「腹が減って動けない」ミサイル乱射の北朝鮮軍、実は危機的状況
一度に8発もの短距離弾道ミサイルを乱射し、軍事的な示威行為を激化させている北朝鮮。しかしその実、軍の現場は危機的な状況にある。
北朝鮮で毎年5月は「田植え戦闘」の季節だ。都市の住民や兵士などを大量動員して田植えを一気に進めるのだが、毎年のように様々なトラブルが発生する。今年は、さらに状況がひどいようだ。
デイリーNK内部情報筋によると、先月中旬、北朝鮮の全軍に対して武力総司令部の名義で、農村動員に関する指示が下された。そこでは、防疫規則を徹底的に守りつつも、田植えを適時に終わらせることが今年の作況を左右することを心に刻み、物心両面で農村支援に乗り出すよう強調している。
また、農村支援に関連のない会議や集会などの開催を禁じ、軍の従業員(軍で働く民間人)が、様々な口実を並べて、農村支援を免れようとする現象もなくせと指示した。
今年の北朝鮮における干ばつや田植えの遅れは深刻で、多くの人員を動員しようにも、新型コロナウイルス対策としての移動制限で、うまく行えていない。そのため、移動させやすい兵士を中心とした動員に力が入れられているのだろう。
黄海南道(ファンヘナムド)に駐屯する朝鮮人民軍の第4軍団は、午前は思想学習を行い、午後には近隣地域の農場にでかけて、田植えや雑草取りの作業を行っている。ただ、あまり役には立っていないようだ。
それもそのはず、ある新兵訓練大隊の場合、ほとんどが栄養失調で、1日少なくとも6時間以上に及ぶ農作業に耐えかね、中には動けないため、日陰で休んで時間つぶしをしている者すらいるという。
また、空腹に耐えかねた新兵が、民家に忍び込んで食べ物を盗む事件も多発しており、農民の間で不満が高まっているとのことだ。
兵士による窃盗は今に始まったことではなく、コロナ前から深刻だった。食糧供給の構造的な問題により、兵士は常に腹をすかせており、動員先、部隊周辺で盗みを働くことが頻発していた。
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