KDDIはローソンと組んで何を仕掛ける? 携帯ショップの雇用問題解決にも? 株主総会で語られたこと

2024年6月19日(水)23時4分 ITmedia Mobile

KDDIが都内で第40期 定時株主総会を開催。インターネット配信も行われた

写真を拡大

 KDDIが6月19日、都内で第40期 定時株主総会を開催した。2024年3月期の業績、41期の課題と取り組みなどについて説明。また、3つの議案(剰余金の処分、取締役12人選任、監査役4人選任)について採決が行われ、賛同を得た。ここではインターネットを通じて事前に株主から寄せられた質問とそれに対する回答、会場で行われた質疑応答について紹介する。
●ローソンと資本業務提携した背景や目的は?
 まずは事前に受けた質問から、株主の関心が高いと思われる3つの質問に対して回答した。
 1つ目は直近のKDDIの株価低迷について。株価向上のための策は打っているのかという質問だ。
 KDDIは、2019年6月末の終値を100%とした場合のKDDI株価と日経平均の推移を示したグラスを示して説明。KDDIの株価は日経平均に応じて上昇してきたものの、2024年2月のローソンとの資本業務提携発表以降、軟調となっている。こうした大型出資や、ミャンマー通信事業のリース債権の引当による業績が影響しているとの認識だ。
 ローソンへの出資については、目的や背景、シナジー効果などを理解してもらうために、説明会やミーティングを通じて説明を行っているという。早期にシナジーを出していくことに加え、中期経営戦略で掲げるEPS(一株あたり当期純利益)目標に向けて、着実に実績を積み上げることで、企業価値の向上と株主還元の強化に努めるとした。
 2つ目の質問は、ローソンと資本業務提携をした背景や目的について。
 回答として、KDDIが日本の抱える社会課題の解決に貢献する企業であるためには、これまで以上に顧客接点の強化が重要であるとし、現在の日本においてライフスタイルのプラットフォームでもあるコンビニを展開するローソンとの資本業務提携を行ったと説明した。
 資本業務提携の目的は、「AIやDXを利用したリアルテックコンビニエンスの実現」「約1万4600店舗にも及ぶ立地を活用した新たな付加価値の創出」「Ponta経済圏を活用した顧客基盤の拡大とサービス強化」の3つを挙げた。ローソンの業績は好調に推移しており、AIやDXにより、さらなる成長が期待できること。小売業界は顧客ニーズの多様化や労働力不足などへの対応が求められており、KDDIが有するさまざまなアセットの活用でローソンをデジタル面から支援することで、さらなる事業の成長に貢献できると説明した。
 また、KDDIとしても付加価値収入やDX事業の成長、ユーザーのリテンション強化やコスト効率化など、業績面でのプラス効果が見込めるとしている。
 3つ目は、2025年度から株主優待制度の内容を変更する理由についての質問。
 KDDIは2014年に株主優待制度を導入。現在はカタログギフトを優待として提供しており株主から好評だが、通信サービスや事業との関連性が乏しい点や、物流の2024年問題、食品や送料のコスト高騰といった外部環境の変化に課題を感じていたという。
 今後は、保有期間1年以上かつ保有株式数100株以上の株主が株主優待贈呈の対象。Pontaポイントと関連サービスの特典の中から1つ選ぶ方式となる予定だ。新優待でPontaポイントを選択した場合は、au PAYへチャージすることで現金同等に利用できるようになる。
 また、au PAYマーケットのポイント交換所を利用することで、最大1.5倍のau PAYマーケット限定ポイントに交換することも可能。これらはauの契約がなくとも利用可能だ。
 優待変更で以上のようなメリットを提供できる点や、同業他社の株主優待内容も踏まえて勘案したものと説明した。
●ローソンとの取り組みで株主から“提案” リアルの接点は今後も重視
 資本業務提携したローソンについて、具体的な取り組みを尋ねる質問もあった。株主からはEVステーションとしての活用や無人コンビニが提案された。
 高橋氏は「ローソンは全国に1万4600店舗もあり、非常に身近な存在。指摘のあったEVステーションやeコマースの非常に簡易なものなどは、しっかり進めていきたい」と回答した。
 povoのように非対面での携帯電話契約が進むとリアルショップのニーズが低くなり、ショップスタッフの雇用確保が問題になると指摘。ローソンとの連携が問題解決につながるという株主の提言があった。
 パーソナル事業本部長の竹澤氏は、「ローソンさんしかり、auショップしかり、リアルの接点は今後も非常に重要」と回答した。
 「現在、ショップでは行政サービスのアドバイスも含めて、リアル接点としての機能を果たしている。引き続きリアルの接点は非常に重要だと考える。ローソンは現在1万4600店舗、auショップは2000店以上あり、お互いが補完し合い、お客さまに対して(サービスを)提供していくことが、今後、非常に重要になると思っている。これから行政のサービス、KDDIのサービスだと金融などのサービスが広がっていくので、そのフォローのためにもショップの雇用はしっかりと見て、守って、機能を果たしていきたい」
 高橋氏も「ラストワンマイル、リアルな接点は非常に重要」とコメント。「そういう意味で今回ローソンに出資させていただいた。1万4600店の接点を活用して何ができるのかを、今、真剣に議論をしている。この秋口には具体的なサービス内容を皆さんにお届けできると思う」と語った。
●5G Sub6の2波は「大きな武器」 5G SAも見据えてエリア拡大
 KDDIのケーブル事業についての質問があり、執行役員専務 CTO コア技術統括本部長の吉村和幸氏が回答した。
 「KDDIの海底ケーブル事業は大きく2つ。1つは皆さまの通信を、海底ケーブルを通じて各世界とつないでいること。海底ケーブルの陸揚げ局、ならびに海底ケーブルの保守をしている。また、海底ケーブルを実際に引く作業も行っていて、こちらは子会社のKDDIケーブルシップが行っている。海底ケーブルの敷設、修理を行っており、そのための2つの船を持っている。「つなぐ力を進化させる」ため、この重要な海底ケーブルの事業をKDDIで行っている」
 また、事業計画に示されたSub6エリアの拡大について、今後、5Gネットワークの品質向上にどの程度取り組んでいくのかという質問があった。この質問にも吉村氏が回答。
 「現在、KDDIは業界最多のSub6の基地局を打っているとともに、衛星干渉の軽減でエリアも関東で2.8倍、全国で1.5倍に広がっている。今後もトラフィックはどんどん増えていくので、しっかりと対応していきたい。特に弊社の場合、Sub6の周波数を2波、100MHz帯域幅を2つ持っている。例えば都内の繁華街や、今後どんどんトラフィックが伸びていくところに対して、この周波数2波を使って、より高速なネットワークを作っていきたい。
 あわせて今後、5G SAのサービスも始まっていく。5G SAは5Gの周波数だけを使っているので、そこにしっかり対応できるように、Sub6のネットワークの面を広げていく。基地局は昨年度もかなりの数を打ってきた。この品質を維持するために、引き続きしっかりと対応していきたい」
 高橋氏も「このSub6の2波はわれわれにとって大きな武器。しっかり拡大して、競合と戦っていきたい」と意気込んだ。
 株主優待変更について「ネット環境がない人でも利用できるのか」といった質問があった。最勝寺氏は「株主優待に関するサポート窓口を設置する予定。ネットの利用に不慣れな株主に対して丁寧に対応していく」と理解を求めた。
 高橋氏は「使いやすいように引き続き努力する。Pontaポイントはローソンでも使っていいただける」と付け加えた。
●会場からはSDGsについて複数の質問
 来場した株主からの質問に対しては、議長を務めた社長の高橋誠氏と担当役員が回答した。
 KDDIが「TELEHOUSE」として展開しているデータセンターでは多くの電力を必要とすること、最近打ち上げが増えている低軌道の通信衛星は、衛星が増えて混雑し、デブリ(宇宙ごみ)も問題視されるなど、デメリットも増えていると株主は指摘。ITU(国際電気通信連合)以外の機関が必要ではないか、先端技術を追いかけるにあたってSDGsに対してKDDIはどう考えているかとの質問があった。
 執行役員常務で、先端技術統括本部長 兼 先端技術企画本部長の松田浩路氏が回答した。
 「KDDIは世界中にデータセンターを保有しているが、2025年度までに実質再生エネルギー100%という目標を掲げており、順調に進捗(しんちょく)している。AIの台頭でデータセンターがこれからも増えていくが、環境負荷を少しでも軽減できるように、最先端の省電力性能を持ったサーバを選定したり、冷却技術の技術検証を実施したりして、業界一丸となって環境負荷の低減に努めている。
 昨年(2023年)は再生エネルギー発電会社「auリニューアブルエナジー」を設立。脱炭素社会に向けて取り組んでいきたい。
 KDDIは60年以上前から衛星通信を手掛けており、当初から宇宙ごみは認識され、地上から場所の把握に取り組んできた。最近はスペースXをはじめとして、低軌道の衛星が非常に増えてきた。こうした衛星、宇宙の混雑に対しては、「増やさない」「減らす」という2つの方向でルールが規定されている。KDDIは国連傘下の機関であるITU(の関連団体)にも議長を輩出しており、活発な議論を行っている。
 『増やさない・減らす』とは、ロケットを再利用したり、打ち上げた後、大気圏で完全燃焼させてごみが出ないようにしたりといったこと。最近では、宇宙ごみを捉えてコントロールする技術もある。KDDIはそういったことが実現可能なパートナーと提携し、宇宙産業の健全な発展に努めていきたい」
 続けて脱炭素、カーボンニュートラルに対する取り組みについての質問があり、執行役員常務 CFO コーポレート統括本部長の最勝寺奈苗氏が回答した。
 「実質的な再生可能エネルギーでのカーボンニュートラルを目指している。今般、KDDIグループの目標を前倒しし、データセンターは使用電力の実質100%を再生可能エネルギーで対応していく予定。また、2030年度までにKDDIグループ全体でのカーボンニュートラル、2040年度までにサプライチェーン全体を含めたCO2排出量を実質ゼロにするネットゼロ達成したいと考えている。サプライチェーン全体でのCO2削減は非常にハードルが高いが、取引先との協働により、社会全体でのカーボンニュートラル、ネットゼロに取り組んでいく」
 再生可能エネルギーの利用について、太陽光パネルのリユース、リサイクル問題、CO2排出問題などの課題を指摘し、KDDIの見解を尋ねる質問もあった。取締役執行役員常務 パーソナル事業本部長の竹澤浩氏が回答した。
 「まず、太陽光パネルを選定するときに、信頼性、安全性、コスト面を十分に考慮した上で採用する。国のリサイクル義務化に向けた検討も承知している。各種法令を順守するとともに、調達段階、リサイクル段階においても、環境に配慮したパートナー、次の展開に向けて一緒にできるパートナーを選択し、コストミニマムで共にやっていきたいと考えている」
 軍事政権が続くミャンマーでの事業について。減益原因にもなっているのに、なぜここまでミャンマー事業にこだわるのかという質問には、執行役員常務 グローバルコンシューマ事業本部長 曽雌博之氏が回答した。
 「ミャンマーにおける事業について、人権面を懸念するさまざまな声があることは承知している。一方で、われわれはステークホルダーと対話を続けており、ミャンマー国民の皆さまのために、通信インフラを維持することが人権尊重の観点で重要だという意見もいただいている。
 これらを踏まえ、今後もパートナーである国営郵便・電気通信事業体(MPT)の通信事業運営をサポートしながら、ミャンマー国民の生活に不可欠な通信インフラ維持に貢献していきたいと考えている。今後も、現地社員、家族、関係者の安全確保を最優先に、人権を尊重するための適切な対処を継続する。ミャンマーの情勢を注視しながら、適切に対応していきたい」
 社長の高橋氏は、「KDDIが参入する以前、ミャンマーの携帯電話普及率は13%だったのが117%まで伸びた。ミャンマー国民のためには非常にプラスになっていると自負している。人権は非常に重要な課題なので真摯(しんし)な姿勢で取り組む」とコメント。設備のリース債権の回収が滞っていることについては、「今年度以降も回収に努めていきたい」とした。

ITmedia Mobile

「株主」をもっと詳しく

「株主」のニュース

「株主」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ