XRISM、超新星残骸と超大質量ブラックホールについての2つの成果を発表

2024年9月24日(火)20時32分 マイナビニュース

宇宙航空研究開発機構(JAXA)、東京大学(東大)、宮崎大学、東北大学、立教大学の5者は9月20日、2023年9月23日にJAXAが打ち上げたX線天文衛星(X線分光撮像衛星)「XRISM(クリズム)」が、2024年2月からおよそ半年間実施した初期性能検証(PV)観測で得たデータから、超新星残骸「N132D」と、渦巻銀河「NGC4151」の超大質量ブラックホール(SMBH)に関する独立した2本の成果について、論文掲載が決まったと共同で発表した。
同成果は、国際共同研究チームXRISM Collaborationによるもの。詳細は、1本目は日本天文学会が刊行する欧文学術誌「Publications of the Astronomical Society of Japan」に、2本目は米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載される予定。
N132Dは約3000年前の超新星爆発の残骸で、地球から約16万光年の大マゼラン雲内にある。XRISMのファーストライト観測で取得されたN132DのX線スペクトルにおいてケイ素や硫黄、鉄などの「特性X線」が検出されたことから、研究チームは、それを用いた重元素の温度測定を試みることにしたという。
重元素の温度は、プラズマ中で熱運動をする個々の重元素イオンが放出する特性X線のドップラー効果を調べることで計測可能。イオンの温度が高いほど熱運動の平均速度が大きくなるため、観測される同X線の幅もより広いものとなるという。さらに今回の研究では、超新星残骸の膨張によるドップラー効果も考慮に入れて、観測スペクトルの分析が行われた結果、ケイ素や硫黄を含む超新星残骸の外層部のプラズマは、温度が約1000万度と比較的低かったが、残骸内部の鉄は約100億度にまで達していることが判明したとする。
今後、XRISMによるさまざまな超新星残骸の観測を通して、超新星から供給された重元素やエネルギーが星間空間へと拡散・循環するプロセスが、より詳細に解明されることが期待されるとしている。
そしてもう1つの成果は、地球から約6200万光年の距離にある渦巻銀河で、活動銀河核を持つ銀河の一種であるセイファート銀河に分類される「NGC4151」の中心にある、太陽質量の約3000万倍と推定されるSMBHについてだ。SMBHは宇宙初期に形成された後、周囲の物質を吸い込みながら成長したと考えられているが、いつ・どのように・どれだけの勢いで成長したのかなど、謎も多い。またSMBHは、吸い込みきれなかった物質を吹き飛ばすことで、銀河全体の進化にも大きな影響を与えていると考えられている。それら一連のプロセスを理解する上で重要な手がかりとなるのが、SMBH周辺の物質分布である。
一般的に明るく輝くSMBHの周囲には、塵に満ちた領域の「分子トーラス」(より内側に位置する降着円盤とはまた別)が存在している。分子トーラスを含め、SMBHの周辺物質は、円盤状の構造をなしてSMBHの重力圏内を公転する。この円盤を横方向(実際には斜め上方向)から見ると、円盤の片側は常にXRISMに向かって近づき、反対側は常に遠ざかるように運動するので、それらのドップラー効果の重ね合わせによって、観測される特性X線の幅が広くなる。またSMBHの近くの(公転半径が小さい)物質ほど公転速度が大きくなることから、同速度から円盤の公転半径を求めることも可能だ。
この原理を利用して、NGC4151のSMBHの周辺構造が調べられた結果、検出された鉄の特性X線には、少なくとも3つの構造体からの放射が寄与することが突き止められた。そのうち最も幅の狭い成分が、分子トーラスの内縁部に対応し、その公転半径が約0.1光年であることが判明。また、分子トーラスよりもさらに内側には、約0.01光年(=約630天文単位)の内縁半径を持つ広輝線領域と、SMBH近傍まで続く降着円盤が存在することも確認できたとした。
分子トーラスなどの構造体の形成メカニズムは未解明だが、今回の観測により、そのメカニズムやSMBHの成長過程を知るための手がかりが得られたという。今後、XRISMによるさまざまな銀河の観測によって、SMBHが銀河全体の成長に与える影響も詳しく理解できることが期待されるとしている。
なおXRISM Collaborationでは、PV期に40天体の観測を実施。その観測成果には多くの新しい科学的な知見が含まれており、順次、成果を公表すべく準備を進めているとした。また世界中から公募した観測提案から、予備の観測提案も含めて104件を採択し、9月上旬から約1年をかけてそれらの天体を観測する予定としている。

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