【奥深いカルチョの世界】移民との融合で“ナポリ第2のクラブ”を目指す――アフロ・ナポリ・ユナイテッド 後編
サッカーキング2020年6月11日(木)12時15分
※この記事は後編です。先に『【奥深いカルチョの世界】移民との融合で“ナポリ第2のクラブ”を目指す――アフロ・ナポリ・ユナイテッド 前編』をお読みください。
―――チーム内の移民の数、イタリア人の数を教えてください。また外国籍選手はいますか?
フランチェスコ・ファザーノ氏(以下、ファザーノ) 今季は、アフリカにルーツを持つ5人を加え、フランス人が6人。アルゼンチン人が5人、セネガル人が2人、シエラレオネ人、ガーナ人、ブラジル人がそれぞれ1人で、イタリア人は10人です。下部組織のユニオレス(20歳以下)には20人のイタリア人、4人のアフリカ人が所属しています。
―――下部組織にはどのカテゴリーがありますか?
ファザーノ ユニオレス(20歳以下)とU-16、U-15のチームがあります。
―――本拠地のアルベルト・ヴァッレフオーコ・スタジアム(ナポリ市内、2000人収容)で試合をするとき、どれぐらいのサポーターが観戦していますか?
ファザーノ 昇格がかかったいくつかの試合では、1000人ものサポーターが観戦しています。平均的には、150人から200人が足を運んでくれています。
―――アフロ・ナポリ・ユナイテッドを題材にしたドキュメンタリーフィルム『Loro di Napoli』(ナポリの彼ら)の主人公の一人で、モロッコ人の母を持ち、戸籍がなかったレッロは今どうしていますか?
ファザーノ レッロは今、プロモツィオーネ(6部リーグ)のクアルトグラドというチームでサッカーを続けています。私たちがプロモツィオーネに昇格して2年目のシーズンのときには、敵として対戦してね。危うくレッロにゴールを決められるところでしたよ。
―――ドキュメンタリーフィルムでは、会長が選手たちに教育的な指導を行っていたことも見て取れました。
ファザーノ そうですね。あの当時は、そういった面でとても骨が折れました。団体スポーツを行い、スポーツを行う上でのプロフェッショナルな教育を選手全員が受けていませんでしたから。そういったこともあって、チームとしての活動する狭い範囲だけでなく、個々のプライベートな面も見守ることがとても重要でした。
―――現在のチームで主力となる選手は誰ですか?
ファザーノ キャプテンのルイージ・ヴェロッティですね。彼はアフロ・ナポリ・ユナイテッドに所属して4年目になります。アルフレド・ロマーノ(セリエCのグッビオに在籍経験有り)、フアード・スレイマン、フランチェスコ・デ・ジョルジもチームの軸となる選手ですが、ほかにも来季もチームと契約を続けたい選手はたくさんいます。とりわけ、アルゼンチン人の選手たちをはじめとし、多くの選手がチームへの適応能力を見せ、チームのために戦ってくれました。また、すべての若手選手も、アフロ・ナポリ・ユナイテッドの一員であることに刺激を受け、幸せに感じています。
―――スポンサーはありますか?
ファザーノ 大きなところですと4社です。『ジェスコ(慈善事業団体、クラブのアントニオ・ガルジューロ会長が代表を務める)』がメインスポンサーで、アウトウーノ(中古車ディーラー)、ペニー・ブラック(ファッションブランド)、オイウッド(ファニチャーメーカー)です。
―――イタリアでは特にサッカーにおいて、常に人種差別が目につきます。本当に解決できない問題なのでしょうか?
ファザーノ イタリアには『愚か者の母はいつも妊娠している(愚か者がいなくなることはない)』ということわざがあります。幸い、私たちのクラブが創設されてから、人種差別の問題がピッチの上で起こったのは、ほんのわずかでした。しかし、セリエAで起こっていることは、政治や一般社会を映す鏡のようなもので、そこから影響を受けていると私は思っています。著名な政治家の態度や発言は、それが明らかな差別発言ではないとしても、スタジアムに頻繁に通う人たちに、正しいものであるかのような印象を与えてしまいます。また、外国人は仕事を奪うためにイタリアにやってきた、あるいは犯罪を犯す侵略者として見なされ、それまで潜在していた憎悪をぶちまける可能性を与える標的でもあるのです。
―――そういった考えを変えるにはどうすれば良いでしょうか?
ファザーノ シンプルに問題への取り組みを変えるだけで良いのです。全員が成長する機会として移民のことを思い、そして、2つの基本的な考えからスタートすることです。その一つは、素晴らしい未来を見つけるために、多くは命を落とすような危ない旅を強いられ、祖国と自分たちの愛する人たちと別れるという意味を、私たちが理解することです。西洋世界に生まれ、特別な権利を得た私たちには、到底理解できないでしょうが。もう一つは、自分たちの“家の中”を見つめ直すということです。犯罪、売春、贈賄といった多くは、私たちイタリア人の内から発生しているものであり、イタリア社会の悩みの種でもあるのです。人間は、私たちが暮らす”環境の中”で生まれる産物です。たとえば、日本にやってくる移民は、その移民を受け入れてくれた社会を倣おうと心掛け、社会に溶け込み、日本の生活様式に応じて生きていくと私は確信しています。日本にやってくる移民が、被害を与えることは極めて少ないはずです。民度や福祉の観点から、日本は世界の中で最も優れた国の一つです。イタリアにやってくる移民も大部分の人たちは、とてもよくやっています(イタリアで登録されている外国人数は500万人)。残念ながら、一部の人たちが、満足のゆく生活を送れないこともあって、犯罪に手を染め、そのうちの多くは、犯罪の実行犯となり、悪事に利用される被害者となるのです。
―――最後の質問です。あなたがたの目標、夢はなんでしょうか?
ファザーノ 私たちの夢はナポリの街で第二のクラブとなることです。事実的には、もはやそう言えるかもしれませんが、いつかの日か、ナポリとの正真正銘のデルビーを戦いたいと願っています。具体的には、これからの5年から10年で、プロクラブを目指して、総合的に強固な構造を作り上げたいというビジョンがあります。ただ、あまり高望みせず、まずは、エッチェッレンツァ(5部リーグ)からの再スタートに集中したいと思っています。ピッチは、酸素のようにかけがえのないもの。もしかすると、サッカーができるようになるのが、最初の夢かもしれませんね。
取材・文=佐藤徳和/Norikazu SATO
―――チーム内の移民の数、イタリア人の数を教えてください。また外国籍選手はいますか?
フランチェスコ・ファザーノ氏(以下、ファザーノ) 今季は、アフリカにルーツを持つ5人を加え、フランス人が6人。アルゼンチン人が5人、セネガル人が2人、シエラレオネ人、ガーナ人、ブラジル人がそれぞれ1人で、イタリア人は10人です。下部組織のユニオレス(20歳以下)には20人のイタリア人、4人のアフリカ人が所属しています。
―――下部組織にはどのカテゴリーがありますか?
ファザーノ ユニオレス(20歳以下)とU-16、U-15のチームがあります。
―――本拠地のアルベルト・ヴァッレフオーコ・スタジアム(ナポリ市内、2000人収容)で試合をするとき、どれぐらいのサポーターが観戦していますか?
ファザーノ 昇格がかかったいくつかの試合では、1000人ものサポーターが観戦しています。平均的には、150人から200人が足を運んでくれています。
―――アフロ・ナポリ・ユナイテッドを題材にしたドキュメンタリーフィルム『Loro di Napoli』(ナポリの彼ら)の主人公の一人で、モロッコ人の母を持ち、戸籍がなかったレッロは今どうしていますか?
ファザーノ レッロは今、プロモツィオーネ(6部リーグ)のクアルトグラドというチームでサッカーを続けています。私たちがプロモツィオーネに昇格して2年目のシーズンのときには、敵として対戦してね。危うくレッロにゴールを決められるところでしたよ。
―――ドキュメンタリーフィルムでは、会長が選手たちに教育的な指導を行っていたことも見て取れました。
ファザーノ そうですね。あの当時は、そういった面でとても骨が折れました。団体スポーツを行い、スポーツを行う上でのプロフェッショナルな教育を選手全員が受けていませんでしたから。そういったこともあって、チームとしての活動する狭い範囲だけでなく、個々のプライベートな面も見守ることがとても重要でした。
―――現在のチームで主力となる選手は誰ですか?
ファザーノ キャプテンのルイージ・ヴェロッティですね。彼はアフロ・ナポリ・ユナイテッドに所属して4年目になります。アルフレド・ロマーノ(セリエCのグッビオに在籍経験有り)、フアード・スレイマン、フランチェスコ・デ・ジョルジもチームの軸となる選手ですが、ほかにも来季もチームと契約を続けたい選手はたくさんいます。とりわけ、アルゼンチン人の選手たちをはじめとし、多くの選手がチームへの適応能力を見せ、チームのために戦ってくれました。また、すべての若手選手も、アフロ・ナポリ・ユナイテッドの一員であることに刺激を受け、幸せに感じています。
―――スポンサーはありますか?
ファザーノ 大きなところですと4社です。『ジェスコ(慈善事業団体、クラブのアントニオ・ガルジューロ会長が代表を務める)』がメインスポンサーで、アウトウーノ(中古車ディーラー)、ペニー・ブラック(ファッションブランド)、オイウッド(ファニチャーメーカー)です。
―――イタリアでは特にサッカーにおいて、常に人種差別が目につきます。本当に解決できない問題なのでしょうか?
ファザーノ イタリアには『愚か者の母はいつも妊娠している(愚か者がいなくなることはない)』ということわざがあります。幸い、私たちのクラブが創設されてから、人種差別の問題がピッチの上で起こったのは、ほんのわずかでした。しかし、セリエAで起こっていることは、政治や一般社会を映す鏡のようなもので、そこから影響を受けていると私は思っています。著名な政治家の態度や発言は、それが明らかな差別発言ではないとしても、スタジアムに頻繁に通う人たちに、正しいものであるかのような印象を与えてしまいます。また、外国人は仕事を奪うためにイタリアにやってきた、あるいは犯罪を犯す侵略者として見なされ、それまで潜在していた憎悪をぶちまける可能性を与える標的でもあるのです。
―――そういった考えを変えるにはどうすれば良いでしょうか?
ファザーノ シンプルに問題への取り組みを変えるだけで良いのです。全員が成長する機会として移民のことを思い、そして、2つの基本的な考えからスタートすることです。その一つは、素晴らしい未来を見つけるために、多くは命を落とすような危ない旅を強いられ、祖国と自分たちの愛する人たちと別れるという意味を、私たちが理解することです。西洋世界に生まれ、特別な権利を得た私たちには、到底理解できないでしょうが。もう一つは、自分たちの“家の中”を見つめ直すということです。犯罪、売春、贈賄といった多くは、私たちイタリア人の内から発生しているものであり、イタリア社会の悩みの種でもあるのです。人間は、私たちが暮らす”環境の中”で生まれる産物です。たとえば、日本にやってくる移民は、その移民を受け入れてくれた社会を倣おうと心掛け、社会に溶け込み、日本の生活様式に応じて生きていくと私は確信しています。日本にやってくる移民が、被害を与えることは極めて少ないはずです。民度や福祉の観点から、日本は世界の中で最も優れた国の一つです。イタリアにやってくる移民も大部分の人たちは、とてもよくやっています(イタリアで登録されている外国人数は500万人)。残念ながら、一部の人たちが、満足のゆく生活を送れないこともあって、犯罪に手を染め、そのうちの多くは、犯罪の実行犯となり、悪事に利用される被害者となるのです。
―――最後の質問です。あなたがたの目標、夢はなんでしょうか?
ファザーノ 私たちの夢はナポリの街で第二のクラブとなることです。事実的には、もはやそう言えるかもしれませんが、いつかの日か、ナポリとの正真正銘のデルビーを戦いたいと願っています。具体的には、これからの5年から10年で、プロクラブを目指して、総合的に強固な構造を作り上げたいというビジョンがあります。ただ、あまり高望みせず、まずは、エッチェッレンツァ(5部リーグ)からの再スタートに集中したいと思っています。ピッチは、酸素のようにかけがえのないもの。もしかすると、サッカーができるようになるのが、最初の夢かもしれませんね。
取材・文=佐藤徳和/Norikazu SATO
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