2019年日本GP以来となるポール獲得のM.マルケス、ウエットコンディションに得たチャンス/MotoGP第16戦日本GP
日本GPの予選は天候に翻弄された。午前中のセッションからウエットコンディションとなり、Moto2クラスの予選Q2中に雷雨により赤旗中断。降り続く激しい雨によってMotoGPクラスのフリー走行3回目はなくなり、天候とコンディションの回復を待って、当初のスケジュールから約1時間遅れて予選がスタートした。
コンディションは当然、フルウエット。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)を始め、濡れた路面に足元をすくわれるライダーがいる中で、マルケスはQ2中盤にトップタイムを記録すると、さらに終盤には1分55秒214をたたき出して、ポールポジションを獲得したのだった。これはマルケスにとって今季初であるだけではなく、3年ぶりのポールポジションでもあった。マルケスがこれ以前、最後にポールポジションを獲得したのは、奇しくも2019年の日本GP。そしてまた、ホンダにとっても今季初のポールポジションでもあった。
マルケスは予選後、MotoGPクラスの予選トップ3が出席する会見の中で、「もちろん、再びポールポジションを獲得できてうれしい。今のチーム、ホンダが苦戦している2022年の中で、チームとしてはとてもいいニュースだよ。こうした小さな成功、さらなるモチベーションが必要なんだ。(トップで終えた)フリー走行2回目ではイージーモードで走っているように感じ、ラップタイムが上がった。だからもし午後にウエットだったらチャンスだと思って、アタックしてみたんだ」と予選を振り返った。
マルケスは今回のウエットコンディションでのポールポジション獲得の背景について、まず自身の状態についてこう説明している。
「今日は腕の位置が完ぺきであることを確かめた。思ったようにブレーキができて、コーナーに入り、バイクを起こすことができたんだ。とてもうれしいよ。どうしてドライよりもいいのかというと、筋肉を(ドライより)使わないからだ。そして、思うように腕のポジションをキープできるからなんだ。ドライコンディションでは、なにもかもがもっと難しくなるだろう」
バイクのフィーリングと弱点は2022年シーズン前半から変わっていない、そうマルケスは感じているという。だが「それからウエットのもうひとつのポイントとしては、バイクの弱点が小さく感じられるってこと。この状況でのメリットを使うことができたよ」ということだ。
ウエットコンディションでフィジカル、バイク両面において、ライバルたちとの差が小さくなったことがマルケスのポールポジション獲得を後押しした、というわけだ。復帰後2戦目、そして難しいコンディション。それでもチャンスを逃さずポールポジションを獲得するあたりがマルク・マルケスたるゆえんだろう。
HRCテストライダーであり今大会にワイルドカード参戦している長島哲太(HRCチーム)は、今回のQ2のマルケスの走りを見て「さすがマルクだな、という走り方だった。もっとこうすればいいのか……と思っていた」と言う。
「マルクのブレーキでのリヤタイヤの出し方(がさすがだなと具体的に思ったところ)。ミシュランだとあの走り方をするのはすごく難しいんです。Moto2のダンロップだと勝手に出ちゃうというか……。もちろんミシュランでも出る部分はあるのですが、そのおいしい位置の使い方ですね。特に雨だったので、そこをうまくコントロールしながらスピードを乗せて入っていくというのを見たとき、『そこまで操れるんだ』と思いました。自分はまだそのスピード領域でそれができる余裕がないので、スピード領域の感じ方の違いだったり、仕事量の多さが全然違うなと見ても感じたし、一緒に乗っていても感じました」
ただ、ドライレースが予想される日曜日の決勝レースについて、マルケスはあくまでも現実的だ。「明日は今の僕たちの本来の位置に戻ると思うよ」と、優勝や表彰台争いをする状態ではないと考えている。
「もちろんトップにいたいし、表彰台争いがしたいし、トップ5でポジションを争いたい。でも今はそのときじゃないんだ。小さくてもチャンスがあるときはいつも、トライするだろう。MotoGPにやってきたときから、僕の性格は変わってないからね。でも明日はとても長いレースだし、金曜日の段階でこのサーキットで安定して走って全周回でアタックするのは難しいだろうと感じていた」
「でもまあ、どうなるかな。まずは天気を理解し、そのあとタイヤを理解する必要がある。まだちょっとわからないところがあるからね。そして、いい形でスタートしようと思う。もちろん速いライダーは僕をパスしていくだろうけど、ポジションを考えて、安定したペースのレースをできるようにしたい」
マルケスが語るように、ドライコンディションで状況は変わるのだろうか。
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