プジョー9X8でハイパーカーデビューを飾ったニコ・ミューラーがもたらした“新しい視点”/WECバーレーン
バーレーンで行われているWEC世界耐久選手権2022年第6戦バーレーン8時間レース。このラウンドからプジョー9X8陣営に加入したニコ・ミューラーは、2023年のフル参戦に向け、実戦のなかで準備を整えている。
これまでアウディ陣営に所属していたミューラーは、アウディのLMDhプログラム中止を受け、プジョーへと移籍。当初は2023年からの加入が発表されていたミューラーだったが、MSGレーシング・フォーミュラEチームのチーム代表としての役割に集中するためにプログラムから外れたジェームス・ロシターに代わり、この2022年最終戦からロイック・デュバル、グスタボ・メネゼスとともに94号車をドライブしてハイパーカーデビューを飾ることとなった。
バーレーンでレースをするという選択肢は常にあったとミューラーは言うが、それはテストでのパフォーマンス次第だったという。ミューラーは、このレース前にモンツァで1回だけ、プジョー9X8をテストを行っている。
「正直なところ、サプライズではなかった」とミューラーはレースデビューについて語った。
「テストで何が起こるか──もしレース前に僕がマシンをものにできる走りをしたら──それ次第で、当初からバーレーンでレースをするという選択肢はチーム内にあったんだ」
「テストの経験がなければここに来るのは意味がなかったと思うけど、モンツァを走る機会を得たとき、それは本当にうまくいったし、シミュレーターの準備も計画どおりに進んだ」
「そして、ジェームスの新しい仕事が決まったことで、明らかにひとつのことが他のことにつながったんだ。僕らが目標にしたことで、物事が一致したんだと思う。ここにいられて幸せだよ」
バーレーンでハイパーカーのライバルであるトヨタと、同じレースコンディションで周回することは、2023年シーズンに向けてさらにスピードアップするために大きな利点になる、とミューラーは言う。
2022年第4戦からトップレベルのプロトタイプレースに復帰したプジョーはこれまで、トヨタ、アルピーヌ、グリッケンハウスと対戦してきたが、来年はポルシェ、フェラーリ、キャデラックといったメーカーが新たにこのクラスへと参戦してくることになる。
ミューラーはプジョー9X8への適合について、「もうすべてが自然に感じられると言えば嘘になるけど、どこに何があるかは分かっている」と語った。
「適切なボタン操作をすれば、周回を重ねるごとに、より自然に感じられるようになった。今週末のすべての周回でマシンに慣れることができるだろうし、それは来年に向けた準備の助けとなる。それが今週の焦点だ」
「それでも、レースでは常にいい結果を出したいと思うものだ。レースウイークに仕事をするのに充分な準備ができている状況にはなっているが、焦点はあくまでも2023年への準備だ」
■ミューラーの「新鮮な目」を歓迎するチーム
プジョーのテクニカル・ディレクターを務めるオリビエ・ジャンソニーは、ミューラーをチームに迎え入れる機会を得たことに満足していると語り、彼がチームに「非常に貴重なインプット」を与えてくれると語った。
ジャンソニーは、ミューラーの加入がチームに「新鮮なアイデア」をもたらすと指摘し、プジョーの他の5人のドライバーとは対照的に、外部の視点から9X8を開発することになると述べた。
「とても興味深い」とジャンソニーは言う。
「彼はマシンに乗り込み、まったくミスをすることなく、最初から非常に集中していた。それは常に重要なことだ」
「あのレベルの新しいドライバーを車に乗せるということは、とても貴重なインプットである。他のドライバーは皆、1年以上前からこのマシンを学んできた。いいことも悪いこともすべて学び、どうにかしてそれに慣れることができた」
「だから、新鮮な目で“普通ではないこと”を教えてもらえるので、有益なのだ。他のメンバーはそれに慣れていて、我々の弱点とどう折り合いをつけていくかを学んでいる。だから、新鮮な発想の持ち主を迎えることは、とても興味深いことだ」
ミューラーも、まだ経験が浅いにもかかわらず、自分の提案を受け入れてくれたチームの姿勢に感謝している。
「これは本当に新鮮で、僕の視野を広げるのに役立つと思う」とミューラー。
「自分の経験を活かしたインプットが、すぐに歓迎されるのは嬉しいことだ。クルマに関しても組織全体に関しても、僕が一番経験が浅いにもかかわらず、彼らは新しいインプットにとてもオープンなんだ」
「非常に温かく迎えてもらったので、移行はとても簡単だったよ」
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