レッドブル・ホンダ密着:敗因はレースペース。フリーストップを許して最悪の状況に陥り、苦い思い出が蘇った1戦
今年の第4戦スペインGPの決勝レースを見ていたほとんどの人が、2年前のことを思い出していたに違いない。それは、2019年のハンガリーGPだ。ポールポジションからスタートしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、レースを終始リードしていたが、異なるピットストップ作戦を選択したルイス・ハミルトン(メルセデス)にレース終盤に逆転された、あのレースだ。
その苦い思い出をフェルスタッペンも忘れていなかった。
「彼(ハミルトン)が2度目のピットインをしたとき、2019年のハンガリーGPのように、新しいタイヤで僕に追いついてくるだろうと思っていたよ」
スタート直後にポールポジションのハミルトンをかわして、1コーナーの立ち上がりでトップに立ったフェルスタッペン。しかし、勝利までの道のりがそう簡単ではないことは、ハミルトンとのギャップをなかなか広げることができなかったことからもわかる。
「スタートのターン1でリードを奪ったけど、今日はメルセデスに対して、少しペースが足りなかった」というフェルスタッペンとレッドブル・ホンダ陣営が採った作戦は、ハミルトンにアンダーカットを許さないことだ。
24周目、フェルスタッペンはハミルトンよりも先にピットイン。しかし、これは本来、チームが指示したタイミングではなかった。
「ミス・コミュニケーションがあったんだ。どのタイミングでピットインするか。その周にピットインしなければならないと思っていたのに、明らかにそうではなかったんだ」(フェルスタッペン)
いったい何が起きたのか。クリスチャン・ホーナー代表はこう説明する。
「残念ながら、コミュニケーションのミスで、マックスが1周前にピットインし、その結果ピットストップ作業が遅くなった。それでもピットクルーが機転を利かせ、可能な限り素早く対応したことにより、タイムロスを最小限に抑え、信じられないほどうまく挽回できた」
このピットストップでの静止時間は4.2秒。それはフェルスタッペンが本来の周回数ではないタイミングで入ってきたため、タイヤの準備が整っていなかったからだ。フェルスタッペンがピットボックスに止まったとき、左リヤタイヤを持ったクルーはガレージから走って運んでいる最中だった。早いときは2秒を切るレッドブル・ホンダとしては、かなり遅かったのには、そんな理由があった。
しかし、これが今回の敗因ではなかった。真の敗因はフェルスタッペンが指摘したようにレースペースでメルセデスに完敗していたことだった。
そんなレッドブル・ホンダにも、勝つチャンスはあった。それもまた、2019年のハンガリーGPの苦い思い出を蘇らせた。それはセカンドドライバーの存在だ。ホーナーは言う。
「ピットストップ後、我々はポジションを維持することができたが、上位2台と後続との差が広がったとき、ルイスはフリーピットストップを手に入れた。それによって、ルイスはコース上のポジションを犠牲にすることなくタイヤ交換を行うことができ、マックスは1回目のピットストップで交換したタイヤで、最後まで走り切る度胸を試されるという、レースリーダーとしては最悪の状況に陥った」
つまり、もしチームメイトのセルジオ・ペレスがハミルトンの背後を走行していれば、ハミルトンは簡単にはピットストップすることはできなかった。2019年のハンガリーGPでも当時のチームメイトだったピエール・ガスリーが先頭集団から大きく離されたために、ハミルトンが積極的なピットストップ作戦を行うことができた。
そのペレスは前日の予選では体調不良で8番手に低迷し、レースでもトップから63秒遅れの5位に終わった。
「僕はまだ適応中で、もうすぐ100%の状態にできればと思っている」(ペレス)
レッドブル・ホンダとフェルスタッペンのタイトル争いは、ペレスのパフォーマンスにかかっていると言っても過言ではない。
2番手に後退したフェルスタッペンがピットインして、ソフトタイヤに履き替え、ファステストラップの1点を手にしたのが、せめてもの救いだったか。
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