【中野信治のF1分析/第17戦日本GP予選】マクラーレンとアルファタウリの弱点を補った風向き
鈴鹿サーキットで開催されている2023年F1第17戦日本GP。9月23日(土)に行われた予選ではマックス・フェルスタッペン(レッドブル)が今季10回目のポールポジションを獲得しました。今回は予選の行方を左右した要因のひとつである『風向き』、そして角田裕毅(アルファタウリ)の予選の戦いについて、元F1ドライバーでホンダの若手育成を担当する中野信治氏が独自の視点で予選を振り返ります。
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今回の日本GPの予選は非常に面白かったですね。フリー走行の時点からマクラーレン勢が好調でしたので、もしかしたらマクラーレンがポールポジション、というような期待も抱かせる流れでしたのでそこも楽しみにしていました。ただ、予選ではセクター1でのフェルスタッペンの走りがあまりにも秀逸すぎて、ギャップをライバル勢が埋めきれずに終わったと感じています。
今回、ピアストリが2番手、ランド・ノリスが3番手と、マクラーレンが2&3グリッド獲得となりましたが、予選中の風向きがマクラーレンの味方をしていたように感じましたね。今回のマクラーレンはダウンフォースを付けていてストレートがあまり速くないクルマなので、ストレートでの追い風が味方をしてレッドブルとのタイム差が縮まっている部分はあると思います。決勝レースは、風向きがどうなるかでマクラーレンがレッドブルにどこまで迫ることができるか変わってくると思います。
風向きが味方をしたといえば、予選9番手の裕毅もそうですね。アルファタウリのマシンもダウンフォースを付けているように見えるので、クルマの弱点を風が補ってくれてポジティブな方向に向かったのかもしれません。アルファタウリは若干アンダーステア気味のクルマですけど、今回はS字区間でダウンフォースが増える向かい風でした。今回の予選ではその部分がプラスに働いてS字区間が速かったので、風向きがアルファタウリの弱点を補って助けてくれた、という印象です。
また、Q2のS字ではフェルスタッペンと裕毅の走りが遜色なかったのも非常にポジティブでしたね。当然、アルファタウリのマシンは、風向きなどのいろいろな要素があって“決まっていた”部分もあったと思いますけど、その『決まっているとき』にスピードを見せつけることができるのは、もともとのスピードセンスが優れている証拠です。ですので、裕毅はグランプリ関係者にすごく良いアピールができたのではないかなと思います。
アルファタウリといえば、予選11番手でQ3進出を逃したローソンは少し残念でした。Q1でソフトタイヤを3セット使っていましたけど、本当に使わないといけない状況だったのかなと。Q1でタイヤを使わずに、Q2で2セット目を投入できていれば、おそらく裕毅とほぼ近いところで予選を終えていたと思うので、少し残念でしたね。
そのほかのライバル勢の走りやデータを見ても、裕毅はうまく予選をまとめて、きちんとF1参戦3年目の成長を母国で、鈴鹿サーキットでしっかりと見せてくれたと思います。あとは決勝でどのような戦いと成長ぶりを見せてくれるかに期待したいと思います。
【プロフィール】
中野信治(なかの しんじ)
1971年生まれ、大阪府出身。無限ホンダのワークスドライバーとして数々の実績を重ね、1997年にプロスト・グランプリから日本人で5人目となるF1レギュラードライバーとして参戦。その後、ミナルディ、ジョーダンとチームを移した。その後アメリカのCART、インディ500、ル・マン24時間レースなど幅広く世界主要レースに参戦。スーパーGT、スーパーフォーミュラでチームの監督を務め、現在はホンダレーシングスクール鈴鹿のバイスプリンシパル(副校長)として後進の育成に携わり、インターネット中継DAZNのF1解説を担当。2023年はドライバーとしてスーパー耐久シリーズST-TCRクラスへ参戦。
公式HP:https://www.c-shinji.com/
公式Twitter:https://twitter.com/shinjinakano24
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