北朝鮮「空母化いずもは悪夢を呼ぶ怪物」 金正恩氏、興味津々か
日本政府が海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を実質的な空母として運用しようとしていることに対し、北朝鮮が引き続き敏感な反応を見せている。北朝鮮メディアが「いずも」の空母化に繰り返し言及していることについては、本欄でも何度か指摘しているが、その内容がちょっと面白いものになってきた。
北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は7日付の論評で、次のように述べている。
「(いずもは)名称からが再侵略亡霊を浮上させる怪物である。20世紀初めにあった日本の対中国侵略戦争で悪名をとどろかした艦船の名がまさに、いずもであった。(中略)安倍政権がいずもを空母化しようとするのは、軍国主義過去を復活させようとする彼らの野望をそのままさらけ出したものである」
何のことかと思って調べて見たら、なるほど、旧日本海軍の装甲巡洋艦「出雲」は日中戦争で、第3艦隊の旗艦として上海に停泊。中国軍と交戦し、英国海軍の艦船を撃沈するなどした歴史がある。ちなみに同艦の歴代艦長の中には、司馬遼太郎の歴史小説『坂の上の雲』の主人公のひとりである秋山真之もいる。
抽象的な表現に終始することの多い北朝鮮メディアの報道から、こうした発見をすることは珍しい。金正恩党委員長は最高指導者に就任して以来、堅苦しい国内メディアの「イメチェン」に取り組んできたもようだが、これもその「成果」のひとつと言えるかもしれない。
もっとも、「いずも」の空母化に象徴される日本の軍拡は、北朝鮮にとっては深刻な問題でもある。金正恩氏は核兵器を放棄する意思を表明しているが、それが実現すると、北朝鮮の軍事力は格段に弱くなる。兵員や兵器の数こそ多いものの、その内実は悲惨な限りだ。
通常兵器を更新して軍事力を強化するには莫大なカネがかかるが、少なくとも当面の10年や20年は、北朝鮮にそのような経済的余裕が生まれることもないだろう。自国がそんな状況にある時、日本が空母保有国の仲間入りをするとなれば、それはなかなか刺激的な出来事だ。金正恩氏は色々な意味で、「いずも」の今後に興味津々なのかもしれない。
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