観光名所に謎の看板「自論を説明している人物に注意して」 何があったの?設置者に聞く
福井県勝山市にある国史跡「白山平泉寺旧境内」。古くから白山信仰の拠点として栄え、全盛期の戦国時代には当時の日本で最大規模の宗教都市として繁栄していた。
境内一面に広がる美しい苔のじゅうたんも有名で、その神秘的な光景を見るためにこの地に足を運ぶ人も少なくない。
しかし、そんな歴史ある福井の名所には、ある変わった看板があるらしい。
こちらはウェブメディア「奈良、旅もくらしも」の編集長・生駒あさみさんが2022年4月23日、自身のツイッターアカウント(@ikomaasami)に投稿した写真だ。
「白山平泉寺にお越し頂き有難うございます。
最近境内にて『参拝者の方に対し学術的にも確証の無い自論を説明している人がいる』との訴えが多く寄せられています。
白山神社が許可している正規のボランティアガイドに属していない方の説明にご注意ください」(原文ママ)
とある。
つまり、確証のない持論で訪れた人にこの地の説明をする人がいるということ。そんな変わり者の問題が看板を立てるほど深刻なのだろうか。
「どういう目的なんだろう」
不思議な内容の看板にツイッター上では
「どういう目的なんだろう その論を人に話したいだけなのかな?」
「勝手になんちゃって解説して嘘ばらまいてるのか?」
などの反応が寄せられた。
はたして、この看板が指しているのはどんな人物なのだろうか。Jタウンネット記者は、地元でガイドの案内などを行う企業「六千坊」の代表で、看板を設置した張本人でもある大久保満さんを取材した。
看板に書かれている「学術的にも確証の無い持論を説明している人」がどういった人なのかを聞いてみると、こんな答えが。
「白山平泉寺は、1300年の長い歴史の中でさまざまないわれがあり、学術的な説もあります。
それにも関わらず、勝手な持論を参拝客に説明してしまう、ある1人の人物がいるんです」
驚くことに平泉寺白山神社にあった注意書きは、たった1人の人物への注意のために設置したというのだ。
「宮司にちゃんと勉強してくれって......」
大久保さんによると、看板を設置したのは約2年前のこと。
正規のガイドとは違う説明をしている人がいると参拝客から問い合わせがあったことが始まりだった。
「参拝客から問い合わせを受けて、その人物のことを知りました。その人から説明を受けてしまった参拝客は大勢いるんです。
その後、その方は出禁にしたのですが、気にせずにやってくる。私も総代の役目がありますから、無視できずに看板を設置しました」(大久保さん)
さらに、その人物は参拝客だけでなく、平泉寺白山神社(編注:白山平泉寺は明治の神仏分離令により寺号を廃止し、神社となった)の宮司にまで噛みついたという。
「その人物は宮司にも『ちゃんと勉強してください』と文句を言ったんです。本人は勉強していると言い張っていますが、呆れてしまいますよ」(大久保さん)
ちなみに、「勉強してくださいよ」と言われた宮司の平泉隆房さんは金沢工業大学の教授で、同学のウェブサイトによると、専門分野は白山信仰日吉信仰、伊勢神道、中世伊勢神宮史だ。
「看板も立てましたが、本人は全く気にしていないようで、今でもやってくるんです。その人が元気でいるうちに問題は片付かないでしょうね......」(大久保さん)
白山平泉寺旧境内(平泉寺白山神社)を訪れる際は、「野良ガイド」の存在を頭に置いておいたほうがいいかもしれない。
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