マグヌッセン、長期におよぶ法廷での争いに勝利。補償金を求めた元マネージャーには裁判費用の支払い命令
マクラーレン、ルノー、ハースからF1に参戦したケビン・マグヌッセンと、彼の元マネージャーのドルテ・リース・マドセンの長期にわたる裁判は、マグヌッセンに最も有利な判決が下され、終わりを迎えた。不服申し立てが不可能な判決のなかで、デンマークのイースター高等裁判所は、マグヌッセンの過去6シーズンの収入のうち20%を要求したマドセンの主張を退け、54万デンマーク・クローネ(約920万円)に設定された裁判費用をマドセンにすべて支払うよう命じた。
マグヌッセンとマドセンは、マグヌッセンのジュニア時代とマクラーレンでの最初の2シーズンでともに仕事をした。マグヌッセンはマクラーレンの1年目ではテスト兼リザーブドライバーを務め、そして翌2014年はジェンソン・バトンのチームメイトになった。しかし2015年にフェルナンド・アロンソにシートを明け渡すことを余儀なくされ、マドセンとの関係が険悪となり袂を分かった。マグヌッセンは、マクラーレンとの長期契約において彼の利益を守らなかったとしてマドセンを解雇したが、マドセンはマグヌッセンが二者の契約を破ったとして、300万ドル以上(約3億1100万円)の補償金を要求した。
コペンハーゲンの下級裁判所ではマドセンに有利な判決が出たが、マグヌッセンは控訴。バーレーンとアブダビでのグランプリがあった2020年12月に決定的な裁判があったが、隔離規則によりマグヌッセンはデンマークに戻っても裁判に出ることはできなかった。それでも不正行為がなかったことが明らかにされ、元マネージャーに補償金を支払う必要はなくなった。
しかし裁判所は、マドセンが起こした他の主張については認め、マグヌッセンのキャリアのために資金調達を行う目的で設立された企業の20%の所有権を認めた。他の共同経営者はマグヌッセン自身と、Jack & Jonesオーナーのアナス・ホルシュ・ポールセンだ。ポールセンはマグヌッセンのF1キャリアの初めから終わりまで、自身で多額の資金を投じた。
マグヌッセンはすでにアメリカにおり、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕戦デイトナ24時間レースでスポーツカーのパワーを初めて味わった。彼の父親のヤンは、皮肉にも昨年末にIMSAのシートを失ったが、裁判が終わったことについて次のようにデンマークの新聞『BT』に語った。
「このこと(裁判)が終わって嬉しい。彼のためにも喜んでいる。これからは彼は前に進んで、必要なことに集中できる。裁判は彼に影響を与えていた。日常生活ではそれほどではなかったが、物事が順調にいっているときでも裁判について多くの話し合いをすることがあり、そうなるとこの一件のことを考えないでいることは難しい。彼がこのことをもう考えなくてもいいこと、新しい人生を作ることに集中できることを嬉しく思う」
デンマークの情報筋によると、マドセンの要求は600万ドル(約6億2300万円)にまで及ぼうとしていたという。これはマグヌッセンがマクラーレンでのリザーブドライバーとしての最後のシーズン、ルノーでのシーズン、そしてハースでの最後の4シーズンで得た報酬の20%に相当する。F1に別れを告げ、おそらくさらなる成功が期待できる新たなキャリアのステージに立つにあたって、マグヌッセンが安堵のため息をついていても不思議ではない。
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