【F1データ主義】マンセル&ハッキネンの初優勝、伝説を生んだセナ。名シーン豊富な『1カ国2開催』を振り返る
70周年記念GPというのは、F1が初めて世界選手権として開催されたのが、いまから70年前のイギリスGPだったことから、そのイギリスで開催される2つ目のグランプリに特別に与えた名称だ。
そのイギリスで1年に2度F1が開催されるのは、今年が4度目となる(データ1)。
【データ1】
■1983年
7月16日 イギリスGP(シルバーストン) 優勝:アラン・プロスト(ルノー)
9月25日 ヨーロッパGP(ブランズ・ハッチ) 優勝:ネルソン・ピケ(ブラバム)
■1985年
7月21日 イギリスGP(シルバーストン) 優勝:アラン・プロスト(マクラーレン)
10月6日 ヨーロッパGP(ブランズ・ハッチ) 優勝:ナイジェル・マンセル(ウイリアムズ)
■1993年
4月11日 ヨーロッパGP(ドニントン・パーク) 優勝:アイルトン・セナ(マクラーレン)
7月11日 イギリスGP(シルバーストン) 優勝:アラン・プロスト(ウイリアムズ)
F1では、1カ国1グランプリが原則となっているため、1年の間に2度F1を開催する場合は、別の名称が使用さる。多くの場合は『ヨーロッパGP』が使用され、1983年のヨーロッパGPがその最初のグランプリだった。
その後、ヨーロッパGPはイギリス以外の国でも開催されるようになり、ミハエル・シューマッハーが活躍した90年代後半から2000年代にかけては、ドイツで毎年のように開催された。
ヨーロッパGP以外での名称でも、1カ国2開催が行われたケースがある。
1981年から2006年までは、イタリアで『イタリアGP』のほかに『サンマリノGP』の名称でF1が開催されていた。また1982年にはフランスでポール・リカールのほかに、ディジョンで『スイスGP』の名称でF1が開催された。これは、1955年のル・マン24時間レースで起きた大事故により、スイス国内でのモータースポーツが禁止されていたための措置だった。
ヨーロッパ以外でも1カ国2開催が行われたケースがある。1970年代から80年代にかけて、アメリカでは『アメリカ東GP』、『アメリカ西GP』、『デトロイトGP』、『ラスベガスGP』の名称で1年に2度F1が開催され、1994年と95年には日本でも岡山県のTIサーキット英田(現:岡山国際サーキット)で鈴鹿での日本GPとともに、F1が開催された。
この1カ国2開催として行われたレースでは、不思議なことに『初物』や『感動的』、あるいは『これが最後の』というような、その後、語り草になるようなレースが展開されることが少なくない。
たとえば1981年のラスベガスGPでは、ブルーノ・ジャコメリが初表彰台を獲得。1982年のラスベガスGPではミケーレ・アルボレートが初優勝を飾っている。1983年にはジョン・ワトソンがアメリカ西GPで最後の優勝を果たし、デトロイトGPで最後の表彰台を獲得した。
1985年のヨーロッパGPは、大英帝国の息子と称されたナイジェル・マンセルのF1初優勝によって、大いに盛り上がり、1993年にドニントン・パークで行われたヨーロッパGPは、アイルトン・セナの雨の中で素晴らしい走りによる大逆転優勝によって、伝説のグランプリとなった。
1997年のスペイン・ヘレスで開催されたヨーロッパGPではミカ・ハッキネン(マクラーレン)が記念すべき初優勝を遂げ、1999年のドイツ・ニュルブルクリンクで行われたヨーロッパGPではスチュワート(レッドブルの前身)が初優勝を飾ったが、これが最後のF1優勝でもあった。
2012年にバレンシアで開催されたヨーロッパGPでは経済的苦境にあるスペインでフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が2006年以来の母国優勝を飾り、珍しく涙した。また、このレースで3位表彰台を獲得したミハエル・シューマッハー(メルセデス)にとって、これがF1最後の登壇でもあった。
このジンクスは現代でも生きており、2020年の開幕2連戦では初戦でランド・ノリス(マクラーレン)がうれしい初表彰台を獲得。果てした、今年2度目の1カ国2開催となるイギリスでの2戦目、70周年記念グランプリでは、どんなドラマが生まれるのか。
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