スマホカメラの開発協力で脚光、「ライカ」は何がすごいのか - 独ウェッツラー「ライツパーク」でその秘密を探る
2024年12月23日(月)17時21分 マイナビニュース
11月29日に発売されたシャオミの「Xiaomi 14T Pro」には、ドイツの老舗カメラメーカー、ライカと共同開発したトリプルカメラシステムが搭載されています。最近はシャオミやシャープなど、スマートフォンメーカーとのコラボレーションでも注目を集めているライカですが、改めてどんなカメラメーカーなのかを学ぶべく、先日、ドイツ・ウェッツラーにある本拠地「ライツパーク」を見学してきました。
筆者はライカが歴史あるカメラメーカーであることは知っていても、その始まりがいったいどのくらい前なのかは知らなかったのですが、ライカの礎となる顕微鏡メーカーがウェッツラーで創業されたのは、なんと今から175年前の1849年。その後、のちの経営者の名前から、社名が「エルンスト・ライツ」になったそうです。ライカというブランド名は、実は「ライツのカメラ」という意味。そのブランド名を冠して、現在の「ライカカメラ」という社名になったのは、比較的最近のことです。
同社は1905年からカメラを手がけるようになり、1913年に技術者のオスカー・バルナック氏が映画用の35mmフィルムを転用して小型カメラを試作したのが、今に続くライカのカメラの原点となりました。「Ur Leica」と呼ばれるその試作機は2台だけ作られたそうですが、1台は第一次世界大戦中になくなってしまったとのこと。もう1台は厳重に保管されているそうで、ライツパーク内のギャラリーにそのレプリカが展示されていました。
以降ライカは、今に続くレンジファインダーカメラの「M型ライカ」など、数々の名機を世に送り出しています。ライツパークにはファン垂涎の数多くのカメラが、その歴史とともに展示されていました。ライカのカメラを使って、アンリ・カルティエ=ブレッソンやロバート・キャパ、エリオット・アーウィット、ロベール・ドアノー、木村伊兵衛といった名だたる写真家が、多くの歴史的作品を残しているのはご存じの通り。そうした写真家たちの作品も、敷地内にあるホテルやカフェなど、ライツパークのところどころで紹介されていました。
筆者がライツパークを訪れた日には工場は稼働していませんでしたが、カメラの製造についても説明を聞くことができました。レンズはその多くの工程が未だに熟練の職人による手作業だというのも驚きでしたが、特に印象的だったのは、今年70周年を迎えた「M型ライカ」の話です。最初のM型カメラである「M3」が製造されたのは1954年で、現在の最新モデルは「M11」ですが、それらのレンズには70年を経た今も、互換性がしっかり担保されているとのこと。1954年製の「M3」にも最新のレンズを使用できるし、逆に「M11」で古いレンズを使用することもできるように作られているといいます。こうしたこともあり、ライカのカメラのライフサイクルは50年・60年が当たり前なのだそうです。
ライツパーク内にはメンテナンスのためのカスタマーケア拠点もありますが、祖父の代から何十年も愛用されているカメラや、家族の遺品から見つかったカメラが持ち込まれることもよくあるそう。それらを現役として使えるように、部品なども含めて万全のメンテナンス体制が整えられています。ライツパークには中古のカメラを販売する「Leica Classic Store」もあり、かなりの年代物が並んでいました。
老舗であると同時に高級ブランドというイメージも強いライカですが、2000年代初頭には深刻な経営危機に陥ったこともありました。現在はそこから脱却し、高度な光学技術を活かして、カメラだけでなくプロジェクターからメガネまで、様々な製品を手がけています。
スマートフォンもそのひとつで、ライカの中にはスマートフォンの写真を専門とする独自部門があるとのこと。説明員の方はシャオミとの協業について、ライセンス契約による収益のほか、ブランド認知の向上、最先端のスマートフォンについて知見を得られるという、ライカにとって3つのメリットがあると話していました。「スマートフォンのカメラはどんどん良くなっている」「“勝てないなら仲間になれ”とのことわざもある」という話や、スマートフォンが写真や映像を見るプラットフォームにもなっていることから、「(スマートフォンへの取り組みは)ライカとしてやらなければならないこと」という話が印象的でした。
ライカは2023年12月にノルウェーのスタートアップであるフィヨルデン・エレクトラ社を買収し、iPhone向けに「Leica LUX」というアプリケーションも提供しています。若い人たちがスマートフォンでの「ライカ体験」を経て、本格的なカメラに興味を持つようになれば、カメラのビジネスにつながるという狙いもあるようです。
ライツパークには、様々な体験ができる本格的なミュージアム「エルンスト・ライツ・ミュージアム」もあり、有名写真家の撮影環境を模した撮影や、写真の現像を疑似体験することもできます。特に撮影した写真データを使って、暗室でフィルムから紙に焼き付ける現像工程を疑似体験できるコーナーは、筆者にとっては懐かしくもあり、とても楽しい体験でした。
ライツパークを訪れてみて、カメラにあまり詳しくない筆者にも、ライカに熱心なファンが多い理由の一端がわかったような気がします。長く使ってもらえるものづくりとサポート、変わりゆく時代をしっかりキャッチアップしつつ、普遍的な写真の楽しみや価値を伝える取り組み——愛されるブランドはそれだけの努力を続けているということです。
ライカは日本でも、スマートフォンをとっかかりに、ライカのカメラの魅力に触れらそうなイベントを開催しています。12月7日にライカ表参道店で開催された「Xiaomi Master Class supported by Leica」では、ライカユーザーのフォトグラファー保井崇志さんが講師を務め、「Xiaomi 14T Pro」を使ったフォトウォークを行ったそうです。トークショーや写真展などのイベント情報はストアのWebページで確認できるようですので、関心のある方は要チェックです。
取材協力/シャオミ