小松礼雄コラム第12回:長所と短所が見えた2連戦。疑問符がつく赤旗中断時の運営とグリッド裁定
ハースF1チームのチーフエンジニアとして今年で2年目を迎える小松礼雄氏。創設2年目の新興チームであるハースはどのようにF1を戦うのか。現場の現役エンジニアが語る、リアルF1と舞台裏──F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムの第12回目をお届けします。
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■ベルギーGPでの“誤算”はマグヌッセンのコースオフ。本人は死にそうな顔で反省
今回はサマーブレイク明けの2連戦(ベルギーGP、イタリアGP)について振り返りたいと思います。
まず、ベルギーGPにはミディアムダウンフォースパッケージを投入したものの、金曜日の時点ではうまくセットアップを合わせることができませんでした。FP1、FP2ともに下位に沈みましたが、夜の間にいろいろなところを見直し、土曜日の朝にこれでいこうと決めたパッケージがうまく機能して、FP3ではタイヤも一気に使えるようになりました。とても良いパフォーマンスでしたね。
決勝は1ストップでいくと決めていましたし、予選中にウルトラソフトを多めに使う予定だったので、FP3ではあえてウルトラソフトを履いて走行しませんでした。
マシンの出来に手応えはありましたが、ひとつ懸念していたことはスーパーソフトからウルトラソフトへの切り替えがちゃんとできるかどうかです。そして、残念ながら予選では、その不安が的中してしまいました。
ウルトラソフトをうまく使いこなすことができずにQ2敗退となりましたが、金曜日のセットアップの遅れがそのまま予選にも響いてしまったというのが正直なところです。
金曜日の時点でちゃんとしたダウンフォースレベルで走れていればFP3だけでなく、FP1、FP2のデータを基に予選を戦えていたわけで、そのあたりがチームとしての大きな課題のひとつですね。
とはいえ、レースのパフォーマンスはとても良かったです。しかもフォース・インディアが自滅して2ストップを選択してくれたので、ロマン(グロージャン)が彼らの前までフィニッシュ(7位)できました。
ただし、ひとつ誤算だったのが、ケビン(マグヌッセン)のセーフティカー退去直後のコースオフですね。セーフティカーラインはターン18と19の間にあり、そこを越えるまでは他車を追い抜けないわけですから、ターン18のブレーキングで無理をしても意味がないわけです。
逆にターン18のブレーキングは軽めにいっておいて、ターン19の立ち上がりをよくすることを心掛けて走るのがセオリーだと言えます。しかし、ケビンの若さが出たのか痛恨のミスを犯し、一気にポイント圏外まで落ちてしまいました……(結果は15位)。
レース後の本人は反省しきっていて死にそうな顔をしていたこともあり、さすがに怒るわけにもいかず、「次のレースがすぐにあるから良かったな」と励ますしかありませんでした(苦笑)。
ケビンと同じことは(フェリペ)マッサにも言えます。ロマンを追い抜こうとしてぶつかりかけていましたが、あれほど経験値があるドライバーなのに、なぜあそこで仕掛けるのか、僕には理解できません。
そのおかげでロマンは彼を回避しないといけず、その結果ターン19の立ち上がりが悪くなり、前の(ニコ)ヒュルケンベルグに仕掛けることができませんでした。これは痛かったですね。
結局、ロマンは7位入賞を果たしましたが、よくやったと思います。経験豊富なドライバーなので、そのレースで採るべき戦略やタイヤの使い方をしっかり理解しているし、最近は周りのドライバーの動きもよく見えています。
仮にマシンの感触が多少悪かったとしても、周りのマシンと比較しながら走ることができるので、精神的に落ち着いてドライビングできるのでしょう。逆に予選はひとりでのアタックになるぶん、少しでもマシンの感触が悪いと、たとえ速いタイムを出せていてもパニックに陥ってしまう。
その悪い例が、イタリアGPの予選ですね。彼はアタック中にQ1でクラッシュを喫し、赤旗中断のきっかけを作りましたが、僕がデータを見ていて驚いたのはターン1の手前のトラップスピードです。1位のロマンは2位のドライバーに30km/hもの大差をつけており、明らかにオーバースピードでした。
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■グロージャンの“長年修正できない課題”が出たイタリアGP
■悪天候でも適用された107%ルール、セッションの進め方には疑問も
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