「もう奴隷は嫌だ」金正恩世襲に国民の不満が噴出
「お嬢さま」を巡り、北朝鮮国民の間で議論が紛糾している。
金正恩総書記の娘で、名前が「ジュエ」とされる少女について、北朝鮮メディアは実名を明らかにせず「尊敬するお嬢さま」と呼称している。しばしば後継者説が浮上するが、故金日成主席に繋がる男系のいわゆる「白頭血統」が政権の正統性を担保している北朝鮮で、女性の最高指導者の登場はありえるのだろうか。
北朝鮮国民の間でも、このような「後継者説の噂」がしばしば流れている。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
情報筋は、新義州(シニジュ)市内で「お嬢さまがお世継ぎになる」との噂が流れていると伝えた。出処は不明としつつも、金正恩氏の現地指導に頻繁に同行していることから、噂になったものと思われる。
しかし、噂を耳にした新義州市民の反応は冷淡なものだった。
「若い指導者(金正恩氏)が登場して良い暮らしができる世の中になると思っていたが、正反対になった。親やきょうだいの家に行くことすら容易ではなく、食べていくことも困難なほどの生活苦に追い込まれている。こんな暮らしが今後も続くと思うとぞっとする」
金正恩氏が指導者として登場した当時、先代の故金正日総書記とは異なり、少しはまともな暮らしができるのではないかとの期待が北朝鮮国民の間で広がった。実際、金正恩氏はしばらくの間、市場に対する統制をほとんど行わず、人々の暮らしは徐々に改善しつつあった。
ところが、コロナ禍をきっかけに、金正恩氏が1980年代以前のガチガチの体制に戻る方向に舵を切ったことで、人々の生活は苦しくなった。「お嬢さま後継者説」は、そのようなひどい暮らしがさらに続く象徴として受け止められているようだ。
「今までわれわれ庶民は、国の奴隷として生きてきて、今もそうだ。もうそんなのは嫌だ。他の国の人のように行きたい時間に行きたいところに行って、働いた分の代償を得られるそんな暮らしがしたい」(市民)
新義州は、鴨緑江を挟んで中国の丹東と向かい合っている。貿易に携わる人も多く、海外の情報に明るい人が多い。わざわざ情報を自分から取りに行こうとしなくとも、光り輝く川の向こう岸を見るだけで、自分たちがいかに悲惨な暮らしをしているかが、否応なしに思い知らされるのだ。
後継者説をきっかけに不満が噴出した形だが、そもそも噂を信じようとしない人もいる。
「女が首領(最高指導者)になったら跡取りがいなくなるのに、この国では絶対にありえないことだ」
「跡を継ぐ方(息子)は、きっとどこかで指導者になるための教育を受けているはずだ」
金氏一家に関する噂話は不敬な行為とされ、下手をすると物理的に首が飛びかねない。本当に信頼できる人が集まった席でのみ、ひそひそと交わされる。ただ、以前は家族の間でしか話さなかったことも、最近では友人、知人とも話すようになった。情報筋は「それほど変化に対する欲求が強いからではないか」と評している。
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