北朝鮮の穀物価格、配給で安定を図るも上昇に転じる
北朝鮮では今年7月から全国的に、コメやトウモロコシの有償配給が行われた。これは、国民に軍糧米を配給せよという金正恩総書記が発した特別命令書に基づいたものと言われている。
極度の食糧難を解消すると同時に、高騰する穀物価格を抑えようとする意図があると指摘されているが、当局の思惑通りにはいっていないようだ。
デイリーNK内部情報筋が伝えた、今月17日の平壌の市場でのコメ1キロの価格は、5200北朝鮮ウォン(約120円)、トウモロコシは2900北朝鮮ウォン(約67円)で、9日と比べてそれぞれ18%、38%上昇した。中国国境と接する新義州(シニジュ)でも上昇率は18%、35%に達した。
当局は、世論悪化に直結する穀物価格の上昇を抑え、価格をコントルールするために、有償配給と同時に穀物の市場での販売を禁止。国営の国家食糧販売所に一本化する計画を実行に移したが、それがうまく機能していないのだ。
配給された穀物が5日間分と少なく、価格を安く押さえたことで差益を儲けようとする転売ヤーが続出。国家食糧販売所には売る品物がなかったことなどが、理由として考えられる。
ただ、穀物価格は一部地域で下落に転じている。
両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)の市場では、17日のコメ1キロの価格は5300北朝鮮ウォン(約122円)、トウモロコシは3000北朝鮮ウォン(約69円)で取引され、9日と比べて9%下落した。また、咸鏡北道(ハムギョンブクト)穏城(オンソン)では、先月末にコメが1万5000北朝鮮ウォン(約345円)だったのが、14日には5400北朝鮮ウォン(約124円)まで暴落した。
これは、当局の統制が効いているためと思われる。情報筋は、「非社会主義、反社会主義行為(風紀の乱れ)を取り締まる連合指揮部が今月初め、国境地域で違法にコメを販売していたデコ(卸売業者)を逮捕した。彼らは他人の名義で国家食糧販売所から安値でコメを買い集め、市場で高値で販売して差益を儲けた容疑で、労働鍛錬隊または教化所(いずれも刑務所)送りとなった」と伝えた。
取り締まりが行われただけで価格が下落したということは、取り締まりの手が緩めば再び上昇に転じるということを意味する。恵山や穏城での穀物価格の安値安定の崩壊は時間の問題ということだ。
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