「学校に戻す」という不登校支援は適切なのか 精神科医・斎藤環氏は「学校というシステムへの批判が欠けている」と指摘
不登校の小中学生を支援するため、今年2月に発足した「クラスジャパンプロジェクト」。3月上旬頃から、「不登校の生徒を通っていた学校に戻す」という目標がネットで批判を浴びていた。
精神科医の斎藤環さんは、このプロジェクトについて「学校というシステムを批判する姿勢が欠けている」と指摘する。
「不登校支援の歴史に不案内で、無神経だ」
同プロジェクトは、不登校の生徒にオンラインでの映像授業等を提供するとともに、生徒同士が交流するリアルの場も設けるというものだ。角川ドワンゴ学園が運営する「N高等学校」の仕組みに近い。
生徒が在籍する小中学校と連携し、保護者からの希望に応じて実施する。協定している自治体が不登校対策のために計上している予算が充てられるため、家庭は費用を負担せずに済む。
今年2月12日に発足後、サイト上で掲げていた「(生徒を)通学していた学校に戻す」「若者が今よりもっと日本を誇れるようになっている」などの目標がネットで批判を浴び、3月7日には、「物理的な学校復帰だけが唯一の不登校対策だとは決して考えておりません」とする文書を公式サイトに掲載した。
精神科医の斎藤環さんもプロジェクトを批判するうちの1人。斎藤さんはキャリコネニュースに対して、同プロジェクトが「不登校支援の歴史に不案内で、無神経だ」と話す。
「かつては不登校の生徒を無理やり登校させるということが行われてきました。しかし80年代前半から『学校というシステムに問題がある』『子供の人権や個性、拒否権を尊重しよう』という考え方が生まれてきたわけです。フリースクールもこうした考え方に立っているものです。クラスジャパンプロジェクトには、こうした"学校というシステムを批判する姿勢"が欠けています」
「勉強から距離を置く必要がある子どもに親が自宅学習を押し付けることになる」
同プロジェクトでは、文科省の調査(2013年度)に基づいて「不登校になる主たる原因は、自身のメンタル・人間関係・学業不振の3つ」としている。確かに同省の調査では、「情緒的混乱」(28.1%)が不登校のきっかけとして最も多くなっている。いじめはわずか1.6%にすぎない。しかしこの調査自体に問題があるという。
「実際にはいじめや教師のハラスメントが原因で不登校になることも多いです。文科省の調査でこうした理由が少ないのは、この調査が教師に報告させているからです。いじめなどの学校側のリスク要因を取り除くことなく、そこに戻そうというのは問題です」
また、不登校の生徒の中には「勉強から距離を置く必要がある子」がいるにも関わらず、「こうしたサービスが出てくると、子供に勉強を押し付ける親が出てくる」と懸念する。
同プロジェクトが今年2月に発足して以降、保護者から200〜300件の問い合わせが来ているという。この4月から、協定を結んでいる島根県益田市の小中学校で保護者向けの説明を始める予定だ。
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