偽ニュースを拡散する“スーパーシェアラー”は誰? 米大統領選挙時の投稿を調査 浮かび上がった人物像は

2024年6月13日(木)8時5分 ITmedia NEWS

偽ニュースを拡散する“スーパーシェアラー”は誰?

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 米大統領選挙を11月に控え、SNSで拡散する偽ニュースが問題になっている。そうした中、前回選挙でX(旧Twitter)を活発に利用していた有権者の投稿を分析した調査で、偽ニュースの大部分は「スーパーシェアラー」(スーパースプレッダー)と呼ばれるごく少数のユーザーが拡散させていた実態が判明し、そうしたユーザーの意外な人物像も浮かび上がった。
 調査はイスラエルのベングリオン大学などの研究者が実施した。偽ニュースを巡ってはロシアなど外国の介入が指摘される一方で、普通の市民がどう関与しているのかははっきりせず、スーパーシェアラーの実態もこれまで分かっていなかった。
 研究者は今回、2020年の米大統領選挙で偽ニュースを拡散させたスーパーシェアラーに着目。米国の登録有権者記録と照合できたXユーザー66万4391人を対象に、同年8月〜11月にかけての投稿を分析した。
 その結果、有権者66万4391人が共有した政治ニュースのうち、7%が偽ニュースだったことが判明。そうした偽ニュースの80%を拡散させていたのは、わずか2107人(0.3%)のスーパーシェアラーだった。
 スーパーシェアラーは平均すると1日に平均で15.9本の政治ニュースを投稿し(全体平均は0.3本)、偽ニュースの投稿は2.8本(同0.01本)に上った。11月の選挙後にはツイートが増え、選挙に不正があったとする主張が特に際立っていた。
●スーパーシェアラーはどんな人?
 スーパーシェアラーは共和党の中年白人女性に偏っていた。具体的には女性が59%を占め(全体では50%)、平均年齢は58.2歳と、全体の平均を17歳上回った。政党は共和党が64%だったものの、民主党と無党派層もそれぞれ20%近かった。居住地はフロリダ、アリゾナ、テキサスの保守3州に集中している。
 スーパーシェアラーが少数の孤立した集団ではなく、地域社会で強い影響力をもち、他のユーザーに比べて投稿に対する返信やリツイート、引用数が多い実態も判明した。わずか0.3%のスーパーシェアラーを有権者の5.2%がフォローしていて、偽ニュースを大量消費するユーザーに至っては22.1%がスーパーシェアラーのフォロワーだった。
 投稿数の多さから自働化ツールを使っている可能性も疑われたが、調査の結果、スーパーシェアラーが一般ユーザー以上に自動化ツールを使用している形跡は見当たらなかったといい、大多数は手作業でポストやリポストを繰り返していたと思われる。
 そうした自動化ツールを使用していなかったために、不正な投降を締め出そうとするXの対策をすり抜けていた可能性もあり「いわゆるローテク操作に対するSNSの脆弱性が浮き彫りになった」と研究者は解説する。
 スーパーシェアラーに中年女性が多い理由は不明だが、研究者は高齢者や女性の政治参加率が高いことが関係しているかもしれないと推測。不平等の認識や地位が脅かされるという認識、ニュースの真偽の判別能力、共有の動機の違いなどが関係している可能性もあるとしている。
 「今回の調査では、少数の人々が多数の人々の政治的現実をゆがめているSNSの民主主義の脆弱性が浮き彫りになった」と研究者は言う。こうしたスーパーシェアラーに照準を絞った介入やリポスト制限を通じて、偽ニュースの投稿は減らせる可能性があると指摘している。
 なお、20年の大統領選では、SNSで大量に出回った事実無根の陰謀論が大きな影響を与えたと指摘されている。しかし偽ニュースを拡散させていたスーパーシェアラーがそうした陰謀論の支持者だったのかどうかについては、今回の論文では言及していない。

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