【津川哲夫F1私的メカチェック】日本GP鈴鹿で見つめるフェラーリの複雑すぎる奇妙なフロアフロント造形とエアフロー
前回はコクピット下のエアロに注目して、マシン正面下側からの覗き的“迷惑行為”で空気の動線を眺めて見た。今回は側面からマシンを見つめて見よう。ここ数年、要になり続けている開発の自由空間、フロアフロントとバージボードエリアだ。コクピットの両側面で左右のステップフロア前端から前方の空間についてさまざまな視点で見ていく。
今シーズンからエアロに関するレギュレーションが変わり、いわゆるバージボードなるターニングベイン(脈流転換)の高さと前方への伸長が制限され、昨年から大きく見た目が変わることになった。
この写真は左向きのフェラーリSF90のバージボードをクルマの外から見た写真だ。
エアロダイナミクスを理解するにはいろいろな方法があるが、空気の流れをイメージして、地上から始まりロールフープの最上点までを水平線で切り刻み(CTスキャンの様に)それぞれの高さの線上を前方から後方へ追ってゆくと、その高さのエアフローの基本が見えてくる。
正面からこのエリアにいたる空気流は、おもにフロントタイヤ内側側面とノーズ中心(多くはノーズ下面部)との間のエアフローだ。ここでは正面(左側)からの空気流に対して、バージボード外側に特化して注目してみよう。
フロントタイヤ内側を抜ける空気流を高さで刻んで見ると、最初に見えるのがステップフロアの高さ位置。バージボードの下面が横に貼り出しL次状の断面で大きく外側に張り出している。
この面にはバージボードの曲面に合わせた角度で外側に向けてスリットが切られ、バージボード下面についてくる境界層はこのスリットでフロア下面へと流れ込む。
また、それぞれのスリットの上部には縦にバーティカルスプリッターが生え、前後4段階の空気流に対処してスプリッターの下部では床下に、上方へ行くほど縦のスリットで後面へ空気流が送られることになる。そして、後面のマシンからの剥離を遅らせることで、バージボード側面へと空気を吐き出す。
後方3段のスクレーパ(フロアの扇形のスリット部)ではバージボード沿いの空気流を下面に取り込むと同時に、フロントタイヤ後方の巻き込み渦流を上方へ掻き上げ、床下空気流への干渉を抑える。
これらの働きは下面部だけだが、さらに上部、前後部、そしてサイドポッドのリーディングエッジ周りなど。フロアフロントのエアロは自由度が高いだけに奥が深い。
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