【F1日本GP無線レビュー】直前になってPUセッティング変更を強いられたガスリーが激怒「なんてことだ、馬鹿な!」
F1第17戦日本GPはトロロッソ・ホンダにとって土曜は天国、日曜は一転して地獄へと突き落とされるような週末になってしまった。
前戦ロシアで試したパワーユニットのスペック3のセッティング熟成とともにトロロッソ・ホンダSTR13のメカニカル面セッティングを変えたことでフリー走行は忙しいものになったが、マシンパッケージとしてのポテンシャルは確実に上がっていた。少なくとも予選に限って言えばそれが難攻不落の鈴鹿で花開いたことになる。
フリー走行1回目ではピエール・ガスリーがターン2出口でコースオフする場面があったが、タイヤが温まっていない段階でのスロットルオンによるスナップオーバーステアで、ある意味それはまだドライバビリティの熟成が充分でなかったことを表わしていた。
ガスリー(以下、GAS)「なぜか突然すごいスナップが出たんだ」
トロロッソ(以下、STR)「マシンは大丈夫? ピットインする?」
GAS「大丈夫だよ、大丈夫」
STR「コースオフしたとき何が起きたのか詳しく説明してくれ」
GAS「すごく不思議な挙動で、ターン2の出口で大きなスナップが出て完全にリヤがステップアウトしたんだ」
一方、ブレンドン・ハートレーはアタックラップでのエネルギーマネジメントに感じた違和感を指摘しつつ、マシンバランスの要改善点もフィードバックしていった。
ハートレー(以下、HAR)「ターン1の手前で少しパワーのロスを感じたからチェックしてくれ」
STR「それはクリップ(デプロイメント切れ)だ」
HAR「高速コーナーの入口でスタビリティを欠いている。コーナーの中でアンダーステアになるけど、入口がすごくルーズだ」
エンジンブレーキのセッティングも駆使してコーナー入口での不安定さを解消し、フリー走行2回目の段階では2台ともにマシンバランスはかなり満足のいく状態にまで仕上げることができた。しかしガスリー車は燃料タンクのトラブルで75分をロスしたこともあって、フリー走行3回目でもまだパワーユニットのセッティングが煮詰め切れていなかった。
GAS「かなりパワーが低いよ!」
STR「了解、今チェックしているところだ」
GAS「オシレーションが酷いしパワーも出ていない」
STR「了解、それはこちらでもデータ上で確認しているよ」
GAS「何とかする必要がある。FP1より酷いよ」
どのグランプリ週末でも金曜土曜の走行で各ドライバーのドライビングスタイルや癖に合わせた細かな仕上げをしていくものだが、今回は特に新しいスペック3ということもあって、ガスリーのスタイルに合わずパワーユニットが壊れないよう自動的に出力が抑えられる瞬間が何度かあったのだ。
予選までに栃木県のホンダ技術研究所 HRD Sakuraとミルトンキーンズ、現場のエンジニアで連携してさらにセッティング熟成を進めたものの、まだ完璧とは言えない状態だった。
GAS「ターン11の出口でパワーにHOLE(穴)がある。チェックしてくれ」
STR「データ上で見ているよ。現在P10。フラップ調整はどうする?」
GAS「クルマは良いよ。ターン11のエイペックスでウォッシュアウト、ターン14で少しアンダーはあるけどね。でもクルマ自体には満足だよ」
予選Q2では雨がポツポツと落ち始める中で絶好のタイミングでアタックを完了し、Q3経進出。そこでも好走を見せて6位・7位。
GAS「雨粒が落ちてきている。ターン14でまだアンダーステアがあるけどトグルを使って何とかするよ」
エンジンセットアップの穴がなければあと0.1〜0.2秒は稼いで5位に行けたはずなのにとガスリーは悔しがった。
■予選後にさらにスペック3の熟成を進めたホンダだったが……
ホンダは予選後にさらにデータを解析してこの問題に対処すべくセッティングの熟成を進めた。アップシフト時の点火時期セッティングを変更することでオシレーションを抑え、常にエンジンがフルパフォーマンスを発揮できるようにして、日曜の朝にFIAにデータの書換えを申請。
トルクデリバリー量が変化していないこと、つまり性能向上に貢献していないことを条件にセッティング変更が認められたが、その後レコノサンスラップの走行データを含めたFIAによる調査で性能向上につながっていると判断されたためこのセットアップデータは使用しないよう通達を受けることになった。
STR「スタート練習はターゲット通りだったよ。スイッチ変更は元に戻されてエンジンのパフォーマンスは昨日の状態に戻る。そのことは理解しておいてくれ。FIAが要請して新データは使えなくなったんだ。でも大丈夫だ、心配はない。レースはできる」
GAS「なんてことだ、馬鹿な!」
グリッド上で知らされたガスリーは予選のままのセッティングで決勝をスタートし、走りながらパラメータを変更したりドライビングで対応したりと忙しいマシン操作を要求された。
決勝はスタートでホイールスピンさせたハートレーが後退し、ガスリーは1台でフォース・インディア勢と戦うことになり、ピット戦略が後手に回った面もあったが、結果的に言えば2台ともにソフトタイヤに盛大なブリスターを抱えて勝負にならなかった。
フリー走行2回目でミディアムのロングランができなかったこと、スペック3の増大したトルクがリヤタイヤに与える影響を読み切れなかったこと、そして金曜より路面温度が10度も高い日曜のコンディションに対応できなかったことで、トロロッソ・ホンダは後退した。予選だけを見れば快走だったが、金曜の準備から含めてレース週末全体を完璧に戦うことはできなかったのだ。
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