連邦捜査官が突入し無関係の家族の家を強制捜査、移民対策の暴走が招いた悲劇

2025年5月1日(木)17時0分 カラパイア


 2025年4月、アメリカ・オクラホマ州オクラホマシティで、ある家族が移民・関税執行局(ICE)による強引な家宅捜索を受けた。​


 20人のバッジを付けた重武装の連邦捜査官たちが家のドアを破って突入したのだが、家族はこの家に引っ越してきたばかりで、完全な人違いだった。


 家族はれっきとしたアメリカ国民であり、まったくの捜査対象ではなかったにもかかわらず、突然の出来事により深いトラウマを抱えることとなった。​


 この事件は移民政策の厳格化が、一部の関係者たちにより悪い方向で暴走につながってしまったケースの1つと言えるかもしれない。


引っ越したばかりの家族に突然連邦捜査官が突入


 マリサ(仮名)さんと3人の娘たちは、落ち着いた環境を求めて、事件の2週間前にメリーランド州からオクラホマ州オクラホマシティに引っ越してきたばかりだった。


 彼らは治安のよさそうなオクラホマシティの北西部に家を借りた。夫は2週間後に家族と合流する予定で、この時点ではまだメリーランド州に留まっていた。


 だが、2025年4月24日の朝、武装した連邦捜査官20人が、突然マリサさん宅の玄関ドアを蹴破って突入してきた。



※画像はイメージです image created by MidJourney


 「あなたたちは誰?ここで何をしているの?」とマリサさんは尋ね続けたが、彼らは「この家の捜査令状がある」と言う。


 母親と娘たちはそのままの姿で外に連れ出され、雨の中、下着姿のまま待たされることになった。


彼らは着替えを許してくれなかった。娘にまで服に着替えるなと言ったんです。夫ですら、娘の下着姿を見たことがないのに…


捜査令状に記載されていた名前は以前の住人


 令状に記載されていた名前は、以前この家に住んでいた住人のものであり、マリサさんたちとはまったく無関係。唯一のつながりといえば、前住人宛のジャンクメールがまだ届いていたことくらいだったという。


 泣きながら「私たちはアメリカ国民です!犯罪者じゃない!」と何度訴えても、捜査官たちは聞く耳を持たなかったという。


彼らはとても不愛想で、乱暴で、無頓着でした。私たちは犯罪者ではないと訴え続けたのに、犯罪者のように扱った。私たち家族はただここにいただけで、何もしていません


「証拠品」として奪われた私物と貯金


 捜査官らは家の隅々まで捜索し、乱暴に荒らしながら数少ない所持品、携帯電話やノートパソコン、そして家にあった現金を「証拠」として押収して行ったという。


私は彼らが立ち去る前に言ったんです。
私の携帯を持って行ったでしょう? 私たちはここに引っ越して来たばかりで、お金もないんです。子供たちを食べさせなければならないし、ガソリン代もいる。
移動できるようにしないと。どうしてこんな風に私たちを置き去りにできるの? まるで捨て犬みたいに


 まるで凶悪犯のような扱いを受け、尊厳を踏みにじられた家族に対し、捜査官の1人は「ちょっと大変だったね」と言い残して去っていったという。


 私物や貯金をいつ取り戻せるか尋ねると、「数日で返すかもしれないし、数ヶ月かかるかもしれない」と曖昧な返答しか得られなかった。


 家族は今後、トラウマを抱えながら、何とか生きていかなければならない。



image credit:Pixabay


不法移民対策の強化


 マリサさんは、彼らが米国連邦保安官、移民税関捜査局(ICE)、FBIの連邦捜査官だと名乗ったと語った。


 ICEとは、米国内の多国籍組織及び外国人の犯罪およびテロ行為の調査を目的とした、国土安全保障省(DHS)に属する機関である。つまり不法入国者や不法滞在者を摘発する組織なのだ。


 おそらくはマリサさんの新居に以前住んでいた人物が、不法滞在者であり犯罪者であったということなのだろう。


 当局はまるで関係のない米国民のマリサさんたちが引っ越してきたことを把握しておらず、この日の強制捜査を実行したのだと思われる。


 ただし、後に連邦保安官局の広報担当者は、保安官が現場にいたことを否定し、「事前に作戦は認識していた」が、いかなる形でも協力しなかったと語っている。



アメリカ・メキシコ国境 image credit:Pixabay


 政権が代わってから、アメリカ国内に滞在する外国人への締め付けは厳しさを増している。


 マリサさん宅に捜査が入った翌日の4月26日には、フロリダ州で4日間にわたる大規模な取り締まり[https://www.cnn.co.jp/usa/35232374.html]を行っており、約800人を逮捕したと伝えられている。


 さらに29日、ICEは6万6,463人の不法滞在者を逮捕し、6万5,682人の外国人を強制送還するという、史上最多の取り締まり[https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/04/a3b8ae825d3fe955.html]を行ったと発表した。


 日本人も例外ではない。日本人留学生がビザを取り消された[https://news.yahoo.co.jp/articles/0594389c58d0dfc85a6283e96d51ac89b64b6eba]ニュースは記憶に新しいと思う。これまでは取り消しに至らなかった軽微な交通違反なども、今後は取り消しの対象になる可能性があることに留意しなければならない。


 マリサさんは、最後に次のように語っている。


もし私が武装していたら、どうなっていたんでしょう。最初は強盗かと思い、娘たちが誘拐されるのかと思いました。だって銃を私たちの顔に向けているんですよ。
せめて私たちを人間として見てくれませんか? 少しでいいから哀れみを持って、同じ人間、同じ国民、同じ住民に対してもう少し配慮してほしいです。
私たちだって他の人と同じように血を流すし、仕事もしている。本当に怖かったです。私たちの顔を見れば、どれほど怖がっているのがわかったでしょう?
なぜ話を聞いてくれないのですか?あなたたちの市民権は特別なのですか?どうしてあなたたちの安全だけが大事にされるんですか?私には奪われた娘たちを守る権利はなく、なぜそれをあなたたちだけが持っているんですか?


References: Feds raid wrong house, steal everything, leave[https://boingboing.net/2025/04/29/feds-raid-wrong-house-steal-everything-leave.html] / ‘We’re citizens!’: Oklahoma City family traumatized after ICE raids home, but they weren’t suspects[https://kfor.com/news/local/were-citizens-oklahoma-city-family-traumatized-after-ice-raids-home-but-they-werent-suspects/]

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