『シュニッツァー・セリカターボ』BMWチューンの名手が手がけ、トムスが高めたニッポンのシルエット【忘れがたき銘車たち】
モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは『シュニッツァー・セリカターボ』です。
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1970年代の後半からスタートし、欧州、特にドイツを中心に隆盛したシルエットフォーミュラ。日本では、スーパーシルエットレースという名称の選手権でもおなじみのグループ5という車両規定のマシンのことだ。
シルエットフォーミュラは発祥が欧州であるため、ポルシェ935やBMW320、ランチア・ベータモンテカルロなど、大半が日本から見れば外国車をベースとしていた。そんなシルエットフォーミュラ時代のドイツ国内の選手権に異色ともいえる1台の日本車がエントリーしていた。それが『シュニッツァー・セリカターボ』である。
『シュニッツァー・セリカターボ』を生み出したのは、車名が示す通りに“シュニッツァー”。兄のヨーゼフと弟のヘルベルトのシュニッツァー兄弟が率いる日本でもその名を知らない人はいないといえる有名なBMWチューンの名手だ。
この“シルエット”セリカがドイツレーシング選手権(DRM)にデビューしたのは1977年のことだったのだが、シュニッツァーはこの年もBMW2002を独自にグループ5マシンへと仕立て、DRMへと参戦していた。そんな彼らが、なぜ『セリカターボ』を手掛けることになったのか。
それは以前からシュニッツァーの手がけたエンジンがラリーで活躍するのを目の当たりにし、当時トヨタのラリー活動を指揮していたオベ・アンダーソンが、ドイツ国内におけるトヨタのプロモーションのため、シュニッツァーにセリカでの参戦を提案したことがきっかけだった。
このような経緯からセリカによるDRM参戦が実現したのだが、トラブル続きで思ったような成績は残せなかった。参戦は1978年も続いたがシュニッツァーを率いていたひとり、兄のヨーゼフが急死したこともあり、ドイツにおける『セリカターボ』のプロジェクトは幕を下ろした。
翌1979年。今度は日本のトヨタ系チューナーの名門、トムスの手で『シュニッツァー・セリカターボ』は海を渡った。ドイツトヨタから安価での売却を打診され、もともとシルエットフォーミュラに興味のあったトムス代表の舘信秀が購入を決意。同年から日本でもスタートしたグループ5マシンによるレース、スーパーシルエットに参戦を開始したのである。
そしていよいよ日本のスーパーシルエットレースを走り始めるのだが、ドイツ時代同様、トラブルに見舞われてしまう。そのトラブルとは前後重量配分を改善するため、エンジンとギヤボックスの間にベルハウジングを挟み、ギヤボックスを後退させ、ドライブシャフトを延長するというレイアウトに起因するものだった。
この部分に起因するトラブルが解消されぬまま“輸入”された『セリカターボ』は、テスト時にはアイドリングでドライブシャフトが折損する有様だった。
しかし当時、田宮模型に勤め、模型製作のために海外でもレーシングカーの細部を撮影するなど、最新のシルエットフォーミュラにも造形の深かった現ミニカーメーカー『エブロ』代表の木谷真人の助言にヒントを得て、レイアウトを変更。ギヤボックスとエンジンを繋げ、ドライブシャフトを短くし、本来あるべきレイアウトに戻したのである。
すると『セリカターボ』のトラブルは解消され、レースを戦えるようになった。そしてデビューから3戦目のレースでは見事に初勝利を記録。いよいよ本来持つポテンシャルを発揮するようになったのだ。
その後、トムスは童夢と共同で生み出した童夢セリカターボとカローラG5による活動へと移行していき、この『セリカターボ』はトムスの手を離れて、トラストへと売却され、スーパーシルエットレースを戦い続けていった。
余談だが、この『セリカターボ』を生み出したシュニッツァーと、それを高めたトムス。この両者は十数年の時を経て、互いにメーカーの威信を背負い、全日本ツーリングカー選手権(JTCC)で相見え、王者争いを繰り広げることになる。その“因縁”の起源が『セリカターボ』にあった……と言ったら、こじつけが過ぎるだろうか。
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