小学2年生の道徳教科書「ご褒美がなくても仕事を続けたい」が物議 教え方次第で「社畜教育」になる?
小学校の道徳の教科書で、無給で働くことを推奨しているのか——光文書院が発行する小学校2年生向け教科書「どうとく ゆたかなこころ」に掲載された「ごほうびをいただかなくても、しごとをつづけたい」という文言がネット上で物議を醸している。
小学生の母だというあるツイッターユーザーが5月27日、「うわあ!娘の道徳の教科書が?ポン太くんたち…お給料のない会社で働いてはならないよ!」と投稿したことがきっかけで話題となり、3万回近くリツイートされた。
「職業観の第一歩として『働くことの良さを感じて皆のために働く』と自覚できる教材」
同教科書には、「わたしたちもしごとをしたい」という項目がある。隣の町で地震が起きて大人が出払ってしまったため、タヌキを擬人化したキャラクター・ポンタくんと仲間たちが進んで仕事を引き受けるというストーリーだ。
「隣の町が地震で大変です。たくさんの大人の人たちが、助けに出かけました。町に残った人も働く人が少なくなって大変です。ポンタくんたちは自分たちにできる仕事はないか、相談しました。町長さんから『自分たちから進んで働き始めたのは偉かったです。』と、たくさんのご褒美をいただきました」(※編集部で一部ひらがなを漢字に変換 以下同)
こうした物語の後に、
「ポンタくんたちは、『ご褒美をいただかなくても、仕事を続けたい。』と言いました」
と続く。そして教科書では「ご褒美がなくても仕事を続けたいのはどうしてかな」と問いかけている。
光文書院の「編修趣意書」によると、この項目は「将来の社会的自立や職業観の第一歩として、『はたらくことのよさを感じてみんなのためにはたらく』ことがしっかりと自覚できるような教材」として用意されたという。
「働くことそのものに値打ちがある」と知ってもらうことが狙いだけど……
この教科書の内容がツイッター上で話題になると「なるほど、今は社畜教育を道徳の授業でするのか」「子どもの頃から学校で、やりがい搾取を吹き込まれるなんて」といったリプライが相次いだ。
しかしこの教科書は「学級のみんなのために学級の仕事に責任をもつこと」を教えようとしているのだという指摘もあった。会社で給与をもらってする「仕事」ではなく、あくまでも学内での係や日直のことを指しているというのだ。
同書院が発行する「子どもの道徳」第94号(2008年)には、岐阜大学教育学部付属小学校の教諭が、この教科書とほぼ同じ内容で授業を実施した時の様子が報告されている。この教諭は、「2年生になると(中略)日直、班長や掃除、係活動など多くの仕事を行い、働く経験も豊かである」と指摘した上で、「『働くこと』そのものに値打ちがある」と生徒に理解してもらうことが狙いだとしている。この教諭も「日直や班長や掃除、係活動」の分担の大切さを教えているようだ。
そもそもポンタくんたちが仕事を進んで引き受けたのは、隣の町が地震になったから。緊急時の助け合いを説いた内容だとも考えられる。ただ「教え方によっては献身の刷り込みになる」といった指摘にもあったように、一歩間違えると無償の献身を美化してしまう可能性はあるだろう。
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