F1の夢に一歩近づいた角田裕毅「正念場にも特別なプレッシャーはない。2021年に鈴鹿を走れたら嬉しい」:初テスト後会見
11月4日、ホンダとレッドブルのジュニアドライバーで、現在FIA-F2選手権に参戦する角田裕毅が、イタリア・イモラで自身初のF1テストに臨んだ。一日の走行を終えた後、メディアに対するオンライン会見に対応、角田はF1マシンで初めて走った印象、期待されるF1のフリープラクティス出走、2021年のF1デビューについて語った。
角田はこの日、スクーデリア・アルファタウリのサポートのもとで2018年型トロロッソSTR13・ホンダで走行した。路面が濡れた状態から次第に乾いていくなかで、ウエットタイヤとドライタイヤの両方を使用し、合計72周(約350km)を走り、大きな問題なく予定されていたテスト項目をすべて終了した。
前夜はF1走行に備えてエネルギーを蓄えるためにいつも以上にたっぷり夕食をとったという角田は、特に緊張することなく、F1マシンに乗り込んだという。
エンジンが始動した時、どういう気持ちだったかと聞かれた角田は「正直言って、特別なことは何もありませんでした。F1マシンに乗って、あと数秒後にはピットレーンを出ていくんだ、という気持ちでしたね。それは僕の夢なので、少し特別な気持ちになりました。でもF2と比べてF1でピットレーンを出ていくときに何か違うかというと、大きな違いはありません」
「緊張はしませんでした。でも少し特別に感じたのは、ファーストメカニックが4人のメカニックに対してタイヤからブランケットを外すよう指示した時です。あれは本当にクールでした。そういうシーンをF1のゲームで見ていて、いつか実際に経験してみたい、どんな感じがするんだろう、と思っていたので。そういうわけであのシーンを見た時は少し特別な気分になりましたね」
■「F1カーのパワーとブレーキには驚かされた」と角田
F1カーの運転自体は難しくはなかったという角田だが、予想以上に首への負担が大きかったという。
「運転するのは難しくはなかったですが、身体的には思っていたよりきつかったです。身体面ではここまできついとは予想していませんでした。僕は首がとても強いという自信があるんです。F2でも首がきついと思わないぐらいです。なのに今日F1カーで走った後にはかなりきつかった。ブレーキングゾーンが特に辛かったですね。(頭が前に動いてしまうのを)防ごうとしましたが、ブレーキングのパワーは予想以上でした。次にF1カーに乗る時までに、しっかりトレーニングをしなければなりませんね」
F1カーに乗ってみて驚いたのは、エンジンのパワーとブレーキのパフォーマンスだったと角田は言う。
「スロットルを開けるとまず、エンジンから大きなパワーを感じます。F2ではそこまでではありません。パワーは予想していた以上でした。午前のセッションでは雨が降っていましたが、それでもスロットルを開けるとものすごいパフォーマンスを感じるんです。ドライコンディションでのF2よりウエットコンディションでのF1の方がパワーが大きく感じました。それが今日一番驚いたことです。二番目に驚いたのはドライコンディションでのブレーキングのパフォーマンスが強烈だったことですね」
F1初走行に備えて、ドライビング中のステアリングホイール上のさまざまな操作を練習してきたというが、それでも適応するには多少時間がかかったということだ。
「(ステアリングホイール上の操作など、F1独自の技術に関しては)ミルトン・キーンズにあるレッドブルのファクトリーに行ってシミュレーターでかなり練習しました。それから、スクーデリア・アルファタウリでシート合わせをした時にもたくさん勉強しましたね。覚えるのは簡単なのですが、実際に走っている時に素早く反応するのが難しいです。午前のセッションでは、エンジニアからモードやボタンを変更するよう指示されてすぐに反応するのに少し苦労しました。モードを変える時には、じっとステアリングホイールを見つめたり、少し減速しなければならなかったんです。でも、シミュレーターでの練習のおかげで素早く慣れることができたと思います。セッション終盤には一貫して速いペースで走れるようになりました」
「レースシミュレーションにおいても、ステアリングホイールで毎周、ほぼ毎コーナー、いろいろなことをしながら走っても、ラップタイムはかなり安定していました。なので大きく前進できたんじゃないかと思います」
「300kmというターゲットを与えられたなかで無事に352kmを走破できて、ほっとしました。午前中はレインタイヤとドライタイヤを使い分けながらの走行になり、完全にドライで走ることはできなかったんですけど、それが逆にクルマに慣れる、いい練習機会になり、コントロールの練習になりました。そこでコントロールできたおかげで、午後のドライセッションでさらにコントロールの幅が広がったので、思ったよりも楽にドライでペースを上げることができました」
■角田「F1スーパーライセンス取得がかかったF2残り4戦に緊張はない。集中して走るだけ」
今回レッドブルがこのテストを計画したのは、角田を今年中にF1のFP1に出場させ、スーパーライセンスさえ取得できれば2021年にアルファタウリからF1デビューさせたいと考えているからだ。まずはFP1に出場するために、角田はF1カーでの300km以上の走行をいう項目をクリアしなければならなかった。
このテストを前に、レッドブルのモータースポーツコンサルタント、ヘルムート・マルコからは、とにかく300km走行を達成することに集中しろと言われたという。
「(マルコからアドバイスは)それほどはなかったです」と角田。
「ただ、カーリンからスパでのユーロ・フォーミュラ・オープンに招待されて、走ってほしいと言われたので、ヘルムートに聞いたら、『ノー』と言われました。『F1に集中しろ』と言われたんです。アドバイスはありませんが、ただF1で今日300kmを走行距離を達成することに集中しろと言われました」
テストを前に、アルファタウリのチーム代表フランツ・トストは、角田をシーズン終盤バーレーンかアブダビでFP1に乗せたいとコメントした。
バーレーンではF2のレースが行われるため、両立するのは簡単ではないと、角田は予想している。
「バーレーンでF1のフリープラクティスに出場する場合、かなりタイトなスケジュールになりますね。両方のマシンに素早く適応する必要があります。F2とF1では大きな違いがあるので、チャレンジングな週末になるでしょう」
「バーレーンでフリープラクティス1で走れるか分からないですけど、もし走った場合は切り替えが必要なレースウイークになると思います。自分にとって大きなチャレンジになりますし、すべての経験を詰め込まなければいけないので、それに向けて大きな準備をしていきたいなと思います」
2021年にF1デビューを果たすためには、F2で好結果を出し、F1出場に必要なスーパーライセンス取得の条件を満たす必要がある。残された2大会4レースは大きなストレスの下で戦うことになるのではないかという問いに対し、現在ランキング3位の角田は「いいえ」と答え、目の前のことに集中して戦っていくだけで、ストレスが高まるとは感じていないと答えた。
「目標はシーズン最初に設定しました。今もそこからほとんど変わっていません。1月からそういう心構えで準備していたので、それについて大きなストレスを感じるということはないです。今は、F2でフリー走行、1コーナー、最初のブレーキングゾーンで自分が何をすべきかに集中するだけです。1セッション1セッション、1ラップ1ラップに集中する必要があります」
F1ドライバーになった後、最も楽しみにしているのは母国日本GPでファンの前で走ることだという。
「一番最近のF1ドライバーは小林可夢偉さんです。彼をテレビで見ていたのを覚えています。鈴鹿で表彰台に立ったのを見て、強い印象を受けました」
「来年F1で走るなら、日本のファンの前で鈴鹿をぜひ走りたい。日本のファンの前で走れたら、僕の人生のなかでも最高に楽しいレースになると思います」
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