罪なき市民を「緩慢な処刑」に…金正恩の警察に庶民から批判
北朝鮮の咸鏡北道(ハムギョンブクト)明川(ミョンチョン)で先月末、複数の住宅が燃える火災が起きた。安全部(警察署)は原因究明に乗り出したが、その結果は、北朝鮮の司法がいかに歪んでいるかを如実に表すものとなった。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
この火災は、ガソリンとディーゼル油を保管していた商店の倉庫から火の手が上がり、裏手の住宅8戸に延焼し、複数の住民が死傷したというものだ。この商店の倉庫は本来、燃油を保管する施設ではなく、郡内の食堂や商店の責任者が商売のために、法を犯して密かに保管していたのだ。その理由について情報筋はこのように説明した。
「彼らが油を買い込んだのは、昨年から商店や食堂がまともに運営できなかったため、国家計画(国の定めたノルマ)が達成できず政府から追及を受け、燃油でも売ってノルマを達成しようとしたからだ」
情報筋は言及していないが、コロナ鎖国下の物資不足で、正常な運営ができていなかったのだろう。だが、国家計画は一切の事情が考慮されず、無条件で達成することが求められるため、その穴埋めのために、違法な燃油ビジネスに手を出したものと思われる。
初期費用がかなりかかり、一人ではできないため、食堂や商店の責任者10人が出資しあって、吉州(キルチュ)や清津(チョンジン)から燃油を仕入れていた。
今回起きた火災で、出資者はもちろんのこと、何の事情も知らない倉庫の警備員まで逮捕されてしまった。
だが安全部は、今回の火災で住む家を失った住民のために住宅を建設し、家財道具を調達する条件で、彼らに対して6ヶ月の無報酬労働という軽い処分を下し、実際に先月10日から建設現場に動員されている。これだけ見ると「大岡裁き」のように見えるが、そんなことはない。
火災の責任は、聴覚障害を持っている67歳の倉庫の警備員にすべてなすりつけられたのだ。安全部は、明確な証拠もなく「彼が警備を行っていたとき、近所でタバコを吸ったため火災となった」と犯人に仕立て上げてしまったのだ。
まともな司法の存在しない北朝鮮では、力のない者が全責任を負わされて重い処罰を受け、力のある者は処罰を免れることが当たり前のように起きている。今回もそんな事例だ。具体的な処分内容は明らかになっていないが、おそらく教化所(刑務所)送りになり、生きて帰ってくることはないだろう。
体力のない高齢者が環境の劣悪な刑務所に送られることは、「緩慢な処刑」も同然だ。
話を知った地域住民は「違法行為を行った連中は全員釈放され、罪のない老人だけを閉じ込めて責めている」「安全部が見え透いた嘘をついている」などを激しい批判の声を上げている。
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