、タイミングに若干のズレがあることはご了承いただきたい。測定には「Speedtest(Ookla)」アプリを用いた。
 まずは5月30日10時55分頃に測定した。午前の部が始まった直後ということもあり、公園には人が密集するほどではない。ここではドコモが下りで300Mbps台の速度を出し、最も高速だった。auとソフトバンクも数10Mbpsの速度を安定して出しており、問題のないレベルだ。一方、楽天モバイルは下りが1Mbps前後、上りは1Mbps未満と厳しい結果だった。
 続いて13時頃に測定。午前の部が終わる直前とあって、10時台よりも多くのトレーナーが集まっていた。ここでも最速はドコモで、500Mbpsを突破したこともあった。ソフトバンクは電波の出力が変わったのか、午前よりも速度がアップして3回とも100Mbps台だった。auは午前とほぼ変わらず、下りは30〜40Mbps台だった。楽天モバイルは午前同様に厳しく、下りは1Mbps強、上りはほぼ速度が出ない。3回目は何度測ってもタイムアウトしてしまい、測定不能になってしまった。
 最後に夕方の17時頃に測定した。午後の部が佳境を迎えるタイミングであり、今回測定した中では最も多くのトレーナーが集まっていた。そんな中でもドコモが下り200Mbps台〜400Mbps台と安定していた。ソフトバンクも下り100Mbps台をキープしている。auも大きく崩れず、下り60Mbps前後だった。楽天モバイルはここでも苦戦を強いられ、下りが1Mbpsを割ることもあり、上りに至っては0Mbpsを記録したこともあった。
 4キャリアの回線で実際にゲームもプレイしてみた。ドコモ、au、ソフトバンクの回線は、ポケモンの捕獲やレイドバトルなど、問題なくプレイできた。一方、楽天モバイルの回線は、ポケモンの捕獲はほぼ問題なく快適だったが、レイドバトルや画面が切り替わる際に、時折遅延があった。下り1Mbps前後、上り0Mbps台の割には頑張っていた方だが、やはり3キャリアに比べると実体験の面でも差が出た。
●なぜ楽天モバイルだけ速度が出なかったのか
 3キャリアと楽天モバイルで、なぜここまで差が出てしまったのか。答えは明白だ。楽天モバイルのみ、移動基地局車を配備していなかったからだ。移動基地局車は、コミケやフェス、花火大会など、人が多く集まる場所に配備してネットワークの混雑を解消するために稼働しているが、楽天モバイルのみ、その対策ができていなかった。
 なぜこのような事態になったのか。楽天モバイルは、GO FESTの対策を想定していなかったのか? 同社に聞いたところ、意外な回答が返ってきた。
 まず前提として、楽天モバイルは各イベントでは、以下の対策を実施している。
 「当社は各イベント会場の状況に応じて、移動基地局(移動無線車)を設置して、つながりやすい環境を整備しています。移動基地局を設置する際は、イベント当日に向けて、例年の来場者数や電波状況をもとに、ネットワーク混雑状況を分析し、設置するロケーションや台数を決定しています」
 しかし楽天モバイルのみ、移動基地局車を配備できなかった。その理由について、同社は以下の通り回答した。
 「本イベントにおいても、移動基地局車の配備が必要と社内で判断をし、イベント主催者側にご相談しておりましたが、配備については実現ができませんでした。そのため、大人数が同時にアクセスすることを想定し、既存基地局のパラメータ調整(一時的に電波照射強度や範囲を変更)を行っております」
 楽天モバイルとしては、GO FESTのイベント自体は認識しており、対策することを想定していたのだが、何らかの事情によって移動基地局車を配備できなかったようだ。イベント主催者側はNainticだが、Nianticとの交渉がうまく進まなかったのだろう。
 移動基地局車を配備できる会場のキャパシティーの問題もあったのかもしれないが、楽天モバイルも、今や契約数が680万を超えるキャリアに成長しており、メイン回線として使っている人も多いだろう。より多くのユーザーが快適にイベントを楽しめるよう、対策を進めてほしいところだ。
●圧巻だったソフトバンクの“高所作業車” 100Mbps以上の速度も納得
 ちなみにドコモは4台、KDDIは3台、ソフトバンクは2台の移動基地局車を配備している。ドコモの通信速度が最も出たのは、最も多くの移動基地局車を出していたことも影響していそうだ。
 ドコモは以下の通り、対策を実施した。
 「イベントの内容に合わせてエリア設計を実施し、移動基地局車および周辺基地局でのエリアカバー計画を立て対策を実施しています。2023年の大阪会場の状況を踏まえ、想定されるトラフィック状況から移動無線車両増・設備故障に備えた体制強化を行っております」
 KDDIは以下の通り、対策を実施した。
 「以下ページでもご紹介しております通り、さまざまなイベントで電波強化対策をしておりますが、今回七北田公園での対策が初めてということもあり、イベント主催者と事前に現地で検討を進めることで、地形に沿った細やかなエリア設計をしています」
 ソフトバンクは移動基地局車の台数こそ2台だったが、高所作業車を活用してアンテナを20mまで上げ、カバー範囲を広く取るというユニークな対策を行っていた。移動基地局車のアンテナは通常は11.8mなので、2倍近い高さまで上げている。実際に高所作業車を目の前で見たが、その光景は圧巻。確かにここまでの高さがあれば、七北田公園全体をしっかりカバーできると感じる。ソフトバンクがお昼以降、ドコモに迫る下り100Mbps台の速度を出していたのも、この高所作業車でのアンテナ運用が功を奏したといえる。
 GO FESTで初実装されたネクロズマよりも、この高所アンテナを目にすることができただけでも、仙台まで来たかいがあったと思った。
 この他、ソフトバンクでは「キャパシティー対策のため、対応周波数を複数準備し、周辺局含めチューニングを実施している」とのこと。
●Nianticと通信キャリアが連携して対策
 なお、GO FESTの通信対策は、イベント主催側であるNianticと密に連携することで実現している。Niantic ライブイベント APAC マーケティングマネージャーの三宅那月氏は「イベントの1週間以上前にコアメンバーが現地入りして、通信会社の協力を得ながら 電測(電波測定)を何度も実施しています。年々、経験は蓄積していて、これまでのデータをもとに、どういうネットワークで構築するのかを話しています」と話す。
 GO FESTは世界各国で実施しているが、日本は通信対策でチャレンジングな面があるという。「日本は山岳の国なので、仙台市に限らず、ある程度、道や公園もフラットでなくアップダウンがあります。木々が公園にたくさん生い茂っている場所もたくさんあるので、ネットワークの観点からいうと、そういった場所はチャレンジになります」(三宅氏)
 通信キャリアとNianticの連携によって、今回は快適な通信環境が実現できたが、2025年のGO FESTではそこに楽天モバイルが加わることにも期待したい。

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