ERC第2戦:“ロシアン・ロケット”の異名持つルキヤナク、伝統のカナリアス戦を3連覇
WRC世界ラリー選手権への登竜門でありつつ、シリーズ自体が半世紀以上に及ぶ長き伝統を有するERCヨーロッパ・ラリー選手権。その2018年シーズン第2戦ラリー・イソラス・カナリアスが、スペイン領カナリア諸島のグランカナリア島で開催され、“ロシアン・ロケット”の異名を持つアレクセイ・ルキヤナク(フォード・フィエスタR5)が同イベント3連覇を飾った。
今季開幕戦も制し、昨季の怪我からの完全復活をアピールしたロシアン・パフォーマンス・モータースポーツのエースは、この美しい島しょ部に設定されたターマック・ステージ群を大の得意としており、金曜デイ1の全8SS中5つのステージでトップタイムをマークするなど序盤から快走をみせる。
午前早朝のステージでは雨が路面を濡らし、一部ステージでは霧が立ち込める難コンディションとなるなか、ルキヤナクは「冷静で静かな」アプローチで挑みながらも、後続に21.3秒の大量リードを構築。さらにデイ2に向けてペースアップが可能であることさえ匂わせた。
「難しいコンディションだったことは確かだけど、僕らにとってはとても良い1日だった。ペースも良く、何よりノーミスだったからね」と、初日を振り返ったルキヤナク。
「もちろん経験は多いに助けになるけれど、大事なのは良いセットアップと正しいメンタルの状態だ。さらにプッシュできる感触はあるけれど、明日はタイヤの状態に集中して物事をマネジメントし、コントロールできればと思っている」
一方、濃霧によって有視界走行が制限されたことでペースが乱され、初日2番手となったのはルキヤナクの同郷の後輩であり、ERCジュニアU28登録のエントリーとなる20歳のロシア人、ニコライ・グリアシン(シュコダ・ファビアR5)だった。
「霧のなかで多くの時間を失ったと思う。いくつかの場所ではもっとペースを上げられたかもしれないけど……」と、SS6直後のミッドデイ・サービスで語ったグリアシン。
「このあとも、同じようにプッシュを続けたい。もちろん、あまり多くのミスを犯さないように細心の注意を払いながらね」
デイ1の3番手にはヒュンダイ・モーター・エスパーニャが支援するERCジュニアU28登録のホセ・スアレス(ヒュンダイi20 R5)が続き、現場を訪れたヒュンダイモータースポーツ、カスタマーレーシングのテクニカルディレクター、アンドレア・アダモの期待に応える走りをみせた。
明けたデイ2はSS総距離101.74km、6ステージの勝負となるなか、前日の予言どおりに同イベント連覇を果たしているルキヤナクが快晴のステージで圧巻のスパート。午前ふたつ目のステージとなるSS10のみ、グリアシンにトップタイムを譲ったものの、残る5ステージを制覇。二日間の全14SS中10ステージでベストを記録する見事な走りで勝利を挙げ、2011年のルカ・ロセッティ以来となるERC開幕2連勝。そしてグランカナリアの同イベント3連覇を決めてみせた。
「この週末の自分のパフォーマンスに、非常に満足している」と、フィニッシュランプに上がって笑顔のルキヤナク。
「多くのステージでベストタイムが獲れたことで、勝利を確信することができた。若いドライバーたちも速さをみせていたが、良い仕事ができたと思う。デイ2は天候も良く、ピレリタイヤが完璧な働きを見せたのも勝利の要因だ」
続く2位表彰台には前日と変わって「ペースを抑えて落ち着いたアプローチを採った」というグリアシンが続き、最後の3位表彰台争いがこの日のハイライトに。
前夜のオーバーナイトサービス時点で3番手に着けていたヒュンダイのスアレスに対し、2.9秒差の4番手からデイ2をスタートしたファビアン・クルム(シュコダ・ファビアR5)は、シュコダ・オート・ドイチェランドのワークスカラーリングが施されたファビアR5でスパート。最初のSS9で早々に3番手浮上に成功するも、続くステージでクルムのアタックに反応したスアレスが3番手を奪還。
サービスを挟んだSS12では、ドイツ選手権で2度の王座を獲得したクルムがU28登録ドライバーで最速タイムを刻んでプレッシャーを掛けると、最終SS14で再びU28ベストタイムを刻んでついに逆転。自身初となるERCポディウムを獲得することとなった。
4位スアレスの後ろ、5位にもU28エントリーでSS2では初のERCステージベストを記録したプジョー・ラリー・アカデミーのロラン・ペリエ(プジョー208 T16)が続いている。
ERCネクストラウンドとなる第3戦は、60年以上の歴史を誇る伝統のグラベル戦アクロポリス・ラリー。今季からヘッドクォーターをラミアからアテネに移動。古の神殿をバックに、6月1〜3日にセレモニアルスタートを迎える。
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