【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第1/2戦】着実に成長も不運に阻まれた。腐らず集中を
2022年、アルファタウリ・ホンダの角田裕毅は、F1での2シーズン目を戦っていく。昨年に続き、エディ・エディントン氏が、グランプリウイークエンドを通して角田の動きをくまなくチェックし、豊富な経験をもとに、彼の成長ぶり、あるいはどこに課題があるのかを忌憚なく指摘する。今回は2022年F1第1戦バーレーンGPと第2戦サウジアラビアGPについて語ってもらった。
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「これはあんまりだ……」サウジアラビアGP決勝スタートまで約40分という時に、角田裕毅がアルファタウリをランオフエリアに停めるのを見て、私は思わずつぶやいた。どれだけ不運なんだ。トラブルのせいで、予選でタイムを出せなかった上に、レースに出ることもできないだなんて!
ホンダ、ではなくレッドブル・パワートレインズはもっと良い仕事をすべきだ。だがバーレーンとサウジアラビアでアルファタウリに起きた問題を見ると、彼らは実験台にされていて、マックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスのために解決法を探る役目を押し付けられているのではないかという気になってくる。
私は陰謀論者ではない。だが、もういい歳の大人だから、偶然を信じたりはしない。レッドブルの2台は蒸気機関車のように走っているのに、アルファタウリの2台はエンジン、ではなかった、パワーユニット関連の問題に悩まされている。ミルトン・キーンズで何かおかしなことが起こっているに違いない……。
私がホンダ(レッドブル・パワートレインズ)についてどう感じているかは置いておいて、シーズン序盤2戦での角田のパフォーマンスに目を向けよう。プラクティスでの走りから受けた印象では、彼は去年より成熟し、能力が向上しているように思う。2021年最終戦と比べても、はるかに優れたドライバーになっているのではないか。
バーレーンは角田にとってよく知るサーキットで、昨年は非常にいい走りを見せた。そのため、今年も好成績を期待できた。実際、予選と同じ時間帯のFP2ではチームメイトのピエール・ガスリーに近いタイムを出していたのだ。だがFP3をトラブルで完全に失った後、不利な状態で予選に臨まざるを得ず、Q1で敗退となってしまった。
決勝では6周目にはすでに11番手まで上がり、順調そうに見えた。しかしその後の展開を見ていると、チームは角田を8番手を走っていたガスリーを守るために使っていたのではないか、という気がしてきた(繰り返しになるが、私は陰謀論者ではない)。角田はバルテリ・ボッタスの前を走り続けてボッタスのタイムを奪ったが、自分自身のピットストップのタイミングが遅くなったことで、自分も大きくロスをしたのだ。
しかし角田はその後、挽回し、フェルナンド・アロンソを抜いてアルピーヌの2台に割って入り、8位で入賞。接近戦では闘争本能を失わず、同時に冷静さを保ち、タイヤを持たせる力があることを証明した。つまり、ドライバーとしての成熟度が上がったということだ。
ジェッダではもっと良い結果を出せそうだった。FP1ではガスリーから0.2秒差、FP2ではガスリーよりも0.1秒速かった。そしてFP3ではトップ10に入った。プラクティスすべてで10番手以上に入ったのだから、予選でQ3を期待するのは当然のことだ。ところが予選でとんでもないことが起きた……。そして裕毅はそれ以降、1周も計測ラップを走ることなく週末を終えた。
彼には何の過失もない。しかし99パーセントの人はドライバーのシーズンを分析するとき、リザルトしか見ないものだ。もちろん私は違う。私はベテランのアナリストだから、あらゆるデータを深く掘り下げて分析するからね。だが、大部分の人々はそうではないのだ。それが角田の評価において大きなダメージをもたらす可能性がある。
私から若き裕毅に何か一言声をかけるとするなら、「大きな苦労が人を強くする」という言葉を選ぶだろう。そう信じて、自分がコントロールできることに集中し、自分にはどうしようもないことは無視し、コース上で力を示すことを目指していくしかない。ただ、レッドブル・パワートレインズのスタッフとは、一度話をした方がよいのではないかな(ただし冷静に)。
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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちのある握手はバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。
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