「モータースポーツ好きを満足させたい」。レース好き制作陣が手がける映画『OVER DRIVE』はクルマファン必見
人気俳優の東出昌大さん、今をときめく新田真剣佑さんが出演する、兄弟の絆を描いた映画『OVER DRIVE』が6月1日に全国の劇場で公開される。ラリー競技を題材とした本作はモータースポーツファンも納得の仕上がりになっている。
映画『OVER DRIVE』は公道を舞台に争われるモータースポーツ、ラリーを題材とした映画。東出さん演じるメカニックの檜山篤洋と、新田さん演じるドライバーの檜山直純が所属するチーム『スピカレーシングファクトリー』の戦いや、ふたりの兄弟愛を描いた作品だ。
本作のメガホンを取ったのは、映画『海猿』や『MOZU』『暗殺教室』などを生み出してきた羽住英一郎監督。“スーパーカー世代”という羽住監督は大のクルマ好きでモータースポーツ好き。「いつかはモータースポーツ物(の作品)をやりたいと思っていた」という羽住監督は「モータースポーツが持つエンターテインメント性やスペクタクル性、1位以外は全員敗者といった考え方」などに惹かれ、モータースポーツの魅力に引き込まれた人物。
ただ羽住監督は「サッカーなど(多くの人が見たことのある)スポーツ物(作品)は本物の迫力には勝てない」と考えているといい、「そこで、まだ見たことのある人が少ないカテゴリー」としてラリーを題材にした映画の製作を決めた。
こう語る羽住監督は、ひとりのモータースポーツ好きとして、これまで公開されてきたモータースポーツ系映画の描写や設定に不満を抱えていたといい、この映画を作るにあたって「モータースポーツ好きを満足させたい」という思いがあったという。
その監督の意思が強く表れている点のひとつが、登場するマシンやシリーズについているスポンサー。例えば戦いの舞台となるラリー選手権ではセイコーが冠スポンサーを務めており、『SEIKOカップラリーシリーズ(SCRS)』として開催されている。
また、主人公たちが所属するスピカレーシングファクトリーの冠スポンサーとして電機メーカー大手のPioneerが協力しているほか、ライバルチームにも航空会社のスターフライヤーなど実在のメジャー企業が名を連ねている。
「こういうところで、誰も知らない企業が就いていたり、(実在企業と)一文字違うようなロゴが就いているとガッカリすると思うんです」と羽住監督。
「やっぱり本物じゃないと説得力がありません。架空のカテゴリーですけど、日本のモータースポーツがこれくらい盛り上がって欲しいという想いもあります」
また、羽住監督は映画製作に先駆けてラリー界の最高峰であるWRC世界ラリー選手権を取材。ラリー・ポルトガルやラリー・フィンランドに足を運び、“本物”を体感した。
そしてこのWRC取材を通して感じたというのがファン層の広さ。「クルマが走るのだけを楽しむのではなく、ラリー自体をひとつのお祭りとして捉えているような印象」を受けたといい、劇中の観客エリアの描写に組み込まれた。
「小さな子どもからお年寄りまで観戦に来ていました。それにラリーは朝が早い競技なので、前日からテントを張って泊まり込んだり、朝からお酒を飲んだり、音楽をかけて盛り上がっている人たちもいるんです」
また、マシンがメンテナンスされるサービスパークについてもメカニックが作業しているチームを求めて、観客がテントからテントへ移っていく動きや、マシンが離れたあとのテントでメカニックが清掃作業を行っている様子など、中継映像などでは分からない細かな描写も劇中に取り入れることで“本物感”が演出されている。
このサービスパークのシーンは劇中にたびたび登場し、テント横でレースクイーンがステッカーなどを配っている様子も含めて、その雰囲気はまさしく“本物”。物語の本筋には大きく影響しない描写ではあるものの、実際のスペシャルステージ(SS)やサービスパークの雰囲気がそのまま再現されている。
メインとなる走行シーンについては、2年連続で南アフリカの国内選手権で優勝したラリーカーを購入して撮影。ドローンなど最新の撮影機材を駆使して、空撮とドライバー視点、コースサイドからの視点を組み合わせることで迫力ある映像が作られた。
また、撮影するのが難しい首都高を舞台としたラウンドなどはCGを使って映像が作り上げられているほか、海外ラウンドのシーンにはWRCプロモーターの協力を得て、WRC公式映像を活用。映画に実際の映像を組み合わせることで、作品全体の説得力が増している。
加えて、劇中にラリーについての余計な説明がない点もポイントのひとつ。もちろんラリーに関する最低限の知識については説明されるものの、マシンのパーツや、ラリーに関連した専門的な用語はほとんど解説されない。
実際のメカニックたちはそういった知識に精通しており、現場で用語解説が行われないのは当たり前。劇中でも、こういった描写を排除することで臨場感やスピード感が演出されているのだ。
そのほか、メカニック役の俳優陣は1カ月以上に渡りヤリスの組み立て方を学んだほか、ドライバーの檜山直純役を演じた新田さんにはオット・タナクやセバスチャン・オジエなど実在のラリードライバーの写真を見せて肉体改造を指示するなど、羽住監督の徹底した本物へのこだわりが随所に表れている。
モータースポーツやクルマが好きな人ほど、こういった映画は敬遠しがち。しかし、劇中の描写は徹底的に実際の現場感を意識しており、羽住監督が「モータースポーツ好きが必ず見てよかったと思ってもらえる自信がある」と太鼓判を押すのも納得の仕上がり。
特に映画のクライマックスシーンはラリーやWRCを知っている人なら、思わずニヤリとする演出も含まれているので、モータースポーツ好き、クルマ好きこそ足を運ぶべき作品だ。
また、新田さん演じる檜山直純と、北村匠海さん演じるライバルチームのエースドライバー、新海彰のライバル関係を描いたスペシャルムービーを羽住監督監修のもとで制作されている。これを見れば作品の雰囲気をより味わえるはずだ。
そのほか、映画『OVER DRIVE』とTOYOTA GAZOO Racingとのコラボレーションサイト『OVER DRIVE MEETS GAZOO』(https://toyotagazooracing.com/jp/overdrive/)でも限定ムービーなどのスペシャルコンテンツが公開されているので、要チェックだ。
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