正念場だったベッテルの大敗でハミルトンがワールドチャンピオン五冠に王手【今宮純のF1日本GP分析】
2018年F1第17戦日本GP決勝は、メルセデスのルイス・ハミルトンが圧倒的な強さでポール・トゥ・ウィン。ドライバーチャンピオンシップで大きく前進した。F1ジャーナリストの今宮純氏が日本GPを振り返る。
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鈴鹿で勝つ者が、チャンピオンシップを制覇する者になる。12年セバスチャン・ベッテル(フェラーリ)から昨年ルイス・ハミルトン(メルセデス)までそうなってきている。第17戦日本GPで完全無欠な疾走ポール・トゥー・ウインを見せつけたハミルトン。王座をめざし一直線に向かう強さがみなぎっていた。
鈴鹿優勝から戴冠へのプロセス、この6シーズンはこうだ。
*12年ベッテル→5戦後・ブラジルGP(6位で決定)
*13年ベッテル→1戦後・インドGP(1位で決定)
*14年ハミルトン→4戦後・アブダビGP(1位で決定)
*15年ハミルトン→2戦後・アメリカGP(1位で決定)
*16年ニコ・ロズベルグ→4戦後・アブダビGP(2位で決定)
*17年ハミルトン→2戦後・メキシコGP(9位で決定)
決着までのレース数や決定したレース順位はそれぞれだ。2017年ハミルトンは第18戦メキシコGPスタート直後の接触で最後尾から追い込み、9位入賞によって決めることができた。
チャンピオンだけが知っている『戴冠レース』の闘い方、それを4回体験しているハミルトン。事実上、王手をかけた鈴鹿を終え第18戦アメリカGPから、五冠をめざす「グレート・チャンピオンズ・レース」が始まる。
自分自身をピーキング・ゾーンに高めていくメンタル力が、ベッテルとハミルトンでは違うように思えた。今年30回記念・鈴鹿で数々あったイベントなどでベッテルは努めて明るさを装い、ファンに接し、会見でもポジティブなコメントを繰り返した。だがその合間に素顔に戻るとうつむきかげんになり、たびたび眉間にしわを寄せるときが……。
プレッシャーを抱えても、それを発散するかのようにレーシング以外のことで気分転換する外向的なハミルトン。一方、自分自身のなかにため込んでいってしまうような内向的なベッテル。
金曜フリー走行1回目、ベッテルは開始早々にシケインをまっすぐコースアウト、10分後にスプーンでオフラインへ。5番手に終わり、何度も走り出しからちらかる様子が見てとれた。それからもヘアピンやデグナーで何度も乱れ、シューマッハーに次ぐ“鈴鹿4勝マイスター”の彼なのにリズムがつりあわない……。
■鈴鹿マイスターのセバスチャン・ベッテルは予選もリズムが狂う
予選Q3にフェラーリはインターミディエイトでコースイン、この判断が“批判”されたがスーパーソフトタイヤに換装してからもベッテルは精彩を欠いた。
初日と同じようにあちこちでふらつき、タイヤ選択の誤りを自分がなんとかしようと焦り、リズム感が狂っていったのだろう。ちょっと濡れた程度の路面が不得意ではないのに、Q2自己ベストタイムから1.913秒ダウン、1分30秒192=9位は信じられない“失速”だった。
ハミルトンはチームの最適なタイヤ選択・判断もあり、Q2自己ベスト(2番手)から濡れている路面で1分27秒760を出しきる。条件悪化したQ3なのにタイムアップしたのは彼ひとりだけだった。
期待されたコースレコードは小雨によって更新されなかったが、昨年ポールポジションタイムからたった0.441秒差の1分27秒760は驚異的。ベッテルとフェラーリはこの瞬間に、彼我のパフォーマンス差異に打ちのめされたと思う。
何が起こるか分からないのがレースだが、ハミルトンとメルセデスには何も起こらなかった。起きたのはフェラーリ勢で、マックス・フェルスタッペン(3位)にふたりともひっかきまわされた。予選4番手のライコネンは5位、予選9番手のベッテルは6位。ハミルトンからは約1分10秒も遅れ、すぐ後ろの7位“Bリーグ”先頭のセルジオ・ペレス(フォース・インディア)とは9秒差でしかなかった。
最終盤戦『30回鈴鹿・F1日本GP』で2018年シーズンの大敗ゲーム、フェラーリがドライバーズチャンピオンシップに勝ってからもう11年のときが過ぎた——。
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