【決勝プレビュー】目指してきたのは“強い流経”、高くない評価を覆した激しい競争で夏冬連覇に王手
サッカーキング2018年1月7日(日)19時32分
夏冬制覇に王手をかけた流通経済大柏 [写真]=兼子愼一郎
1月8日、千葉県代表・流通経済大学付属柏高校が2度目の選手権V、そして夏冬連覇の偉業に挑む。70歳の大ベテラン、本田裕一郎監督に鍛え抜かれた強健なチームは一歩一歩、階段を踏みしめるようにこの目標へ向かって来た。
過去6度、三大タイトルで“日本一”に輝いた経験を持つ本田監督だが、本人に言わせれば「まだたったの6度」ということになる。一昨年は病を患い、入院生活を余儀なくされた時期もあったが、復帰後はむしろより精力的に指導へ当たるようになり、周囲を驚かせている(そして、やきもきもさせた)。エネルギッシュなところは変わっていないどころか、ライバル校の監督からは「最近の本田先生は神懸かっている」と評されるほど、夏の高校総体、そしてこの選手権と勝負手となる采配が当たっている。
史上4校目、計6度目となる夏冬連覇の偉業に王手をかけている流経大柏は、必ずしも評価の高い学年ではなかった。昨年から出場機会のあった選手は何人かいるものの、レギュラーを張る現3年生はMF菊地泰智と宮本優太の二人のみ。1年生で試合に出ていたDF関川郁万を含めて下の学年に評価の高い選手が多かったこともあり、今季は下級生がより多く出場機会を得るのではないか。そんな観測もあったほどだ。
ただ、彼らを「1年生チーム」だったときから観ている齋藤礼音コーチの見方は少し違う。当時から目指していたのも“上手い流経”ではなく、“強い流経”。「こいつら、入ってきたときから泥臭い展開に強いんですよ」と笑って振り返る。関東や静岡の強豪校の間で開催されている1年生のリーグ戦「ルーキーリーグ」で流経大柏のこの学年は無敗優勝を飾っているのだが、「あれも1-0とかそういうスコアばかりでしたからね」と言う。高卒即プロ入りする選手がいないことからも分かるように、現時点で特別に図抜けたタレントがいる学年ではない。ただ、「とにかく勝負強い学年」(齋藤コーチ)なのだ。
「負けず嫌いなやつしかいない」(MF加藤蓮)選手たちが激しい競争の中で伸びてきた。「自分なんて何回AチームとBチームを往復してきたか分からない」と加藤が振り返るように、選手を千尋の谷に突き落としながら這い上がってきた選手をまた突き落とすような本田監督のスタイルに対して何クソと抗いつつ、逞しさを増して出来上がったのが現チームだ。本田監督は「どうしても情で3年生を使っちゃうだけだよ」とうそぶくが、単なる情で選手起用をするような指揮官ではない。彼らが見せてきた粘り強さや逞しさを評価したからこそ、3年生中心のチームとして仕上がったのだ。
個々のタレント性という意味で前橋育英に分があるのは確かだが、勝負の行方となるとこれはちょっと分からない。今季はリーグ戦で前橋育英が2勝して、カップ戦である総体で流経が1勝をあげているが、両校の特徴を考えると何とも象徴的な結果だ。入学してきた当初から持っていた勝負強さを、タフな競争の中で磨き抜いてきた集団が最後の大舞台で何を見せるのか。必ず“熱すぎる展開”になることが約束されているようなこの試合、見逃す手はないだろう。
取材・文=川端暁彦
過去6度、三大タイトルで“日本一”に輝いた経験を持つ本田監督だが、本人に言わせれば「まだたったの6度」ということになる。一昨年は病を患い、入院生活を余儀なくされた時期もあったが、復帰後はむしろより精力的に指導へ当たるようになり、周囲を驚かせている(そして、やきもきもさせた)。エネルギッシュなところは変わっていないどころか、ライバル校の監督からは「最近の本田先生は神懸かっている」と評されるほど、夏の高校総体、そしてこの選手権と勝負手となる采配が当たっている。
史上4校目、計6度目となる夏冬連覇の偉業に王手をかけている流経大柏は、必ずしも評価の高い学年ではなかった。昨年から出場機会のあった選手は何人かいるものの、レギュラーを張る現3年生はMF菊地泰智と宮本優太の二人のみ。1年生で試合に出ていたDF関川郁万を含めて下の学年に評価の高い選手が多かったこともあり、今季は下級生がより多く出場機会を得るのではないか。そんな観測もあったほどだ。
ただ、彼らを「1年生チーム」だったときから観ている齋藤礼音コーチの見方は少し違う。当時から目指していたのも“上手い流経”ではなく、“強い流経”。「こいつら、入ってきたときから泥臭い展開に強いんですよ」と笑って振り返る。関東や静岡の強豪校の間で開催されている1年生のリーグ戦「ルーキーリーグ」で流経大柏のこの学年は無敗優勝を飾っているのだが、「あれも1-0とかそういうスコアばかりでしたからね」と言う。高卒即プロ入りする選手がいないことからも分かるように、現時点で特別に図抜けたタレントがいる学年ではない。ただ、「とにかく勝負強い学年」(齋藤コーチ)なのだ。
「負けず嫌いなやつしかいない」(MF加藤蓮)選手たちが激しい競争の中で伸びてきた。「自分なんて何回AチームとBチームを往復してきたか分からない」と加藤が振り返るように、選手を千尋の谷に突き落としながら這い上がってきた選手をまた突き落とすような本田監督のスタイルに対して何クソと抗いつつ、逞しさを増して出来上がったのが現チームだ。本田監督は「どうしても情で3年生を使っちゃうだけだよ」とうそぶくが、単なる情で選手起用をするような指揮官ではない。彼らが見せてきた粘り強さや逞しさを評価したからこそ、3年生中心のチームとして仕上がったのだ。
個々のタレント性という意味で前橋育英に分があるのは確かだが、勝負の行方となるとこれはちょっと分からない。今季はリーグ戦で前橋育英が2勝して、カップ戦である総体で流経が1勝をあげているが、両校の特徴を考えると何とも象徴的な結果だ。入学してきた当初から持っていた勝負強さを、タフな競争の中で磨き抜いてきた集団が最後の大舞台で何を見せるのか。必ず“熱すぎる展開”になることが約束されているようなこの試合、見逃す手はないだろう。
取材・文=川端暁彦
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