小倉智昭「30歳過ぎて、金の無心を母親に。恩返しの仕送りの行方は…。同時期に肺がんを患った姉からは、まさかのLINEが」古市憲寿が聞く〈家族の本音〉
小倉智昭さん「親に心配をかけたのは間違いない。食えない時代には、いい年なのにおふくろに助けてもらっていたくらいだからね」(提供:新潮社)
22年間にわたり朝の情報番組『とくダネ!』でMCを続け、朝の顔として活躍した小倉智昭さん。2016年に膀胱がんを宣告された後、肺への転移も見つかる中で、活動休止と再開を繰り返しながら闘病生活を続けてきました。そして2024年2月、『とくダネ!』のコメンテイターで友人でもある古市憲寿さんを聞き手に、小倉さんが人生を振り返った『本音』(新潮社)が刊行に。今回は、小倉さんが新卒で入社した局を辞めてフリーになり、電気ガス水道が止まるほどの貧困生活を送っていた、30代頃のエピソードをご紹介します。
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金の無心を母親に
(太字:古市さん)
──貧乏時代を振り返って今どう思いますか。
親に心配をかけたのは間違いない。食えない時代には、いい年なのにおふくろに助けてもらっていたくらいだからね。おふくろは80歳まで看護師やって働いていた。元なでしこジャパンの澤穂希さんを取り上げたのは、うちのおふくろですよ。
以前は台湾の赤十字病院の師長とかもやっていたんですが、引き揚げてきて僕が中学校を出たあとからは、府中の奥島病院(現・府中病院)に勤めはじめた。子供が大きくなるまでは仕事してなかったんですよ。
でも、どこで聞きつけてきたのか、看護師さんが足りないから手伝ってくれという話が来たんでしょう。それで親父に「私やりたいんだけど、もう一度やっていいか」って言って、親父も「ああ、いいんじゃないか」と言って現役復帰。それで80歳までやったの。白衣のババアですよ。
で、親父には生活が苦しいとは言えず、金の無心はおふくろのところに行くしかなかったからさ。今から行っていい? って電話して病院を訪ねていくと、もう70代になったおふくろが、ガマ口抱えて階段でトントン降りてくるんだよ。
看護師はエレベーター使っちゃいけないから。実際には少し太っているからトントンっていうほど身軽じゃなかったか──それで、「ごめんね、今日はこれしかないけど」って現金を渡してくれるんです。
それに「すいません」とか言って頭を下げながら三十過ぎのいい大人が1万だ、2万だって借りるわけです。
母への恩返しは…
──それはすごい借りですね。お母さんに恩返しはできたんですか。
おふくろが80歳まで現役で看護師をやっていて、介護施設に入ったのは90歳近かったかな。亡くなるまでの9年間くらいは施設に入った。その前もずっと仕送りしていたんです。当然、おふくろにもらったお金よりもはるかに多い分、毎月送ってたんだよ。
でも死んだ後見たら、そのお金に手をつけてないんだよね。親ってそういうもんなんですよね……。
姉に「あなたがおふくろの面倒を見てくれたから、これ何かの足しに使って」って言って、そのときに相続も放棄したんですよ。姉がずっと一緒に暮らして面倒を見てくれていたんで。
──お姉さんがいるんですね。
6つ上の姉と二人きょうだいです。本当は俺の1歳下にもう一人いたらしいんだけれども、生まれて1週間くらいで亡くなったので。親父に言わせると、その子は優秀な子だったらしい。あの子は利発な顔していた、って言うんだよ。あの子が生きていたら、こんなことにはならなかったって。
姉弟仲良し
──お姉さんとの仲はいいんですか。
いいですよ、すごく。姉は僕と同時期に肺がんやって、抗がん剤治療をしたりしたけど今は落ち着いている。何年も一緒に食事もしていないなと思って、この前久しぶりに銀座に連れていって、何でも食べてって言ったら、喜んでくれていたけど。
もう二人にとっちゃ最後の晩餐かなって思いながら。いや、だってそうでしょ。向こうも81だし、つえ使っているし、歩くのも大変だからね。車の乗り降りも大変だしさ。
向こうも最後の晩餐かも、と思って来たみたいね。まだ、がんは残っているから、旦那さんが心配して、普段は人がいるところへ行っちゃ駄目だと言って、コンビニも行かせてくれないんだって。
だから反対されると思ったけど、「トモ(智昭)ときっとがん患者同士いろいろ話したいこともあるんだろうから行っておいでよ、ゆっくり話しておいで」って送り出してくれたんだそうです。
それで本当に、ゆっくり話して帰したら怒鳴られたらしいよ。「こんな遅くまで何してるんだ!」って。姉からLINEが来て、しばらくうちには来ないでください、だって。
※本稿は、『本音』(新潮社)の一部を再編集したものです
婦人公論.jp
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