北朝鮮「指紋認識付きIDカード」導入の噂
北朝鮮では、17歳以上の国民は誰もが「公民証」と呼ばれる身分証明証を持っている。1946年9月1日に初めて導入され、その後10年から15年周期で7回にわたって一斉切り替えが行われた。
最後に一斉切り替えが行われたのは2004年だが、その後も切り替えを巡る噂が出ては消えている。そして最近になり、またもや一斉切り替えが行われるとの噂が町に出回っている。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、当局で公民証を担当する部署から漏れ出た話として、政府が関連の調査を最近完了し、8月中旬から公民証の切り替えを始めると伝えた。
調査は数年前に始まったものだが、何らかの理由により中断し、最近になって再開されたものだという。保安署(警察署)の指導員は、洞事務所(末端の行政機関)にやってきて、住民が登録している住所に居住しているか調査を行った。
また、人民班長(町内会長)も住民台帳を手にして家々を回り、住民が本当にその家に住んでいるのか調査を行った。既に亡くなっている人、兵役や突撃隊(建設労働者)として外地に言っている人などがいないかを調べたという。
調査が事前の告知なしに行われたことで、様々な噂まれている。
そのひとつが、住民登録システムが電子化され、指紋が登録されるようになるというものだ。これについては盗難による紛失を防げるという期待の声が上がる一方で、当局の言うところの反国家行為、敵対行為などを行った「不純分子」を割り出すための措置ではないかと疑いの目で見ている人もいる。
公民証に指紋が登録されるという話は、数年前にもあった。
2010年3月、中朝国境に面した地域で公民証の一斉切り替えが始まったとの噂が流れていると現地の情報筋が伝えた。ちなみに当時は前年11月に行われた貨幣改革(デノミネーション)のせいで北朝鮮の社会全体が大混乱に陥っていた時期だ。
前述の情報筋は、時期は不明だが、数年前に所轄の保安署に行って指紋押捺を行ったと述べた。「公民証の一斉切り替え」のためのものだったが、システム構築に何らかの技術的問題が生じて導入が遅れたのではないかというのが彼の推測だ。深刻だった電力難がある程度解消され、必要な技術の取得も進んだため、指紋認識ができるようになったのではないかということだ。
これとよく似た情報も、過去には出ていた。2012年6月、別の内部情報筋は両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)での話だとして、新たに発行された公民証の番号には、要監視対象がひと目で分かる数字が振られていると伝えたが、実際に作業がどこまで進んだかは確認されないままとなっていた。
ちなみに、北朝鮮は今年10月に実施予定の人口調査(国勢調査)の予備調査を現在行っているが、これが「公民証一斉切り替えのための調査」と間違われた可能性も否定できない。
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