アクシデントでトップ争いから後退した佐藤琢磨「ペンスキー勢と十分に勝負できるマシンだった」
佐藤琢磨はNTTインディカー・シリーズの開幕戦セント・ピーターズバーグでインディカー参戦200戦目を迎え、デイル・コイン・レーシング・ウィズ。リック・ウェア・レーシングに移籍後初レースで10位入賞という幸先の良いスタートを切った。
そして、3週間のインターバルを置いてオーバルのテキサスで行われた第2戦へ挑んだ。
テキサスに入る直前の3月16日に、日本モータースポーツ界のレジェンド、高橋国光さんの訃報が届き、琢磨も高橋国光さんとの思い出を語りながら暗い表情は隠せなかった。
「皆さんが日本のレース界の宝が亡くなってしまったと言っていますけど、本当にその通りだと思います。日本ではホンダレーシングサンクスデーの時くらいしかお会いできませんでしたけど、いつもどう?って声をかけてくださったし、JAFの表彰式で一緒に壇上に立たせていただいたり光栄でした」
「本当に残念ですけど、心からご冥福をお祈りします。高橋さんが日本のレース界に遺してくれたものを大切にして、これからも頑張っていきたいです」と言い、今週末は喪章をつけてレース臨んだ。
例年は6月にスケジュールされているテキサスだが、今年は3月となりやや涼しいコンディションの中でのレースとなった。
「テキサスに来るまでエンジニアとミーティングをたくさんして、デイル・コインのマシンの作り方を教わってきました。なるほどなと思う事も多かったし、データを見て僕なり考えも話したし、有意義なミーティングだったと思います」
トラックで走れない時間をミーティングで消化して来た琢磨は、FP1の60分のプラクティスを12番手で終える。
「いいんじゃないかな? あとひとつだけ試したいセッティングがあって、それを試せなかったのは残念だったけど、良い方向にはなってる」と表情も明るい。
続いて行われた予選では琢磨は、ポイントランキングの最下位からの順で18番目のアテンプトになった。
ウォームアップ1周から、2周の計測アベレージで221.094mphをマークし、3番手のスターティンググリッドを手に入れた。ちなみにポールを取ったアロウ・マクラーレンSPのフェリックス・ローゼンクヴィストは221.110mph、2番手のペンスキー、スコット・マクラフランは221.096mphという僅差だった。
琢磨の後方にはウィル・パワーやスコット・ディクソン、エリオ・カストロネベスという歴代のチャンピオンやビッグチームの強者が並ぶ。デイル・コインのマシンで奮闘し3番手のグリッドを手に入れられたのは、ベテラン琢磨の手腕以外の何物でもないだろう。
日曜日のレースは快晴の下で行われた。今年は3月の開催でなおかつデイレース。6月のナイトレースという例年とは違ったコンディションでの248周のレースだ。
「スタートからトップで逃げようとすると風の抵抗を受けて燃費も悪くなるから、それはしたくない」と言っていた琢磨。勢いが削がれて一時5番手まで落ちるも、すぐさま3番手まで浮上してきた。ペースは良いようだ。
「スタート前のグリッドで他のクルマのダウンフォースレベルを見てきたんですけど、僕がいちばんダウンフォースが少なかった。問題があるとすれば、タイヤが持つかどうかだった」と言う琢磨は順調に最初のスティントを走る。
先頭は開幕戦の勝者マクラフラン、2番手はPPのローゼンクヴィストだったが、マクラフランは燃料がなくなり57周で、ローゼンクヴィストはタイヤがなくなり58周で最初のピットに入っているが、琢磨は燃料をセーブして62周目までピットインを引っ張った。
タイヤのデグラデーションもひどくなく、これは行けると確信していた時だった。
琢磨が最初のピットに向かった時、琢磨の隣のピットだったチームメイトのデイビット・マルーカスが予定より2周早くピットインしており、さらに琢磨が入ってきているのを知りながらGOサインを出されたところでエンジンストール! 琢磨は接触さえ避けれたものの、これで大きくタイムをロス。ピット作業を終えてコースに戻ると23番手まで順位を落としていた。
気を取り直して行くしかなかったという琢磨は、ニュータイヤの力を借りてどんどんと前車をパス。1周につき1台をかわす勢いで、さらに元のチームメイト、グラハム・レイホールをかわす。
98周めルーキーのデブリン・デフランチェスコをオーバーテイクしようとターン1の入り口から外側から並びかけていると、デフランチェスコがふらついて琢磨と接触。琢磨は避ける勢いでウォールに接触しダメージを負ってしまった。
ピットボックスでメカニックが懸命の修復を試みて左リアのサスペンション周りを交換。コースに戻りイエローコーションの間走り続けたが、グリーンになってもハンドリングの不安は拭えず141周目に再度ピットに入ってマシンから降りた。
「1回目のピットインの時、後から入るはずのデイビットがいてまず驚いたのと、彼はピットを出ずに待っていてくれれば、良かったんですけどね。デフランチェスコはまさかの下側(イン側で)ふらつくとはね。残念です……」
「今日は燃料もセーブ出来ていたし、タイヤも大丈夫だった。ペンスキー勢と十分に勝負できるマシンだったので勝負してみたかったですね」
結果にこそ繋がらなかったが、デイル・コインのチームと琢磨のコンビネーションは、確実に速さを身につけている。次戦ロングビーチは琢磨もデイル・コインも過去に好結果を出しているだけに、期待が持てそうだ。
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